旅の成否は出発前に決まる?ロングトレイル攻略6ステップ【プロハイカー斉藤のアメリカ東海岸トレイル行状記 vol.2】
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    2024.01.10

    旅の成否は出発前に決まる?ロングトレイル攻略6ステップ【プロハイカー斉藤のアメリカ東海岸トレイル行状記 vol.2】

    ニューヨークやボストンからも近い、アメリカ東海岸にある「ニューイングランドトレイル」。2023年10月、世界各国のロングトレイルを次々と踏破している日本で唯一のプロハイカー・斉藤正史さんが、そのニューイングランドトレイルに挑みました。日本ではあまり知られていないニューイングランドトレイルの実態、アメリカ東海岸のトレイル事情などについて、斉藤さんによる実感たっぷりの最新リポートをお届けします。

    vol.2は、斉藤さんがニューイングランドトレイルを歩く前に行った6つのことを例に、「トレイルの計画立案=攻略」についてご紹介します(vol.1はこちら)。

    まずは、トレイルの公式サイトをチェック

    さて、ニューイングランドトレイルに行くと決めたのはいいのですが、出発まであまり時間がありませんでした。まずは、ニューイングランドトレイルの周辺情報を集めながら、実際にどう歩くか計画を立てていきます。

    ということで、早速ホームページをチェック。アメリカをはじめ、海外のある程度名の知れたトレイルには、そのトレイルを管理する団体があります。その公式サイトにあたると、トレイルの距離や起点の情報、歩くのに最適なシーズン、時にはGPSデータやオンラインで位置確認できるインタラクティブマップなども掲載されています。とりあえず計画を立てるには十分なデータがあるので、これらの情報を元に計画を立てていきます。

    (参考)https://newenglandtrail.org/interactive-map/

    これは現地で入手したニューイングランドトレイルのマップ。

    ②「いつ歩くのか?」をちゃんと考える

    トレイルでは、「いつ歩くのか?」の答えとして、「今でしょ!」は正解にはなり得ません。何しろ、今回のニューイングランドトレイルは、春先は雪解けで道がぬかるんでいます。この時期は、ハイカーの天敵である蚊も大量発生することがあります。

    標高が低い位置にあるトレイルなので、夏はとても歩けるような気温ではありませんし、冬は雪が積もります。そうすると、秋が一番歩きやすい季節になります。ニューイングランド地方と呼ばれる、アメリカ合衆国北東部の6州(北から南へメイン州、ニューハンプシャー州、バーモント州、マサチューセッツ州、ロードアイランド州、コネチカット州)を合わせた地方は、紅葉の時期の景色が非常に美しく、世界トップクラスの紅葉だと言われています。

    ならばこの季節に歩くべし。僕は、紅葉の始まる10月にトレイルを歩く事に決めました。

    ※紅葉(イメージカット)。

    どこをスタートにするか?

    いつ歩くか決まったら、次にスタート地点をどうするかを決定します。

    空港を調べると、ニューイングランドトレイルが通るコネチカット州に、国際線が乗り入れている空港がありました。コネチカット州ウィンザーロックスにあるブラットレー国際空港です。

    まずは、ここを拠点に、北の起点ニューハンプシャー州の州境から調べましたが、そこまでの交通手段はありませんでした。それならばと、南の起点であるコネチカット州ギルフォード湾の起点について調べると、なんとアムトラック
    (鉄道の駅)から僅かに0.8マイル(約1.3km)で起点に着くではないですか。歩き出すスタートがしっかり計算でき、終わりが辺鄙(へんぴ)な場所でも都会に向かってヒッチハイクできれば、これまで経験上からいっても何とかなります。そんな理由もあり、今回は南の起点からのスタートで決定しました。

    フェイスブックを情報収集に使う

    結構な確率で、トレイルのコミュニティがフェイスブックのページにあります。例えば、パシフィック・クレスト・トレイルなら2023年PCTハイカーというように新しいページが出来ます。フェイスブックのページが出来ると、その中に多くのハイカーやトレイルエンジェル(ハイカーを手助けしてくれる人)、その年にスルーハイクするハイカーが参加し、多くの情報が掲載されます。

    探してみると、ニューイングランド・トレイルのコミュニティもありましたので、参加を申し込みます。早速あいさつ代わりに「今年9月から歩きます。起点の情報教えて下さい」と書き込むと、優しい人々からの多くのアドバイスが書き込まれます。どうやら、どっちを起点にしてもタイミングが合えばお手伝いしてくれるトレイルエンジェルもいるようです。

    シェルターやキャンプサイトの確認

    さすが、トレイルの本場のエリアです。ニューイングランドトレイルの沿道には、豊富とはいえないまでも、シェルターやキャンプサイトがポツポツと点在しています。これらの宿泊は事前申し込みが必要になのですが、無料で泊まれるようです。

    ただし、ニューイングランドトレイルは私有地を通ることが多く、無断で私有地にテントを張ってしまい問題になることもあるようです。かといって、泊まる所がない場合、トレイル近くに宿があるかというとほぼありません。慎重に計画を立てるしかありません。

    まずは1日に歩く距離を決め、近くにあるキャンプサイトやシェルターの予約サイトで空きの確認をします。どうしても泊まる所がない場合は、民家の無いエリアを選び、ビバークするしかありません。具体的な私有地の位置が分からないので、集落から離れたトレイルの駐車場を中心にビバーク先を決め、実際には現地でテントを張る場所は調整することにします。ということで、おおよそのポイントを押さえると、必然的に歩く計画がほぼ完了しました。

    ニューイングランドトレイルのシェルター。

    歩行計画書の作成

    上記の情報を元に、泊まる宿、補給する町や場所を決めます。まずは、無料で泊まれるシェルターやキャンプサイトをスケジュールに従って、1つ1つ早めに予約していきます。予約は早い者勝ちですので、すぐに申し込みます。

    トレイルへのアクセスや移動時間、燃料の購入のための日数を入れ込むと、おおむね計画表は出来ます。歩行計画が決まれば、スケジュールを確認して直ぐにエアチケットと宿の予約をします。エアチケットはいつが安いか分かりませんが、
    1カ月前くらいが一番いいと聞いたので、それくらいには予約しておききます。

    エアチケットを取ったら、アメリカで泊まる宿もある程度決定しますので、アゴダかブッキングコムで、日本にいる時に予約します。アゴダの場合、無料キャンセルで予約できる場合があるので、それを確認しつつ安い時に予約しておきます。特に円安の今回は、確定して動かないだろう宿の宿泊は全部予約しました。のちにチェックすると、直前だと金額が高かったり、安い宿はすでに満室になっていたりするようでした。

    結局、早め早めの計画や準備は心にも余裕が出来ますし、お財布にも優しいのです。

    次回は、トレイルの携行する食料の準備についてです。

    New England Trail公式サイト

    私が書きました!
    プロハイカー
    斉藤正史
    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。最新情報はブログを。また、BE-PAL.netにて「TOKYO山頂ガイド」を連載中。

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