オオナルコユリの学名は?
オオナルコユリの学名は「Polygonatum macranthum」。ユリ科(キジカクシ科)の多年草。低地や山地の落葉広葉樹林の林床に生える。ナルコユリより大きく、茎の高さは80㎝~1.3m。葉は長さ15~30㎝の細い楕円形。初夏に、花柄から下垂して3~4個の淡緑色の花をつける。別名ヤマナルコユリ、オクノオオバオウセイ。
根茎から作られる盛岡土産の黄精飴は、かつて明治天皇や大正天皇への献上品だった。
薬草の本を調べていたら、「黄精飴」という聞き慣れない飴が載っていた。ユリ科(キジカクシ科)のナルコユリやアマドコロの根茎から作られるこの飴は、昔から強壮・強精薬として有名で、滝沢馬琴も吉原の遊里に上り込む黄精売りの声を追憶した一文を残しているし、小林一茶も文化12年(1815年)5月、および文化15年7月に黄精(ナルコユリの根茎)を掘ったことを日記に残しているという。
薬草の本には「元祖黄精飴盛岡長沢屋」とあり、岩手の盛岡では今でも土産物として売られているらしい。幸いなことに高校時代の同級生、阿部金實さんが盛岡に住んでいるので、彼に頼んでその飴を送ってもらった。
黄精飴は、ナルコユリやアマドコロの地下茎を煎じた汁を砂糖、飴、餅粉に混入して作った求肥である――と説明書に書いてあった。漢方では薬名を「玉竹」「姜蛇」とも呼び、不老長寿の薬草として胃腸を強くし、気力を増し、心筋を潤す……などの効果があるという。
食べてみると、柔らかで舌ざわりが良く、とてもおいしい。常用すれば顔のシミが消えて、顔色が良くなり、長生きできる仙薬……というのだから、常用したいものだ。
黄精の一種、オオナルコユリの地下茎には、長さ5㎝ほどもある丸く平べったい芋がいくつも連なっている。この野草は、山歩き好きの私もこれまでに三度しか見つけたことがない。
立ち上がる春の新芽は親指ほどの太さで数本かたまって伸びるが、この新芽を茹でると、まるで砂糖で煮詰めたように甘い。冬に掘り出した地下茎をすりおろして天ぷらにしてみると、これがまたとんでもなく甘くておいしいのだ。
オオナルコユリの花は美しい
オオナルコユリの弓なりに反る茎には、梅雨時に淡い緑色のとても美しい花がつく。
立ち上がるオオナルコユリの太い新芽。
茹でるだけで驚くほど甘い。
梅雨時にはこんなに美しい花をつける。
盛岡の友人が送ってくれた黄精飴。
おくやまひさし プロフィール
画家・写真家・ナチュラリスト。
1937年、秋田県横手市生まれ。自然や植物に親しむ幼少期を過ごす。写真技術を独学で学んだのち、日本各地で撮影や自然の観察を開始。以降、イラストレーター、写真家として図鑑や写真集、書籍を数多く出版。
※イラスト・写真・文 おくやまひさし
(BE-PAL 2024年2月号より)