でも、目を凝らせば東京都心にも「山」はあります。そんな東京の山の世界を、日本で唯一のプロハイカーである斉藤正史さんが案内します。
FILE36は、池袋にある根津山です。
第36座目「根津山」
今回は、JR池袋駅東口登山口です。
平日でもやはり混雑していますね。今回も直線距離にして僅かの道のりです。ネタを探す前に着いてしまいそうで怖いですね。
え?南池袋公園って?
僕のように地方に住んでいる人間にとって、目的地の南池袋公園といえば、ドラマ「池袋ウエストゲートパーク」に登場する公園です。主人公のマコトの友人・タカシが所属する不良集団「G-Boys」の敵対組織として登場した「ブラックエンジェルス」の活動拠点でもありますね。ちょっとダークなイメージのある人も多いと思います。
さて、そんなイメージが頭の片隅にちらつきつつ、どストレートに南池袋公園を目指しました。
公園に着くと!?
あのテレビでのイメージとは全く違い、明るく芝生の広がる綺麗な都会の公園に変わっていたことに衝撃を受けました。オシャレです。勝手なイメージですが、港区のような感じです。それもそのはず、2016年4月2日に全面リニューアルオープンしたそうで、リニューアルで公園中央に植え付けられた芝生は、季節に合わせて夏向きの品種と冬向きの品種を交互に育てるため、一年中いつでも緑が広がっているそうです。
公園複合施設では、南池袋のビストロ「RACINES」が運営するカフェレストラン「Racines FARM to PARK」が営業しているほか、東日本大震災の経験から帰宅困難者対策備蓄倉庫なども備えられているそうです。
公園の正面入り口から入り、芝生を挟んで公園を半周した反対側に今回の目的の山、根津山があります。現在は、山の存在は無く、山であったことを示す看板が設置されています。
根津山
太平洋戦争前までここには根津嘉一郎さんが所有する長さ600メートル、幅300メートルほどの雑木林が広がっており、所有者に因んで根津山と呼ばれていたそうです。根津嘉一郎は、根津財閥の創設者(現在の東武グループ)だそうです。
戦時中の根津山
戦時中は、根津山の一角に防空壕が掘られていたのですが、1945年4月の城北大空襲で池袋周辺は一面何もない、黒こげの大地となったそうです。根津山は空襲で亡くなった人の仮埋葬地として、遺体が続々と運び込まれ埋葬されたそうです。※戦後、仮埋葬されていた遺体は別の場所に本葬されました。
4.13根津山小さな追悼会
根津山に名も知れずに葬られた方々への鎮魂と平和への祈りをささげようと、城北大空襲50周年となる平成7年に発足し、毎年4月13日に追悼会を開催しているそうです。戦争を直接知らない世代にも、当時の様子や平和への深い思いが受け継がれていってほしいという願いが込められているそうです。
こうして東京の、日本の文化や歴史に触れ、知ることが出来るのも、都内を歩くからならではだと思います。身近な山は、人と共に歩んだ歴史があるのかもしれませんね。
今回も歴史を知る良い山行でした。
次回は「池袋西口から登頂する池袋富士塚」を予定しています。
なお、今回紹介したルートを登った様子は、動画でご覧いただけます。