汚れを落としてから撥水処理を
教えてくれたのはこの人! 株式会社モチヅキ 西脇将美さん
レインウェアは洗うと性能が落ちる……そんな話があるとかいないとか。本当のところはどうなの?MSRやサーマレストをはじめ、ギアの輸入販売やアウトドア専用洗剤ストームを取り扱う株式会社モチヅキの西脇将美さんに直接聞いてみた。
「洗うべきですね(即答!)。泥汚れは放っておくと生地の劣化を早めて撥水力の低下につながり、汗でついた内側の皮脂汚れはメンブレンの機能を妨げて汗蒸れしやすくなってしまうんです」
汚れたままの状態では本来の機能が発揮されないどころか、汗冷えや低体温症の原因にもなりかねないという。恐ろしや〜。
「近年、アウトドア専用の洗剤が多く流通して、各メーカーともウェアやギアの洗浄を推奨するようになりました。それは、有機フッ素化合物不使用への転換が関係しています。ウェアに限らず、これまで撥水加工はフッ素に長年頼っていました。研究が進んだ現在は有害物質という位置付けに。アメリカやヨーロッパでは法律で規制する動きがあり、将来的に使用した商品は販売できなくなっていきます。
そこで業界全体がPFC(フッ素化合物)フリーの素材にシフトし始めているんです。強い撥水力のあるフッ素に比べて、PFCフリー素材の撥水力や耐撥油は劣ってしまう現実も。だから以前にも増してこまめなメンテナンス(洗浄)が必要になっているということもあります」
自然環境に悪影響を及ぼす素材に頼っての自然遊びは、やはりナンセンスだ。マメに洗って長持ちさせようではないか!
「手入れのポイントは、まず汚れを落としてから撥水処理をすることです。汚れの上からいくら撥水処理をしても効果は期待できません。市販の中性洗剤でも洗えますが、柔軟剤や漂白剤などが入っていると素材に残留してウェア類のパフォーマンスが落ちます。その点、アウトドア専用洗剤はそういった余計なものが入っておらず、環境負荷に配慮した原料でできています」
レインウェアを始め中綿モノの洗濯はちょっと手間がかかりそうなイメージだが、洗濯機を使って洗えるものもある(洗濯表示次第)。また乾燥機やアイロンなどの熱処理で撥水力を定着させることができるという。
自分で手入れを始めてみよう!
洗う前に必ず洗濯表示のタグを確認しよう。表示記号が洗い方の基本。2021年に表示記号は一新されている。
アウトドアメーカー各社から発売されているアウトドア専用の洗剤、撥水加工剤。いずれも環境に配慮した原料で作られている。用途や環境に応じて使い分けるといいかもしれない。
お手入れの3大ポイント
■1 汚れをそのままにすると、生地の劣化や撥水力低下につながる
■2 洗剤は柔軟剤、漂白剤、蛍光増白剤、香料が入っていないものを
■3 撥水加工は熱処理することで十分な効果が発揮される
コインランドリーで洗うという手も
全国各地にコインランドリー店舗を展開するBaluko Laundry Placeとモンベルが共同開発したアウトドアウェア・ギアメンテナンス専用の「モンベル撥水コース」を試してみる。
メンテナンス専用「モンベル撥水コース」を完備
洗浄から乾燥までを一気に! 洗剤は香料、着色料不使用のBalukoオリジナルの「peu」を使用。洗浄後にモンベルの撥水剤(コースに右の撥水剤を使用)を浸透させ、約65分工程。
Baluko Laundry Place代々木上原
住所:東京都渋谷区上原3-29-2
電話:03(6407)8415
【セルフランドリー】24時間・年中無休
【クリーニング・洗濯代行】9:00~20:00
【カフェ】9:00~20:00 定休日なし/年末年始・夏季休業あり
モンベル/O.D.メンテナンス はっ水剤(つけ込み専用) 300ml
¥2,420
問い合わせ先:モンベル・カスタマー・サービス TEL:06(6536)5740
Before
After
ふっかふか復活した
Before
After
シャリッと鮮やかに
1 洗う前の準備
前ファスナーは閉める。ポケットは全開の状態にして水抜けを良く。
汗汚れを重点的に洗う場合は裏返し。表面汚れが気になるときは裏返さずそのまま。
2 洗濯機へ投入
今回はシュラフ1つにレイウェア上下1着を洗う。シュラフは単体で洗ったほうが良いとのことで、別々の洗濯機へ投入。洗濯は約5㎏まで(ダウンジャケット3着が目安)。詰め込み過ぎに注意。
「モンベル撥水コース」で乾燥までお任せ。しっかり洗浄をしたかったシュラフは裏返して洗ってみた。
シュラフ(左)のほうは洗う水が多少濁ってきたような。かなり汚れてた!?
3 乾き具合をチェック
65分の工程終了。シュラフのほうはまだ湿り気があったので、さらに30分間乾燥機へ。
4 洗濯完了!
さほど汚れていない感じだったレインウェアだったが、いざ洗い終わると色鮮やかにシャリ感も増して見違えるように。洗う前とは明らかに違う!
「色が鮮やかになった」色みが1段階明るくなった印象で驚いた。
家で洗うときは?
アウトドア専用洗剤「ストーム」を使って洗濯機で洗ってみる。洗剤と撥水剤を一緒に入れて洗えるので、とても手軽。乾燥機はコインランドリーを利用して仕上げた。
Before
After
1 洗う前の準備
穴などないか確認した後、前ファスナーやポケットを閉める。裾にあるドローコード類は緩めておく。洗濯ネットに収めれば準備完了。
2 専用洗剤で洗う
洗濯機に入れ、脱水までを行なう。洗い方のモードはウェアの洗濯表示に従って選ぶ。
ストーム/
㊨ダウンウォッシュ 225ml ¥990
㊧ダウンプルーファー 225ml ¥1,430
問い合わせ先:モチヅキ ユーザーサポートダイヤル TEL:0256(32)0860
3 乾燥機を使って乾かす
必ず「低温」モードで乾燥させる。ドライボールは中綿をほぐす役割で、丸めた靴下でも代用できる。
丸めた靴下で代用OK
乾燥機がない場合
中綿が偏らないように平干しネットを利用。風通しの良い日陰に干す。
4 洗濯完了!
今回は30分で乾燥は完了。ぷりっと艶やかに本来の膨らみを取り戻した。
洗い上がりふっくら
TIPS ❶アイロンで撥水を蘇らせる
自然乾燥では撥水剤を定着させるために低温でアイロンを当てるという手もある。
TIPS❷穴やほころびは補修してから
穴などは必ず補修してから洗おう。ダウン抜けや生地裂けの原因になってしまう。
NEWS|撥水機能を回復させる家庭用洗濯機が登場
ヒートポンプ乾燥の熱を利用し、生地表面の撥水基を立ち上がらせて性能を蘇らせる。家で手軽に撥水力を回復だ!
パナソニック/ドラム式洗濯乾燥機NA-LX129CL/R
¥368,280
(公式通販サイト価格)
問い合わせ先:パナソニックお客様ご相談センター TEL:0120-878-691
※構成/須藤ナオミ 撮影/山本会里
(BE-PAL 2024年3月号より)