オリオンのベルトは天のベルト
冬に限らず、星座の中で最も知られた星座がオリオン座ではないでしょうか。モデルは、ギリシア神話に出てくる狩人オリオンです。まるで隣のおうし座に飛びかかるかのように棍棒を振り上げていますが、ギリシア神話には雄牛と闘うオリオンの話は出てきません。
右肩に赤く光る1等星ベテルギウス、左足に青く光る1等星リゲル。そしてその間、オリオンのベルトの部分に「三つ星」が光ります。2等星の星が3つ、ほぼ均等に並んでいます。均整の取れた形、1等星を2つも持つ豪華さに加え、オリオン座の存在をかくも際立たせているのは、この「三つ星」の美しさでしょう。
三つ星は、右からミンタカ、アルニラム、アルニタクという名前です。明るさも並び方もそろっていますが、ミンタカは約900年光年、アルニラムはが約1300光年、アルニタクが約800光年と、距離はバラバラです。
ミンタカとアルニタクはアラビア語でベルトという意味で、まさにオリオンのベルトです。また、オリオン座は「天の赤道上」にあります。天の赤道とは、地球の赤道を天球まで伸ばした線のことです。
“オリオンの剣”は肉眼で見える大星雲
冬の晴れた夜空では、オリオン座の三ツ星の下が、ちょっとボヤッとしているのが見えます。オリオン大星雲です。これもオリオン座の特別なところでしょう。おそらく日本からはもっとも見つけやすい星雲です。
ボヤッとながら、3つほど星が並んでいるようにも見えるので「小三つ星」と呼ばれます。星図ではオリオンのベルトから提げられた剣が描かれ、「オリオンの剣」とも呼ばれます。
ぜひ双眼鏡を向けてほしい天体です。小三つ星の真ん中あたりが雲のようにボヤ〜ッと見えると思います。これがオリオン座大星雲です。
星雲はガスやチリが集まっている場所です。このガスの塊から新しい星が誕生してきます。星のゆりかごと呼ばれる由縁です。オリオン座の小三つ星の近くに青く光る星が多いのは、オリオン座大星雲から生まれたからではないかと考えられます。
オリオン座大星雲の中の、生まれたばかりの星が集まっている「トラペジウム」と呼ばれる星団は特に美しく有名です。小さな望遠鏡を向ければ、4つ以上の星が見つかると思います。
また、望遠鏡で天体の像を拡大すると、面積あたりの明るさは拡散されて暗くなってしまいます。その上視野も狭まるので、オリオン座大星雲そのものが見にくくなってしまいます。私も昔、大星雲に天体望遠鏡を向けたことがありますが、暗い雲しか見えずガッカリした経験があります。その点でも初心者には双眼鏡がおすすめです。
ところで、オリオン座大星雲は「M42」という番号でも知られてています。MはメシエのM。星雲や星団を観察して記録した18世紀のフランスの天文学者シャルル・メシエです。メシエが作成した星雲・星団の記録を「メシエ・カタログ」といいますが、M42とはカタログの42番目に記されている天体です。肉眼でも見えるオリオン座大星雲が42番とずいぶん後ろに記録されているのにはメシエなりのワケがあります。「メシエカタログ」については、また改めてご紹介しましょう。
構成/佐藤恵菜