画家・写真家・ナチュラリストの奥山ひさしさんによる、美しいイラストと写真付きの自然エッセイです。
パフィオペディラムの学名はPaphiopedilum
ラン科パフィオペディラム(パフィオペディルム)属の多年草の総称。幅が広い楕円形の葉を地上に広げ、その中心から短い花茎を伸ばして1~数個の花をつける。亜熱帯地方の湿地に分布。園芸種も多い。
ランの種類は多く、世界にはなんと2万~2万5000種ものランがあるという。
友人が持ってきた洋ランは、11月から2月まで長いこと花を楽しませてくれた。
何というランなのかね?と聞くと、いやオレも友達にもらったもので、何というランなのかはわからんよ……と、駄洒落のような返事。図書館で調べてみると、どうやらパフィオペディラムというややこしい名前のランらしい。
洋ランの花の作りは基本的にはみな同じで、私の手元のパフィオペディラムの唇弁は袋状になっているが、ウツボカズラのような食虫植物ではない。よく株が殖えるランで、毎年のように株分けするせいで、いつのまにか6鉢にもなってしまったから、家内の友人たちへ分けてあげている。
ランはユリ科やヒガンバナ科の近縁とされているが、これがまたとんでもなく種類が多い。世界にはなんと2万~2万5000種もあるらしいのだ。その多くは海外から勝手に持ち出すことを禁じたワシントン条約で国際取引が禁止されている。
東京都内でも有名な園芸店へ行ってみたら、ランの女王とよばれるカトレヤをはじめ、シンビジューム、デンドロビューム、オンシジューム、それにコチョウランなどなど、色も形も異なるランがずらっと並んでいた。
数多い洋ランの中でも、私は植物園の温室の壁に下げてあったバンダ(ヒスイラン)が好きだ。
お偉方への贈り物にコチョウランが選ばれるのは
なぜなのだろう。蝶が群がって飛ぶような形に見立てて「胡蝶蘭」という名前になったらしいが、英名では熱帯の美しい蛾が羽を広げたイメージから「モス・オーキッド」と呼ぶらしい。
こちらがパフィオペディラムの花
次々に株が殖えるパフィオペディラム。
その他様々な花を咲かせるランの仲間
ランの女王の名にふさわしいカトレヤ。
コチョウランはやたらと値段が高い。
私の好きなバンダ。とても希少な種類。
おくやまひさし プロフィール
画家・写真家・ナチュラリスト。
1937年、秋田県横手市生まれ。自然や植物に親しむ幼少期を過ごす。写真技術を独学で学んだのち、日本各地で撮影や自然の観察を開始。以降、イラストレーター、写真家として図鑑や写真集、書籍を数多く出版。
(BE-PAL 2024年3月号より)