
食の贅沢さを追求すると、焚き火に行き着く(写真/茶山浩)。
「正月ぐらいは世界一贅沢なお雑煮が食べたい」
と、貧乏なお笑い清掃団メンバー20人が熱望。
「ならば材料費ゼロ円でみんなの夢を叶えてやるぜっ」
と、千葉九十九里海岸に出向いたお笑いコンビ、こじらせハスキー・橋爪ヨウコとドイツみちこ。その海岸で、極上の海の逸品「ヒラツメガニ」をゲットした。
前編「ヒラツメガニ編」はこちら

右:持ち前の身体能力の高さでカニ釣りに挑戦する、こじらせハスキー・橋爪ヨウコ。サッカー歴27年のスポーツ芸人。ぐんま特使。現在、BEPAL.NETでヒマラヤ・バイク紀行「でけぇ山を走りたい! 38歳女芸人がヒマラヤツーリングに挑戦した理由」連載中!
左:移動中の電車の中でも気合十分の、こじらせハスキー・ドイツみちこ。筋力トレーニングで体脂肪率15%。ボディビル『NPCJ』世界大会で9位に入賞。現在、女相撲に挑戦し数々の大会に出場している肉体派お笑い芸人。
雑煮の材料は、カニとローリングストック(賞味期限間近の災害用防災食材)の餅に決定。残るは、カニの旨さを引き出す調味料「塩」を入手するだけだ。
「塩かぁ…」
ふたりは、目の前に広がる壮大な大海原を見つめながら、こう思った。
「あるじゃん、こんなにたくさん、塩」
塩、作るんかい!
一体、いつになったらお雑煮が食べれるのであろうか。
焚き火の塩作りは、海、森、里を守る循環型SDGs

海は人間に与えられた貴重な財産。
海水の活用はSDGs(環境や社会を考慮した持続可能な開発目標や取り組み)の重要な課題のひとつだ。地球に存在する全水資源の約97%が海水。淡水はわずか約2.5%。国連の推計では昨今の異常気象で、淡水は2030年までに必要量の40%が不足すると見込まれている。
今後人類が生きていくためには、海の資源活用が大きな鍵となるのだ。
とくに人間の体に欠かせない「塩」は、SDGsの要。なかでも注目を集めているのが、薪を使い焚き火で煮詰める日本古来の製塩法だ。
日本は岩塩などの塩資源に恵まれず、古くから「かん水(高濃度の塩水)」を煮詰めて水分をなくし塩をとる「煎熬(せんごう)」という方法で塩を作ってきた。

江戸時代の塩作り風景。海水を汲み、焚き火で煮て塩をとる。『東海道五十三次 十六 蒲原』(葛飾北斎画)より。
その燃料に使われてきたのが「薪」である。そして今、この薪に「間伐材」を使って塩を作ろうという動きが全国に広がっている。
間伐材は、森林成長の過程で密集化する立木を間引く「間伐」ででた木材のこと。間伐した森の木々は太陽を浴びて成長し、二酸化炭素を吸収し空気を浄化し土壌に栄養を与える。その栄養が雨などで流れ出て海に還元。森の環境が手入れされると海の環境もよくなり、質の高い塩がとれるようになる。
塩を作ることで、海、森、里のパーマカルチャー(持続可能なエコシステム・デザイン)が実現するのだ。

杉の間伐材。
「塩作りは海だけでなく、森も守ってきたんだね」
「ってことは私たち、塩作る前に、まず薪作りからやらなきゃダメじゃね?」
「よし、清掃団のプライドをかけて、やってやろうじゃないの、薪作り!」

薪割りを練習する橋爪ヨウコ(写真/茶山浩)。

薪拾いに勤しむドイツみちこ(写真/茶山浩)。
一体、いつになったらお雑煮が食べれるのだろうか。
簡単!焚き火でできる塩作り

薪に間伐材を使って火を起こす。塩作りはコンロでもできるが、焚き火で楽しみながら作ると旨さが倍増。
塩の作り方はいたって簡単。きれいな海水を汲んで、焚き火の強火で煮詰めて濾すだけ。塩の副産物として、苦汁(にがり)も抽出できる。
用意する道具は、コーヒーフィルター。フライパンか鍋。濾過した液体を入れる容器。木ベラ、海水を入れる容器(量が多い場合はポリタンなど)。

濾過した液体を入れる容器は、コーヒーサーバーやドリッパーなどを利用すると便利。
①海水をフライパンや鍋に入れて、水の量が10分の2ぐらいになるまで強火で煮詰める。

最初は強火の高温でぐつぐつと。
②木ベラなどでかき混ぜながら、さらに10分の1ぐらいになるまで煮詰めると、海水が白く濁ってくる。

白色の物質は塩でなく、硫酸カルシウム。
③コーヒーフィルターで濾過し、硫酸カルシウムを取り除く。

フィルターの固形物は、硫酸カルシウム。
④濾過して透明になった海水を、さらに煮詰めると、シャーベット状の塩ができる。

白い物質が塩。ここらへんから一気に塩ができはじめる。
⑤水分が残っているうちに④を再びコーヒーフィルターで濾過すると、塩がとれる。濾過した液体が苦汁。

フィルターに残った白い物質が塩。
⑥天日で乾燥させれば、塩の完成!!

海のミネラルが複雑な旨味を醸し出し、マジ旨です。
塩ができ上がり、ついに、待ちに待ったカニのお雑煮が完成した!
手間と時間をかけ、ゼロから作ったお雑煮は格別だ。海から宝を探し当てたように、興奮と感動でお雑煮がキラキラと輝いて見えた。
「これは間違いなく、世界一贅沢なお雑煮だね」
「清掃団のみんな、いい正月を迎えられるはず」

ヒラツメガニの雑煮の作り方:①カニについた不純物を、歯ブラシなどで洗い取り除く。②鍋に水とカニを入れ、中火で煮る(カニは半分に割って煮ると、さらに旨味が増す)。③手作りの塩を②に入れて味を整える。④器に盛り、炙った餅を入れれば出来上がり。ヒラツメガニの濃厚な出汁とミネラルたっぷりの塩が活きて激うまです(写真/茶山浩)。
だが、問題がひとつ。清掃団員20人もいるのに、とれたカニが1匹ってこと。
「ひとり小さじ1杯ぐらいは食べれるかな」
え~~~~~~~ん(泣く)
2024年も、「お笑い清掃団」をよろしくお願いしま~す!
おわり
構成/松浦裕子