「正月ぐらいは世界一贅沢なお雑煮が食べたい」
と、貧乏なお笑い清掃団メンバー20人が熱望。
「ならば材料費ゼロ円でみんなの夢を叶えてやるぜっ」
と、千葉九十九里海岸に出向いたお笑いコンビ、こじらせハスキー・橋爪ヨウコとドイツみちこ。その海岸で、極上の海の逸品「ヒラツメガニ」をゲットした。
前編「ヒラツメガニ編」はこちら
雑煮の材料は、カニとローリングストック(賞味期限間近の災害用防災食材)の餅に決定。残るは、カニの旨さを引き出す調味料「塩」を入手するだけだ。
「塩かぁ…」
ふたりは、目の前に広がる壮大な大海原を見つめながら、こう思った。
「あるじゃん、こんなにたくさん、塩」
塩、作るんかい!
一体、いつになったらお雑煮が食べれるのであろうか。
焚き火の塩作りは、海、森、里を守る循環型SDGs
海水の活用はSDGs(環境や社会を考慮した持続可能な開発目標や取り組み)の重要な課題のひとつだ。地球に存在する全水資源の約97%が海水。淡水はわずか約2.5%。国連の推計では昨今の異常気象で、淡水は2030年までに必要量の40%が不足すると見込まれている。
今後人類が生きていくためには、海の資源活用が大きな鍵となるのだ。
とくに人間の体に欠かせない「塩」は、SDGsの要。なかでも注目を集めているのが、薪を使い焚き火で煮詰める日本古来の製塩法だ。
日本は岩塩などの塩資源に恵まれず、古くから「かん水(高濃度の塩水)」を煮詰めて水分をなくし塩をとる「煎熬(せんごう)」という方法で塩を作ってきた。
その燃料に使われてきたのが「薪」である。そして今、この薪に「間伐材」を使って塩を作ろうという動きが全国に広がっている。
間伐材は、森林成長の過程で密集化する立木を間引く「間伐」ででた木材のこと。間伐した森の木々は太陽を浴びて成長し、二酸化炭素を吸収し空気を浄化し土壌に栄養を与える。その栄養が雨などで流れ出て海に還元。森の環境が手入れされると海の環境もよくなり、質の高い塩がとれるようになる。
塩を作ることで、海、森、里のパーマカルチャー(持続可能なエコシステム・デザイン)が実現するのだ。
「塩作りは海だけでなく、森も守ってきたんだね」
「ってことは私たち、塩作る前に、まず薪作りからやらなきゃダメじゃね?」
「よし、清掃団のプライドをかけて、やってやろうじゃないの、薪作り!」
一体、いつになったらお雑煮が食べれるのだろうか。
簡単!焚き火でできる塩作り
塩の作り方はいたって簡単。きれいな海水を汲んで、焚き火の強火で煮詰めて濾すだけ。塩の副産物として、苦汁(にがり)も抽出できる。
用意する道具は、コーヒーフィルター。フライパンか鍋。濾過した液体を入れる容器。木ベラ、海水を入れる容器(量が多い場合はポリタンなど)。
①海水をフライパンや鍋に入れて、水の量が10分の2ぐらいになるまで強火で煮詰める。
②木ベラなどでかき混ぜながら、さらに10分の1ぐらいになるまで煮詰めると、海水が白く濁ってくる。
③コーヒーフィルターで濾過し、硫酸カルシウムを取り除く。
④濾過して透明になった海水を、さらに煮詰めると、シャーベット状の塩ができる。
⑤水分が残っているうちに④を再びコーヒーフィルターで濾過すると、塩がとれる。濾過した液体が苦汁。
⑥天日で乾燥させれば、塩の完成!!
塩ができ上がり、ついに、待ちに待ったカニのお雑煮が完成した!
手間と時間をかけ、ゼロから作ったお雑煮は格別だ。海から宝を探し当てたように、興奮と感動でお雑煮がキラキラと輝いて見えた。
「これは間違いなく、世界一贅沢なお雑煮だね」
「清掃団のみんな、いい正月を迎えられるはず」
だが、問題がひとつ。清掃団員20人もいるのに、とれたカニが1匹ってこと。
「ひとり小さじ1杯ぐらいは食べれるかな」
え~~~~~~~ん(泣く)
2024年も、「お笑い清掃団」をよろしくお願いしま~す!
おわり
構成/松浦裕子