どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。今回は真夏のオーストラリアから抜け出して、冬の日本からお届けします。
さてさて2023年の暮れも押し迫った12月下旬。私は冒頭の写真の場所に行ってきました。「うわっ、その噴火口って富士山頂のお鉢かよ~。登山道が閉鎖されたこの時期に行くなんて、おまえはいつから迷惑系ユーチューバーになったんだよ~」という皆様の声が聞こえてきそうですが…よく見てください。雪はどこにもありません。
じつはここ、富士山ではなく東京都の伊豆大島なんです! そして山の名前は三原山。
この三原山へのハイキングツアーを、東京の竹芝ターミナルなどからの船を運航している東海汽船が主催しています。で、前年に一時帰国したときにプライベートで行ってすごく気に入ったので、今回取材することにしました。添乗員付きのツアーと各種チケットなどが用意されるフリーツアーの2種類があり、前回は後者だったので今回は前者にしてみました。
じつはこのツアー、お鉢まわりハイキング以外にも楽しいことがてんこ盛りなんです!
フルフラットの寝台で「船中泊」!
ツアーのスタートは午後10時、東京の竹芝旅客ターミナル。はい、伊豆大島まで大型客船で向かいます。
このツアーで用意されている船室は「特2等」。名称は微妙ですが、なんとフルフラットの二段ベッド寝台なんです! 敷居はレールカーテンだけとはいえプライバシーも保てて、なによりのびのび寝られるフルフラットです!
長さは身長180センチの私が寝転んでも、頭上も足元も余裕の2メートル以上。床面はクッションで、掛布団もついているので、快適に寝られます。
登山でよく使う夜行の乗り物というとバスを思い浮かべますが、通常「座席」のみで「仮眠」くらいしかできません。寝転がってゆっくりと体を休められるのがうれしいですね。
ところがこの東京湾には魔物が潜んでいます。いや、ダイオウイカとかそういうのではなく…。
はい、「夜景」です。通常夜景というと高いところとかタワーやビルの上から見下ろすもので、見上げたり水平に見たりするのもまた風情があります。
横浜港から先は明かりも減っていくので、夜景観賞はこのくらいにするのがおすすめです。なんたって伊豆大島到着は朝6時。翌日のハイキングのために充分な休息をとりましょう。
とはいえ、陸の光が減り、暗闇が増すにつれ、また新たな魔物が現れます。はい、星空です。晴れた夜の星空、見事です(船が動いているので写真はなかなか撮れませんが…)。
おすすめの星空観賞スポットは客室としては最上階の6階の後方デッキからまた階段を上って到着する中央甲板。ほぼほぼ真っ暗だからです。見回りに来ていた船員の方も「ここがベストスポット」とおっしゃっていました。
けどとにかく寒い。じつはこの「夜景」と「星空」の鑑賞をしたのは、前年に行ったとき。今回はグッと我慢して早々に寝ました。どちらをとるかは自己判断で。
そうこうするうちに伊豆大島に到着。波の状況などによって岡田港と元町港のどちらに入るか決まるそうです。私の場合は前回も今回も岡田港でした。
下船して右方向に進み、大島温泉ホテル行きの「路線バス」に乗車。もちろんこの代金もツアー代金に含まれています。
乗車時間は約20分。つづら折りの道をぐいぐい上がっていきます。立って乗車の際はグラグラするつり革ではなく、バーを両手でしっかりつかむことをお勧めします。
朝6時45分くらいに大島温泉ホテルに到着。ここで「バイキングの朝食」と「絶景露天風呂のある温泉入浴」という楽しみがあります。特に露天風呂から三原山までの約3キロメートルの間には、眼下に臨む低木の樹林帯以外何もない! 一見の……というか「一浴」の価値ありです!
いよいよハイキングがスタート
さてさてその後、8時半過ぎの路線バスに揺られること約10分。終点の「三原山頂口」からハイキングがスタートです!
二人ともなんと東海汽船の社員で、普段は営業部でお仕事をしているとのこと。知識が豊富でした。
まずは今回のルートを確認しておきましょう。
最初の「山頂遊歩道」は地図にも「舗装道」とあるように歩きやすい道。
私は弾薬庫か何かだと思ったのですが、なんと「噴火の際に飛んでくる噴石を避けるシェルター」だそうです。まあ、吹っ飛んでくる噴石を避けてここまで逃げ切るのも大変そうですが…。
「富士山」「海と島々」など途中も見どころ満載!
