トレイルの幕開けはトリプルクラウナー仲間のうれしい申し出と…ドタバタ【プロハイカー斉藤のアメリカ東海岸トレイル行状記 vol.5】
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    2024.01.18

    トレイルの幕開けはトリプルクラウナー仲間のうれしい申し出と…ドタバタ【プロハイカー斉藤のアメリカ東海岸トレイル行状記 vol.5】

    トレイルの幕開けはトリプルクラウナー仲間のうれしい申し出と…ドタバタ【プロハイカー斉藤のアメリカ東海岸トレイル行状記 vol.5】
    ニューヨークやボストンからも近い、アメリカ東海岸にある「ニューイングランドトレイル」。2023年10月、世界各国のロングトレイルを次々と踏破している日本で唯一のプロハイカー・斉藤正史さんが、そのニューイングランドトレイルに挑みました。日本ではあまり知られていないニューイングランドトレイルの実態、アメリカ東海岸のトレイル事情などについて、斉藤さんによる実感たっぷりの最新リポートをお届けします。

    vol.5は、いよいよアメリカに渡ります。

    旧友からの有り難い提案

    出発を目の前にした僕に、フェイスブックのメッセンジャーで連絡が入りました。

    「マサ、僕はニューイングランドトレイルの北の方に住んでいるんだけど手伝おうか?」

    という内容でした。メッセンジャーの差出人はポートレイト。僕は、彼のトレイルネームを思い出すのに少し時間がかかりました。何回かやり取りし、ようやく思い出したほど。それくらい久々でした。

    彼とは、2012年のパシフィック・クレスト・トレイルを歩いた時に知り合いました。ウルトラライトの装備なのに、一眼レフを持つエンジニア。かなりの偏食で、ジャンクフードが好きだったことを思い出しました。再会したのは、2013年のイエローストン国立公園。僕はコンチネンタル・ディバイド・トレイルを南下し、ポートレイトは彼女と一緒に南から北を目指して歩いてきて、行き会いました。

    そう、僕とポートレイトは、トリプルクラウナー(アメリカ3大ロングトレイルを踏破したハイカーに与えられる称号)の同期でもあります。僕はプロハイカーとして歩き続け、彼はエンジニアをしながら各地のトレイルを歩いていたのでした。

    ポートレイトからの「手伝おうか?」という申し出は、まさに渡りに船。僕は飛行機の到着時間や計画を伝えました。「僕の彼女がニューイングランド・トレイルを歩いた時、グリーンフィールドまで電車で来てもらって、北の起点まで車で送っていったんだ。マサもどう?」とポートレイト。調べると、グリーンフィールドに宿泊施設はあったが、軒並み3万円超えという価格です。ずいぶん高いので、ポートレイトは「家に泊まればいいよ」と言ってくれたのでした。

    当初は南から歩くつもりで手配してしまったので、全て一旦キャンセル。トレイルの計画も作り直して、予約したホテルもキャンセルしました。キャンセル無料のホテルを予約して良かったと心から思いました。

    ただし、スタート地点が反対になったからといって、単にスケジュールを反対にすれば踏破出来る程、単純ではありません。再度予定と補給計画を組み直しました。日数は、概ね予定通りに収まったので、航空券は変える必要が無かったことにほっとしました。

    いざ、アメリカへ

    地元の山形から深夜バスに乗り、東京へ。羽田空港から、アメリカへ向かいました。日本からアメリカの東部へは、12時間ほどかかります。これまでの経験からいっても、睡眠不足ぐらいが丁度良いと感じます。アメリカに到着して直ぐに歩く僕は、時差の調整を飛行機の中でしておきたかったのです。その点、今回は3列シートに僕一人という席で、とても恵まれたフライトでのスタートでした。

    乗り継ぎにはたっぷり2時間ありましたが、入国審査は長蛇の列。さすがに1時間を切っても進まない状況に焦り始めました。しかも、スマホにアメリカのSIMを差すも、全くアンテナが立たない状況がさらに焦りを助長するのでした。

    ようやくブラットレー国際空港への乗り継ぎ便のチェックインカウンターに着くころには、すでに搭乗が始まっていて、すぐに一番最後のグループが呼び出されていました。飛行機に乗り込むと、アジア人の姿はありませんでした。

    ギリ間に合った乗換便。

    ブラットレー国際空港は、さほど大きな空港でもなく、荷物の引き取りもかなりスムーズでした。バス乗り場の位置が分からず迷っていると、すでにバスは出発していました。しかも、アムトラック(鉄道)のウィンザーロック駅から今回のニューイングランド・トレイルの起点となるグリーンフィールド行きの列車時間が迫っているのでした。

    実は、前回アメリカに来た2018年から使用しているアプリがあります。タクシーアプリといえばUberが有名ですが、Uberより安価で乗れるといわれるLYFTもあります。アプリをインストールすると、近くにいるLYFTの登録車が表示されます。車が少ない時間帯は少し高額ですが、車がたくさんいるエリアなどでは価格が安く利用できます。最近では、トレイルから町に行くときに利用する人もいるようです。早速LYFTを起動させ、一番近くにいる車にオーダーを掛けました。

    すると、直ぐに来てくれました。「列車に間に合うように行けますか?」と聞くと「ギリギリだね」という答え。ドライバーは急いでくれたのですが、結局は列車の時間より2分遅れでの到着でした。しかし、アメリカの列車は良く遅れる。この日も遅れていて間にあったのでした。

    何にもないアムトラックのウィンザーロック駅。

    結局1時間ほど待って、グリーンフィールド行き列車に乗ろうとすると、「ネットで申し込みした番号を見せてください」と言われ、予約していないと答えると、ネットから予約しないと乗れない、次の列車を予約してください、といい、無情にも列車は発車しました。現金が使えないなんて聞いたことがありません。前回アメリカに来た2018年は、間違いなく現金で乗れたのですが…。

    そういえばネットが繋がらなかったと思い、スマホを見るとアンテナが立っていました。しかし、次の列車は1時間後だったのですが、アプリを入れインストールしても、なぜか予約の画面から先に進みません。何度も試しますが、全くアクセスできませんでした。

    自動翻訳を切ったりと色々試しましたが、ダメ。気づけば、最終列車まで1時間を切っています。いっそ、空港に戻って朝一でグリーンフィールドに行くか…。と悩みつつ、再起動をかけてから再度試すと、すんなり予約出来たのでした。列車が来る15分前、ようやくチケットをゲット。グリーンフィールドに着くのは深夜0時20分。ポートレイトに連絡し、電車に乗り込むとどっと疲れに襲われました。

    色々ありましたが、こうして僕は何とか当初の予定通り、今回のニューイングランド・トレイルのスタート地点となるグリーンフィールド着けることになったのでした。

    ということで、次回は「久々のトレイルで痛感したこと」です。

    New England Trail公式サイト

    私が書きました!
    プロハイカー
    斉藤正史
    2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。トレイルカルチャー普及のため、海外のトレイルを歩き、アウトドア媒体を中心に寄稿する傍ら、地元山形にトレイルのコースを作る活動「山形ロングトレイル(YLT)」を行なう。スルーハイク(単年で一気にルートを歩く方法)にこだわり、スルーハイクしたトレイルだけで22.000km(地球半周以上)を超える。最新情報はブログを。また、BE-PAL.netにて「TOKYO山頂ガイド」を連載中。

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