横浜市泉区・戸塚区を拠点に生態調査や里山保全活動を行なっている“ご近所生きもの観察案内人”の相川健志さん。今回は、「冬のカマキリ」の生態について案内します。(これまでの記事はこちら)
日本に暮らす多彩な顔ぶれのカマキリたち
一般的なカマキリは、卵鞘(らんしょう)で越冬します。卵鞘はやや固めのスポンジ状の塊で、枯れ葉や落ち葉のように見えるものも多く、つい見過ごしてしまいがちです。でも、実はその中に数百もの小さな卵が詰まっています。
カマキリは、関東地方だと11月ごろに産卵し、翌年の4〜5月ごろに孵化します。寒い時期には、カマキリたちが暮らしている葉の落ちた植え込みや枯れたススキなどで、彼らの卵鞘を観察することができます。卵鞘の大きさや形は、カマキリの種類によってさまざま。つまり、卵鞘を見ると、どんな種類のカマキリなのかを知ることができるのです。
そこで今回は、私たちの身近な場所でも目にすることができるカマキリとその卵鞘を紹介します。
と、その前に…そもそも日本国内にどのようなカマキリたちが暮らしているか、ご存知ですか。日本で確認されているカマキリの仲間は、在来種12種、外来種2種の計14種です。
在来種
カマキリ科
- ハラビロカマキリ
- ウスバカマキリ
- コカマキリ
- スジイリコカマキリ
- ヤサガタコカマキリ
- オオカマキリ
- チョウセンカマキリ(カマキリ)
- ムナビロカマキリ
- マエモンカマキリ(オキナワオオカマキリ)
ハナカマキリ科
- ヒメカマキリ
- サツマヒメカマキリ
コブヒナカマキリ科
- ヒナカマキリ
外来種
カマキリ科
- ムネアカハラビロカマキリ
- ナンヨウカマキリ
本州最大のカマキリ
オオオカマキリの体長は、70~95mm。林縁の草地でよく観察できます。
このオオカマキリの卵鞘の中に、卵が100~300個入っています。ちなみに、幼いころにオオカマキリの卵鞘を暖かい部屋に置いておき、冬に部屋の中で孵化してしまった思い出があります…。きっと虫好きな方には似たような思い出のある人もいると思うのですが。
日本最小のカマキリ
ヒナカマキリの翅(はね)は退化しています。体長は12~18mmで、針葉樹の皮の裏などに産卵します。
ただ、ヒナカマキリの生態についてはよく知られていない部分も多く、私も生体を自力で見つけたことがありません。今回は知人に卵鞘を見つけてもらい、写真を撮ることができました。来年は必ず自力で生体と卵鞘を見つけたいです!
ハラビロカマキリ
ハラビロカマキリは、林縁部でよくみられる樹上性のカマキリです。体長は、雄が45~65mm、雌が52~71mm。体色が緑のものと茶色のものがいます。
クビキリギスの写真を撮ったら、偶然ハラビロカマキリの卵鞘も写っていました。
コカマキリ
コカマキリは林縁や草地でよくみられます。体長は、雄36~55mm、雌46~63。コカマキリも、体色が緑のものと茶色のものがいます。
コカマキリの茶型は比較的よくみられますが、緑型に出会えたらラッキーです。私もまだ1回しか見たことありません。まして、コカマキリの卵鞘となると、かなりレアです。今度出会えたら、たくさん写真を撮ろうと思います!
昆虫たちが活発になるのは夏!というイメージを持っている人も多いかもしれません。でも、冬場でも卵鞘という形でカマキリたちを発見・観察することができます。ぜひ卵鞘を探しに行って、何種類のカマキリと出会えるか挑戦してみてください!この時期だからこそ見られる希少な生態ですし、思いがけない身近な場所でカマキリたちに出会えるかもしれませんよ。