ニューイングランドトレイルの北の起点ニューハンプシャー州マサチューセッツ州の州境。
ニューヨークやボストンからも近い、アメリカ東海岸にある「ニューイングランドトレイル」。2023年10月、世界各国のロングトレイルを次々と踏破している日本で唯一のプロハイカー・斉藤正史さんが、そのニューイングランドトレイルに挑みました。日本ではあまり知られていないニューイングランドトレイルの実態、アメリカ東海岸のトレイル事情などについて、斉藤さんによる実感たっぷりの最新リポートをお届けします。
いざボーダーへ
深夜12時過ぎにグリーンフィールド駅に着くと、待っていた車は2台。すぐにポートレイトは車で近づいてきてくれた。握手をし、車のトランクに荷物を入れようとしたが、車はなんとテスラだった。僕のバックパックがギリギリサイズ。僕は車にぶつけないように、慎重に荷物を入れた。聞くと、納車されてまだ3週間だそうです。
静まりかえった町を過ぎ、暗い道を15分ほど進むと、ポートレイトの自宅はありました。
僕はリビング脇の部屋のソファーを寝床にすることにし、寝袋を広げて横になると目覚ましがなるまで気を失っていたのでした。そして目覚めると珍しく頭痛に襲われたのでした。
ポートレイトの話では、2日目に予約しているシェルターは、ポートレイトの家から歩いて10分ほどの所にあるので、「2日後は家にくればいいから必要の無い食料は置いていったら?」と言ってくれたのでした。天気予報では、泊った翌日は大きく1日崩れるとのことだったので、僕は2日間ポートレイトのお宅にお世話になることになったのでした。
使わない食料を部屋に置き、町で燃料を買ってから北の起点、マサチューセッツ州とニューハンプシャー州のボーダーへ向かいました。
途中、テスラが縁石にガリっと擦れるハプニングがあって、若干気まずい雰囲気が漂ったのですが、あまりポートレイトは気にしていない様子で朝9時前にはボーダー近くの駐車場に着いたのでした。
ポートレイトと北の起点までの0.7マイル(約1.1km)を一緒に歩きました。ボーダーに着いたら、また折り返して戻り、駐車場からのスタートになります。
歩きながらライターを持ってくるのを忘れたことに気付いた僕は、途中にシェルターがあるので置かれていないかポートレイトと探して見ました。
シェルターにライターが置いてあることって結構あるのですが、残念ながらありませんでした。どうしようか悩みつつも、とりあえずボーダーへ行き、車に戻れば何とかなるかと考えていると、偶然にもハイカーに出会ったのでした。ニューイングランドトレイルを南から北に歩いてきたハイカー。つまり、まさに今歩き終える瞬間だったのです。ポートレイトはライターを持っているか聞いてくれて、「もう使わないから」とハイカーからライターをもらうことが出来たのでした。幸先の良いトレイルになると感じました。
駐車場に戻ると「じゃ明日の夜」。お互いにそういってポートレイトと別れたのでした。
いざ、シューイングランドトレイル!
紅葉はすでに始まっていましたが、ポートレイトによると、あと1週間くらいするともっと色づいていたかなと。最盛期にはまだ少し早いようです。
トレイルは、アップダウンはあるものの、歩きやすい道でした。
「秋だから1.5Lも水があれば十分じゃない?」ポートレイトからのアドバイスに、僕は2Lの水を背負いました。十分すぎるほどの量だと思っていたのですが、絶え間なく流れる汗と喉の乾きがいつもより酷かったので、途中、浄水器でさらに水を2L作ったのでした。
その水が尽きるころ、ようやく初日に宿泊する予定のシェルターに着いたのでした。
忘れた・・・・・
さらに水を2L作ってから、食料袋を開けると、主食のアルファ米もラーメンも入っていませんでした。入っていたのは、行動食と調理用の乾物だけでした。まさかと思い、シェルターに荷物を広げ確認するも、やはりありません。パッキングしなおした時にポートレイトの家に置いてきてしまったようです。
夕食は、とりあえずドライフードをお湯で戻し、シーチキンと醤油で味を整え食べたのでした。あまり食欲も無かったし、明日の夜にはポートレイトの家です。多少の我慢ですむとは思いつつも、集中力のなさは久々のトレイルだからと甘く考えていたのでした。
初日10.3マイル(約16km)