知られざるマリンスポーツ天国ドバイ!
ドバイはいつも”桁違い”のことをして、世界中の人々をあっと言わせる天才だと思うのは、きっと私だけではないと思います。世界一高い建造物「ブルジュ・カリファ」、世界で唯一の7つ星ホテル「ブルジュ・アル・アラブ」など、規格外の発想で世界最高峰を目指して次々とやってのけるのだからすごい。世界最大の観覧車、世界最大の噴水、世界最大のショッピングモール、世界最大の額縁…(笑)
そんなドバイにはなんと「世界最大の世界地図」まであるのです!
今回はその「世界最大の世界地図」をSUP(スタンドアップパドルボート。サーフボードのような板の上に立って、櫂(かい)でごくあれです!)でめぐるレースについてご紹介します!
ドバイの人工島群「The World Islands(ザ・ワールド・アイランズ)
その「世界地図」の名は「The World Islands(ザ・ワールド・アイランズ)」。300以上の小さな島が集まり、その群島の形がまるで「縮小した世界地図」のように配置されているというのです。「え?世界地図の縮小って…どういうこと??」一瞬では理解できないのでこの目で確かめたいのですが、それを望めるのは上空からのみ。それって自家用ジェットなんかを持っている人だけが見られるということでしょうか?
この島群の島ごとに「ルーマニア島」「ポーランド島」「ブエノスアイレス島」など、国や都市の名前がついて、中には「ミハエル・シューマッハ島」など、その活躍を称えられ王様から島を送られた有名人の名前がついたものもあるそう。とにかく発想も桁違い、特別感がある設計はさすが、いやこれぞドバイです。
UAEのウォータースポーツ事情
ところで中東といえば、ラクダやデザートサファリなど「砂漠」のイメージがすぐに浮かぶかもしれませんが、実はドバイのあるアラブ首長国連邦(UAE)は「海」にも恵まれた国。ペルシャ湾とオマーン湾に面し、多様な海洋生物が生息する豊かな海では、スキューバダイビングやカヤックなど、様々なマリンアクティビティも盛んな国でもあるのです。
高級リゾートホテルのプライベートビーチ、高級クルーザーやヨットが並ぶマリーナも多くありますが、一般の人たちが訪れることのできるパブリックビーチもたくさん!ビーチにはシャワーや着替えができる施設が整備されており、ビーチベッドがレンタルできたり、サーフショップでSUPやカヤックをレンタルしたり、ウェイクボードやバナナボート、パラセーリングなどを楽しめるマリンスポーツショップなどもあります。雰囲気のいいおしゃれなビーチサイドカフェも充実していて、観光客はもちろんのこと、週末ともなれば家族連れやカップルはもちろん若者からシニアのご夫婦まで多くの住民も海辺に集って楽しんでいます。
世界と名のつく島一周!ドバイのパドル大会
さて冒頭でも紹介した「ザ・ワールド・アイランズ」。ドバイのビーチの沖合に浮かぶこの人工島群をSUPで漕いで一周しようという、パドル大会が昨年12月に開かれました。スタート地点のジュメイラパブリックビーチからザ・ワールド・アイランズまでは、4キロほどの距離ですが、300近くある全島をぐるりと周回して戻ってくると、合計32キロになるというなかなかの長距離耐久パドル大会です。
普段は専用ボートやヘリコプターでしかいかれない島に、この日はSUPを漕いで近づけちゃうこの上ないスペシャル企画、その名もずばり「アラウンド・ザ・ワールド・チャリティ・パドル 2023」。さながらSUPを漕いで島を周り、世界一周しようというもので、一見すると楽しそう!ただ大会要項をよくよく確認すると、”ビギナー向けではまったくありませんのであしからず”とご丁寧にあったので、興味はあるけどSUP初心者の私は、早々に参加は断念しました。それでもいったいどんな大会なのか、参加者はどんな人がいるのか興味しんしんで、会場のあるビーチまでは当日足を運んでみることに。
世界一周パドル会場を覗いてみた(前編)
朝4時50分。まだ夜明け前の真っ暗なビーチに到着。しーんとした砂浜にぽつんと一つテントが立てられ、おそらくここがスタート地点だとわかります。
朝5時。レース参加者の受付が始まりました。その後、主催者からホワイトボードを使って今日のレースの順路や注意事項などが参加者に伝えられます。この時点でまだ朝6時前。それぞれウォーミングアップしたりしながら過ごして、スタート時間まで待ちます。
6時30分いよいよスタート。ようやく明るみ始めた空に向かって、男女50人ほどの参加者が一斉に漕ぎ出していきました。太陽が昇る力に後押しされるようにして、皆さんのパドルを漕ぐ力強さも増していくように見えます。
…と、私が肉眼で確認したのはこのあたりまで。海上で島に向かって漕ぐ参加者たちの後ろ姿が沖に向かって小さくなり、ついにビーチから見えなくなると、空には月に代わって朝日が昇り、週末の朝コーヒー片手に犬を連れて散歩に来る人などもぽつぽつ出て来ました。
すっかり明るくなった頃、私の視線の先に「例のあれ」がどーんと姿を現しました。ドバイが誇る世界一のラグジュアリーホテルです。そうです、このビーチは「ブルジュ・アル・アラブ」と隣り合わせ。やっぱりドバイには「世界一」がゴロゴロそこらじゅうに転がっている感じ、です。
