翌日は早朝から出発し、一気にパラン・ラを越えました。チベット仏教の5色の祈祷旗、タルチョが、冷たい風にはためいていました。
腕時計の高度計は、標高5500メートルを示していました。さっきまで登ってきた南側の斜面をふりかえると、よくもまあここまで来れたものだと思います。
そして、これから下っていく峠の北側の斜面を見て、唖然としました。一面の氷河。途中で氷河をトラバースしていく場所があるとは聞いていましたが、ここまで巨大な氷河だとは想像していませんでした。
氷の表面はパリパリなので、アイゼンが必要なほどではありませんでしたが、裂け目や水流を慎重に見極めつつ、ゆっくりと下っていきます。
峠から下りはじめて数時間後、ようやく氷の上から地面のあるところに移ることができました。スピティからラダックを歩いて目指す旅は、まだまだ続きます。
◎文/写真=山本高樹 Takaki Yamamoto
著述家・編集者・写真家。インド北部のラダック地方の取材がライフワーク。著書『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(雷鳥社)ほか多数。
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