vol.5は、いよいよアメリカに渡ります。
旧友からの有り難い提案
出発を目の前にした僕に、フェイスブックのメッセンジャーで連絡が入りました。
「マサ、僕はニューイングランドトレイルの北の方に住んでいるんだけど手伝おうか?」
という内容でした。メッセンジャーの差出人はポートレイト。僕は、彼のトレイルネームを思い出すのに少し時間がかかりました。何回かやり取りし、ようやく思い出したほど。それくらい久々でした。
彼とは、2012年のパシフィック・クレスト・トレイルを歩いた時に知り合いました。ウルトラライトの装備なのに、一眼レフを持つエンジニア。かなりの偏食で、ジャンクフードが好きだったことを思い出しました。再会したのは、2013年のイエローストン国立公園。僕はコンチネンタル・ディバイド・トレイルを南下し、ポートレイトは彼女と一緒に南から北を目指して歩いてきて、行き会いました。
そう、僕とポートレイトは、トリプルクラウナー(アメリカ3大ロングトレイルを踏破したハイカーに与えられる称号)の同期でもあります。僕はプロハイカーとして歩き続け、彼はエンジニアをしながら各地のトレイルを歩いていたのでした。
ポートレイトからの「手伝おうか?」という申し出は、まさに渡りに船。僕は飛行機の到着時間や計画を伝えました。「僕の彼女がニューイングランド・トレイルを歩いた時、グリーンフィールドまで電車で来てもらって、北の起点まで車で送っていったんだ。マサもどう?」とポートレイト。調べると、グリーンフィールドに宿泊施設はあったが、軒並み3万円超えという価格です。ずいぶん高いので、ポートレイトは「家に泊まればいいよ」と言ってくれたのでした。
当初は南から歩くつもりで手配してしまったので、全て一旦キャンセル。トレイルの計画も作り直して、予約したホテルもキャンセルしました。キャンセル無料のホテルを予約して良かったと心から思いました。
ただし、スタート地点が反対になったからといって、単にスケジュールを反対にすれば踏破出来る程、単純ではありません。再度予定と補給計画を組み直しました。日数は、概ね予定通りに収まったので、航空券は変える必要が無かったことにほっとしました。
いざ、アメリカへ
地元の山形から深夜バスに乗り、東京へ。羽田空港から、アメリカへ向かいました。日本からアメリカの東部へは、12時間ほどかかります。これまでの経験からいっても、睡眠不足ぐらいが丁度良いと感じます。アメリカに到着して直ぐに歩く僕は、時差の調整を飛行機の中でしておきたかったのです。その点、今回は3列シートに僕一人という席で、とても恵まれたフライトでのスタートでした。
乗り継ぎにはたっぷり2時間ありましたが、入国審査は長蛇の列。さすがに1時間を切っても進まない状況に焦り始めました。しかも、スマホにアメリカのSIMを差すも、全くアンテナが立たない状況がさらに焦りを助長するのでした。
ようやくブラットレー国際空港への乗り継ぎ便のチェックインカウンターに着くころには、すでに搭乗が始まっていて、すぐに一番最後のグループが呼び出されていました。飛行機に乗り込むと、アジア人の姿はありませんでした。
ブラットレー国際空港は、さほど大きな空港でもなく、荷物の引き取りもかなりスムーズでした。バス乗り場の位置が分からず迷っていると、すでにバスは出発していました。しかも、アムトラック(鉄道)のウィンザーロック駅から今回のニューイングランド・トレイルの起点となるグリーンフィールド行きの列車時間が迫っているのでした。
実は、前回アメリカに来た2018年から使用しているアプリがあります。タクシーアプリといえばUberが有名ですが、Uberより安価で乗れるといわれるLYFTもあります。アプリをインストールすると、近くにいるLYFTの登録車が表示されます。車が少ない時間帯は少し高額ですが、車がたくさんいるエリアなどでは価格が安く利用できます。最近では、トレイルから町に行くときに利用する人もいるようです。早速LYFTを起動させ、一番近くにいる車にオーダーを掛けました。
すると、直ぐに来てくれました。「列車に間に合うように行けますか?」と聞くと「ギリギリだね」という答え。ドライバーは急いでくれたのですが、結局は列車の時間より2分遅れでの到着でした。しかし、アメリカの列車は良く遅れる。この日も遅れていて間にあったのでした。
結局1時間ほど待って、グリーンフィールド行き列車に乗ろうとすると、「ネットで申し込みした番号を見せてください」と言われ、予約していないと答えると、ネットから予約しないと乗れない、次の列車を予約してください、といい、無情にも列車は発車しました。現金が使えないなんて聞いたことがありません。前回アメリカに来た2018年は、間違いなく現金で乗れたのですが…。
そういえばネットが繋がらなかったと思い、スマホを見るとアンテナが立っていました。しかし、次の列車は1時間後だったのですが、アプリを入れインストールしても、なぜか予約の画面から先に進みません。何度も試しますが、全くアクセスできませんでした。
自動翻訳を切ったりと色々試しましたが、ダメ。気づけば、最終列車まで1時間を切っています。いっそ、空港に戻って朝一でグリーンフィールドに行くか…。と悩みつつ、再起動をかけてから再度試すと、すんなり予約出来たのでした。列車が来る15分前、ようやくチケットをゲット。グリーンフィールドに着くのは深夜0時20分。ポートレイトに連絡し、電車に乗り込むとどっと疲れに襲われました。
色々ありましたが、こうして僕は何とか当初の予定通り、今回のニューイングランド・トレイルのスタート地点となるグリーンフィールド着けることになったのでした。
ということで、次回は「久々のトレイルで痛感したこと」です。