さて、この日12月17日のドバイの朝の気温は18度。そこそこ風の吹いている朝の空気はぐっと冷たく感じられ、持参した熱いお茶を片手にもうしばらく粘って待とうかとも思いましたが、いったん断念。パドラーたちが戻ってくるであろう時間を予測して、しばらくその場を離れることにしました。
世界一周パドル会場を覗いてみた(後編)
32キロの耐久パドル。フィニッシュシーンに立ち会いたいと思い、スタートから4時間後の10時ちょっと過ぎにビーチに再び戻ってきました。スタート時に立てられていたテントは撤去されていて、どこにいけばいいのかもわからなくなり、ビーチ沿いを右往左往。ウロウロキョロキョロするのですが、どこを見渡してもパドルや参加者らしき人の姿は見当たりません。もしかしてもうゴールしちゃって大会終了しちゃったの?と焦ります。そればかりか朝6時の暗く静かだったビーチと、日も高くなってきた10時過ぎの快晴のビーチではまったく様子が違い、水着姿で戯れる人々で混雑し、駐車場も混み合い戸惑い気味の私。
気温は25度近くまでいっきに上がってきました。フルマラソン並みの距離を漕ぐ参加者たちの体力の消耗具合が気になりながらそわそわしていると、11時頃になってようやくスタッフらしき人が現れて、ビーチに目印のテントが再度立てられました。そうか…まだだったか。(見逃してなくてよかった)
完漕したパドラーのゴールシーンに立ち会って
こうして待ちに待って、最初に戻ってきたのは、30代とおぼしき欧米人男性2人。30メートル差で2人続けてフィニッシュ。後で聞けばこれは初めてではなく、長距離漕ぎはかなりの経験ありの2人とのことでしたが、それでもフィニッシュ時間は開始から5時間後の11時半!
30分後に3人目、さらに開始から6時間後の12時半に姿を現した、唯一の日本人参加のパドラーが4人目にゴール。みなさん息をきらしながらも爽やかな笑顔、お互いを称え合い肩を叩きあう様子、ビーチをバックに記念撮影する姿がありました。完漕するってすばらしい!!
ちなみにその後、残りの参加者は結局7時間近くかけて戻ってきて、無事に半日がかりのパドル大会は終了しました。
ドバイの海で「世界をひとまたぎ」できちゃった!?
さて、気になる「世界一周」のパドルの旅は実際どうだったのか。ボードの上から見える景色はいったいどんなものだったのでしょう。「ザ・ワールド・アイランズ」の島と島の間は約100メートル間隔といいますが、皆さん気持ちよく世界一周できたのでしょうか。この世界一周パドルに参加した人たちにあとで感想を聞いてみました。
まずはこの日のコンディションについて口々に。
「とにかく風が強くて向かい風で進まなかったんだ。どの島だったかわからないけど、一休みさせてもらったよ、たぶん南極島だったかな。」
「世界一周?できてよかったけど…足は途中からずっとつりっぱなしだったんだ。」と天候条件の厳しさを語る人がたくさん。
「ブルジュ・アル・アラブの外観がはっきりと見えてビーチにいる人が目に移ったとき、ああああ帰ってこられたーー!!って思って涙が出そうになりました。なかなか、たいへんな旅でした。」(日本人パドラー大野仁之さん)
聞けば、ちょっと島と島の間をショートカットして地球”半周”にした人も中にはいたようですが、みなさん普段は近づけない島々から新しいドバイの海の楽しさを発見して帰ってきたようでした。
朝日に輝く「世界一」のドバイに感動。過酷なレースの疲れも忘れて…
様々な感想を聞く中でも一番多かった声、それはなんといっても作り上げられた贅沢な景色のこと。悪天候のなか漕ぎながら、他にはないユニークな景色をいくつも目に刻んできたようです。
「ブルジュ・カリファは最高にクールだね、どこからみてもあれが見えるとドバイだってわかるんだから」
「ザ・ワールド島には初めて近づいたんだけど、ラグジュアリーなホテルやヴィラも見られて観光気分でおもしろかったよ。途中から余裕がなくなってそれどころじゃなくなったんだけど。」
「明け方の陽の光の中で、ペルシャ湾から見たドバイの景色の素晴らしさ。日の出とともに海上からみたオレンジ色に輝くドバイの摩天楼の景色は感動モノだったよ」
「世界一周(アラウンド・ザ・ワールド)」という名の通り、さすがのスケールの大きさと、超貴重な場所から見たこともないようなドバイの絶景も見られるパドル大会。決して楽しいだけではない、過酷さも備えたなかなかの耐久パドル大会だったということ、またこの大会は参加費の一部が慈善団体への支援に使われるチャリティパドルだったことも付け加えておきます。
いかがでしたか? かつて遊牧民が暮らした砂漠地に、今やドバイに象徴される高層ビルが立ち並ぶ景色、桁違いのラグジュアリーな人やモノが集まる近代都市国家を作り上げたのが、アラビア半島にあるアラブ首長国連邦(UAE)。あなたもこの国で海のアクティビティも体験してみませんか?また砂の上から見るのとは違った”世界一”が見られるかもしれませんよ。
[海上からの写真はすべて提供 大野仁之氏]