芯から体が温まるこの季節が一番だ。
自然と共に癒やされる「いい湯♪」を一挙にご紹介!
今回は秘湯探検家の渡辺裕美さんが、長野県にある名湯をレポート!
私が行ってきました!
秘湯探検家 渡辺裕美
秘湯や野湯にひとりで行くのが大好きな秘湯探検家。これまで巡った温泉は国内外含め2,500か所以上。著書『絶景温泉ひとり旅そろそろソロ秘湯』(小学館)など。「雪見の秘湯へ レッツ・ゴー!」
目的地|松川河原の野湯&七味温泉(長野県・高山村)
◦コースタイム 七味温泉バス停・林道入口(15分)―松川河原(3分)―河原の野湯(18分)―七味温泉バス停・林道入口(3分)―七味温泉(車10分)ー見晴茶屋
◦アクセス 七味温泉バス停までは須坂駅から車で約40分
徒歩約20分で行けるワイルドな野湯
春夏秋冬、四季を問わずこれまで2500か所以上の温泉、更には雪山を16時間歩くような過酷な山の秘湯を巡ってきた私だが、中でも雪景色が楽しめる冬の露天風呂がお気に入り。
特に温泉が〝にごり湯〟ならいうことなしだ。鮮やかなお湯の色が雪化粧した山々に映えて、コントラストが一層秘湯情緒を高めてくれるから。
そこで今回はみなさんに訪れてほしい場所として、雪景色とにごり湯の両方を楽しめる「松川河原の野湯」と「七味温泉」を歩いてきた。徒歩約20分でワイルドな野湯を楽しめ、さらにスタート地点に引き返して3分歩けば、無人小屋の露天風呂で雪景色を堪能できる。入浴を楽しんだ後は車で少し移動し、地元グルメに舌鼓を打つ──。
この「欲張りコース」を回るには、正午ごろには現地に到着したい。東京駅9時過ぎ発の北陸新幹線で長野駅へ向かい、駅からレンタカーで林道入口のある七味温泉バス停まで、合計3時間ほどで辿り着いた。
ふわふわの新雪を歩きながら自分だけの時間を楽しむ
七味温泉バス停へ到着すると、視界が白い樹氷の世界へと切り替わり、歩く前からワクワクが止まらない。早速、スノーシューに履き替え、林道入口から野湯を目指す。大体、私が野湯を求めて行く所は登山者も行かないような獣道が多いのだが、今回は短距離とはいえ踏み跡がない(笑)。でも、このふわふわした新雪を歩きながら景色を眺めるのが最高に気持ちいい。
松川の河原一帯は小石が赤茶けており、岩陰から乳白色の温泉が湧いている。そろそろだ!
目的地がそう遠くないことを察知し、一気に早足になる。堰堤から一段下の河原へ下りると、岩陰に湯けむりを上げる野湯を発見。知る人ぞ知る「松川河原の野湯」だ。
だが、喜びと同時にふと、過去に川底から湧く高温の野湯でお尻を火傷しそうになりながら1時間ぐらい川の水を加え、温度調節に奮闘したシーンを思い出した。川の野湯は経験上、適温で入るのが難しいのだ。
「まさか、ここも……」と恐る恐る手を浸けるとなんと41度C。
「これはラッキー!」と、奇跡的な温度に感謝し、ゆっくりと漆黒の湯に身を浸すと、心も体もほぐれて万遍の笑みに。
冬晴れの澄んだ青空と白銀の山々をバックに、誰にも邪魔されることのない自分だけの時間。あぁ、いい湯だなぁ~。
1湯目の野湯へGO!
12:30 START
装備を万全にして林道へ
GPSで目的地とルートを確認
雪道では特に進むべき道や河原への降り口がわかりづらいのでGPSを活用しよう。「ジオグラフィカ」などのスマホアプリが便利だ。
いざ林道へ
12:35
新雪さらさら、雪の世界!
かつて温泉施設だった木造の建物を通り過ぎると、樹氷が広がる林道が続く。前方には白い尾根が顔を出す絶景。
12:45
松川の河原へ下りる
飛び石しながら河原を渡るとき、ストックを支えにするとバランスを取りやすい。必ず持っていこう。
川が赤茶けてきた
温泉が湧いている!
12:48
河原の秘湯へ到着!
最初に訪れた河原の野湯は、「松川河原の野湯」。硫化鉄が入っており、湯上がりは手足もタオルも湯浴み着も、ぜんぶ真っ黒になる。
川の水量が少ない時季にしか現われない幻の湯船「松川河原の野湯」。冬のお楽しみ。
気持ち良すぎてとろける~
2湯目の温泉へGO!
13:30
七味温泉に到着!
七味温泉 紅葉館 第2露天風呂(おばあちゃんのお風呂)
2湯目の温泉は七味温泉 紅葉館が管理する向かいの無人小屋の湯。冬季限定の貸切風呂で今は亡き紅葉館のおばあちゃんが管理していた温泉ということで、その名前が付いた。渓谷に面し、秋は色とりどりの紅葉、冬は雪景色が眺められる。
住所:長野県上高井郡高山村大字牧2974-45
電話:026(242)2710
源泉で温泉卵を作れる場所を発見。約40分でぷるんぷるんの温泉卵のでき上がり。
何個でも食べられる
以前は300円を料金箱に入れて入るシステムだった。いかにも秘湯らしい。
どこを見ても白銀の世界が広がる
タヌキも出るよ♪
14:45 GOAL
たっぷり湯に浸かった後はグルメタイム♡
七味温泉から車で10分移動し標高1,500mの見晴茶屋へ。牧場隣接で手作りチーズや毎朝搾りたてのミルクが楽しめる。
焼き色を付けたたっぷりチーズが自慢の焼きチーズカレー。人気No.1だ。
乳清で作ったキャラメルソースと3種のチーズがのったホエーキャラメルピザ。
初心者でも安心! 野湯体験の始め方
普段から野湯に行く際気を使っているのは、「安全面」。山にはクマなどの危険生物もいるし、道迷い、豪雨、吹雪など、挙げだしたらキリがないほど自然のリスクがある。事前に天候やルートを確認すること(少しでも吹雪く予報なら中止にする)や、クマ鈴・虫よけスプレー・GPSを携帯するなど、「備え」を万全にしよう。
また、野湯に持っていくと便利なグッズをご紹介。まずは、手始めとして、天気の良い日に手軽な野湯へ訪れ、大自然の中で歩いたり、温泉に浸かる気持ち良さを味わってみてはいかがだろうか?
持っていきたい4点セット
着替え入れやレジャーシート代わりにもなる45ℓのゴミ袋。雨が降っても安心。
野湯や混浴で活躍する湯浴み着。服を着脱するときの目隠しにもなり大活躍。
サンダルは高温の泥が噴いているボッケなどで火傷防止になる。
野湯は熱すぎたり冷たすぎて入れないことも。まずは温度チェックから。
雪見温泉の醍醐味
❶道中の景色や新雪ふわふわのハイクを堪能
❷にごり湯の色と雪景色のコントラストを愛でる
❸十分温まったら湯から上がりクールダウンし、また入浴!
※構成/渡辺裕美 撮影/太黒敬太
(BE-PAL 2024年3月号より)