で、このあたりは東側の斜面を登っているわけですが…。
この「山頂遊歩道」を登りきり、「カルデラ周廻線 火口一周コース」に入ってすぐに「三原神社」が現れます。
「三原神社」のすぐ先に「火口展望台」という3階建てくらいの高さの建物があります。
メインイベントの「中央火口」を間近に見る!
この先「カルデラ周廻線 火口一周コース」の南側の斜面を登るのですが、前回も今回もここでの強風がすごかったです。特に前回はほぼ四つん這いにならないと歩けない状態。
その後東側斜面を登り切ったあたりが、一番火口を見やすいスポット。つまり今回のハイキングにおける目的地になります。
この三原山中央火口は噴火のたびに大きさや形を変えてきましたが、ほぼ現在の状態になったのは1987年の爆発的噴火のときだそうです。直径350メートル、深さは200メートル。広さは東京ドーム約2.5個分で、深さは東京タワーの3分の2といったところです。
じつはこの「裏砂漠」、国土地理院が発行する地図において、日本で唯一「砂漠」と記された場所だそう。ちなみに「砂漠」と「砂丘」の違いは以前、モートン島での「砂すべり」の記事で書きましたね。
「カルデラ周廻線 火口一周コース」をさらに進むと、右手に「中央火口」とは別の「割れ目火口」というのが見えてきます。
ここは1986年の噴火でできたものだそうです。
「カルデラ周廻線 火口一周コース」から「裏砂漠線」というルートに出ると、あとは基本的には下り坂。
地球とは思えない異空間の「裏砂漠」
今回は少し時間的余裕があるとのことなので、なんと先ほど見た「裏砂漠」にまで足を延ばせることになりました。といっても片道150メートルなので、往復するだけなら5分もかかりません。
そして到着したのがこんな場所。「風の丘」です。
とはいえ地面は「砂」というよりは大きめの粒です。
このスコリアの地面ではただでさえ飛んできた種が根付きにくいうえに、ここは海風が強くてすぐにまた飛ばされてしまうので、「砂漠」になっているのだとか。
「裏砂漠線」に戻り、気持ちのいいススキの原っぱの間を歩きます。
このあたりのススキの原っぱら歩きは本当に気持ちがいいです。
12時前にゴールの大島温泉ホテルに到着。今度は島の食材をたっぷり使ったというお弁当のランチが提供されて、温泉にも入れます。その後13時半過ぎの路線バスで港に向かい、帰りは大型客船ではなく高速ジェット船に約2時間乗って竹芝桟橋に向かいます。
巨大な「お鉢まわり」に、日本唯一の「裏砂漠」。見渡す限りの「海と島々」に、霊峰「富士山」。そんな様々な風景が楽しめる三原山ハイキング。
そこに「絶景露天風呂」と、「バイキングの朝食」と「お弁当の昼食」という内容の異なる2回の食事もプラス。さらには旅情たっぷりの「夜行の大型客船の個室」と、爽快な「高速ジェット船」という2種類の船旅の楽しみも! というなんとも内容充実の「三原山ハイキングツアー」です。
ちなみに開催は、閑散期の10月~3月が中心です(開催日は少ないのですが4~6月もあるとのこと)。2023年10月~2024年1月のツアー料金は1万2000円(2~3月は上記とはお鉢まわり後の内容が変わって1万4000円)です。
2024年1月の船の運賃を見てみると、超お得な「往復きっぷ」を利用してもジェット船が1万1000円で、大型客船特2等船室が1万2000円。朝昼2食と温泉入浴と路線バスの運賃までついて、ほぼ同額で行けちゃう無茶苦茶お得で欲張りなツアーです。
次回は添乗員付きではない「フリープラン」にして、「山頂遊歩道」ではなく「周回乗馬コース」から歩いてみようかな。「裏砂漠」も「風の丘」までではなく、「櫛形山第二展望台」まで足を延ばしてみようかな。
何度も行きたくなる三原山ハイキングです!
東海汽船