普段から何気なく口にしている野菜や果物ですが、食卓に届くまでどのようにして育てられているかご存知でしょうか?
サラリーマンを退職して農業を始めた私ですが、農業を営んでいく中で、改めて「食」の大切さと農業の大変さを感じました。
そんな農業のリアルを、自然やアウトドアが大好きなBE-PALの読者にも知ってもらいたい!
ということで、今回は野菜や果物ができるまでの過程で実際に農家が行っている仕事を紹介していきたいと思います。
農業のリアルを知ってもらい、普段の生活で「食」をより身近に、そして大切に感じていただければ嬉しいです。
農産物には旬がある
まず知って欲しいのが、育てられている野菜や果物には、それぞれ旬の時期があるということ。
現在は、生産技術の向上や産地のリレー(生産地が時期によって変わること)、輸入などによって通年で食べられることもありますが、本来は一定の期間に収穫期を迎えるものがほとんどです。種類や品種によって違いはありますが、収穫の適期は短く、旬の時期はあっという間に過ぎてしまうことも珍しくありません。
収穫時期はいわゆる“繁忙期”となり、商品化や発送作業など、とても慌ただしくなります。
オフシーズンのリアルな仕事とは
以前、知人に「収穫以外の時期はやることあるの?」と聞かれたことがあったのですが、実は収穫時期以外の“オフシーズン”も仕事がたくさんあるのです!
今回は、私が育てている山形県の特産品「さくらんぼ」を例に、農業を営む中で実際に行っているリアルな仕事をいくつかご紹介します。
剪定
剪定とは、樹木の枝を切り収穫量の調整や品質の向上、太陽光が入るように樹の形を整えたりする作業のこと。
さくらんぼは樹に果実が実る植物なので、樹が休眠期に入る冬期間に剪定を行い、芽が動き始める春までに樹の形を整えます。毎年どんどん枝が伸びていくので、ハサミやノコギリを使用して切り落としていきます。
枝拾い
剪定で切り落とした枝を拾い、他の作業がしやすいように畑の中を綺麗にする作業です。文字通り枝を拾っていくだけなのですが、中腰の姿勢が続くので腰への負担が大きい大変な作業です……。
人工受粉
花が咲いた後、実をつけるためには受粉が必要です。
基本的にはミツバチが受粉をしてくれるのですが、天候によってはミツバチが飛ばないこともあるので、人力で受粉作業をすることもあります。毛ばたきなどを使用して花粉を採取し、違う樹の花につけていきます。
摘果
甘く美味しく、大きい実を収穫するために、余分な果実を摘み取ります。
摘み取りは手作業で行うので、地道な作業の繰り返しになります。
葉摘み
さくらんぼは太陽光を浴びることで、真っ赤な色になります。
葉が邪魔をして果実に太陽光が当たらないことがあるので、そういった場合は余分な葉を一枚一枚摘み取っていきます。こちらも摘果と同じく、地道な作業をひたすら続けていきます。
ビニール張り
さくらんぼは雨に濡れると実が割れてしまい、商品にすることができません。
そのため、雨に当たらないよう収穫の前後だけテントのようなビニール製の屋根を広げます。高い場所での作業のため危険も伴い、とても時間のかかる作業です。
草刈り
さくらんぼの樹が病気になるのを防いだり、畑が荒れてしまわないように、伸びてきた雑草を刈り取る必要があります。
雑草魂とはまさにこのこと。春以降の雑草は伸びるのがとても早く、気がつくと膝くらいの高さまで成長してしまいます。こまめに草刈りをしていないと刈るのも大変になるうえ、周囲の方々にも迷惑をかけてしまうので、ワンシーズンに何度も行う大切な作業です。
野菜や果物はたくさんの過程を経て手元に届いている
今回紹介した作業は一部になりますが、こういった“オフシーズン”の仕事を経て、収穫されたさくらんぼがスーパーや百貨店などで販売されるのです。
他の野菜や果物もこうした仕事の繰り返しによって、ようやく収穫まで辿り着きます。今回は果樹のさくらんぼを紹介しましたが、野菜はまた違った仕事で、さらに手間のかかる種類もあります。
食品ロスの問題などが近年注目されていますが、購入する際や食べるときは、ぜひ農家さんの努力を感じながら美味しく食べてくれると嬉しいです。