行ってみたのは……ライター 須藤ナオミ
アウトドアメディアを中心に執筆する体育会系。横須賀で育ち、青春時代の大半を三浦半島で過ごした半島ローカルでもある。今は逗子市民。
ちなみにジャパンエコトラックって?
トレッキング、サイクリング、パドリングといった移動手段で旅するスタイルを提案。各地のルートマップ(多言語対応)は全国のモンベルストアで入手できるほか、公式アプリはGPSと連動し、アクティビティーや体力レベルからもエリアを手軽に検索できる。
神奈川エリアが追加!
登録エリアに新たに「神奈川」が追加。神奈川県といえば、箱根や丹沢の山々はもちろんのこと、相模湾をはじめとした湘南の海岸線も魅力的だ。また古都鎌倉や近代産業の発展の礎となった横浜など見どころは数知れない。
JR逗子駅から出発してJR横須賀駅へ。見どころたくさん!
南北に長く延びた日本列島は多彩な自然を有している。地域ごとに特色ある食や文化を生み出した変化に富んだ地勢。それらをじっくりと味わうには、ある程度の時間をかけて巡るスローな旅がおすすめだ。ジャパンエコトラックは、トレッキングやサイクリング、パドリングといったアクティビティーを移動手段として、より深く土地を楽しむアウトドア旅。ジャパンエコトラックでは、北海道から九州まで多彩な旅のルートが紹介されているが、昨年末に新たに神奈川エリアが追加された。
神奈川県といえば海あり山あり、数々の魅力的なアウトドアスポットがひしめく。今回は神奈川県南東部に位置するサイクリストにも人気の三浦半島へ。相模湾から東京湾へ抜ける「三浦半島横断サイクリングルート」をチョイス。さらに輪行移動を加え、帰りは電車を利用するアレンジバージョンを楽しんだ。
1月某日。絶好のサイクリング日和となった当日は真冬とは思えないぽかぽか陽気に恵まれた。スタート地点の逗子駅(逗子市)は海岸に程近く、駅周辺にも潮風がそよぐ海の町。駅を出発してまずは海へ。15分ほどで葉山町に入り、静かな町並みを抜けていく。しばらくすると右手に森戸大明神(森戸神社)の赤い鳥居が見えてきた。自転車を停めてお参りすることに。海にせり出した境内からは北斎画よろしく、相模湾と富士山を一望できる。源頼朝創建と伝わるので、鎌倉殿もこの景色を眺めていたのかもしれない。
神社を後にし、右手に海を見ながらさらに南下する。葉山御用邸を過ぎ、立ち寄ったのは長者ヶ崎海岸。ここにはマイルストーンなるモニュメントが設置されている。長者ヶ崎のモチーフはヨット。三浦半島には8つ設置されており、各マイルストーンの近くにはサイクルステーションがあって休憩スポットにもなっているという。さすがサイクリングの聖地である。半島にちりばめられたマイルストーンを全て巡ろうとすると、走行距離は80キロほどになるというからなかなかの道のりだ!
相模湾の海岸線に別れを告げ、進路を東に丘陵地へとペダルを漕いでいく。だんだんと勾配が急になっていき、「きついなぁ〜」と思いながらも俄然やる気になってしまうのは体育会系の性。ペダルをくるくる、亀の歩みで進む。徐々に高度が増していき、時折吹く風がなんとも心地よい。そうしてたどり着いたのは湘南国際村センターだ。
同施設が丘の上にあるのは知っていたが、初めて敷地内に入る。すると、そこには絶景が広がっていた! 登ってきた甲斐があったというものだ。丘は公園のようになっておりベンチもある。近くに住んでいながら、こんな場所があったとは知らなかった。灯台下暗し。サイクリングの際はぜひとも立ち寄ってみてほしい。
湘南国際村センターから終着地のヴェルニー公園へは坂を一気に下っていく。葉山から横須賀へ、海は相模湾から東京湾になる。かつて軍港として栄えた横須賀は、今も多様な艦船が港に浮かんでいる。近くに米軍基地があることもあり、居留する外国人も多く異国情緒が漂う。ヴェルニー公園から横須賀駅はすぐ。趣のある横須賀駅の駅舎は、筆者が子供のころから変わらない姿のままだ。
走行距離十数キロながらも変化に富み、見所が凝縮されていた今回のルート。地元民といえども知らなかったスポットも発見した。ゆっくり巡った一日旅、景色を思い出しながら電車に揺られて帰路に就いた。
JR逗子駅から出発
旅の出発は横須賀線逗子駅。ホームに降り立つと、ほんのり潮の香りが漂う海の町だ。雲ひとつない清々しい青空。いいサイクリング日和になりそう。
駅からまずは海を目指す。15分ほど走れば葉山町に入り、頼朝公ゆかりの森戸大明神(森戸神社)に参詣。海に張り出すようにある境内からはどっしりとした富士山が。空よりさらに青い海が輝いている。
ローカルな道をゆっくり進む
葉山町の海岸沿いの道は細く、住宅や商店が軒を連ねる。静かでひなびた町並みは、いわゆる湘南の喧騒から離れた落ち着いた雰囲気。
富士山をバックに進む爽快なツーリング!
葉山御用邸を過ぎ、国道134号を進んでいく。海沿いの趣が変わってきた。日差しは春のようだが風は冷たく、自転車にはちょうどいい陽気。
長者ヶ崎のマイルストーンを通過!
湘南国際村で一休み
海を離れ坂道を登り、湘南国際村センターへ。企業研修などに使われる宿泊施設だが、敷地内の丘は誰でも出入りができサイクリスト歓迎だ。
ここにもマイルストーンを発見。モチーフはツツジだ。記念に自転車と撮影する。
館内1階には休憩スペースがあり、誰でも利用可能。電源もあるので助かる!
3日前までの予約で地元産の食材を活かしたお弁当をいただくこともできる。
ヴェルニー公園に到着
湘南国際村センターの高台から坂道を下ってヴェルニー公園がある横須賀本港に出る。公園からゴールの横須賀駅は目と鼻の先だ。
花壇や噴水がある市民の憩いの場。イージス艦や潜水艦を臨む横須賀らしい風景。公園内、自転車は降りて押して歩こう!
じつは……夕陽がキレーなスポットなのだ
澄んだ青空もいいが、黄昏時に訪れるのもおすすめしたい。青からオレンジのグラデーションが海面にも映り込む様をゆっくり眺めよう。
横須賀駅に到着。マスコットのスカレーちゃんがお出迎え。レトロな駅舎は古の輪郭を残している。開業は明治22年、歴史ある駅だ。
JR横須賀駅からは電車へ
横須賀駅からは輪行袋に自転車を収めて出発した逗子駅へと戻る。乗車時間は約10分。横須賀駅は階段がない珍しい駅。改札からホームまでは自転車を持っていてもスムースに移動できる。
ホームで電車を待つ。入線してきたのは、スカレンジ♪ (顔が電子レンジっぽいのでそう呼ばれる)。’20年から導入の車両でまだ新しく、乗れるとなぜだか嬉しい。
駅舎内の一角には輪行のための作業スペース(写真の線枠内)が確保されている。日差しや風を避けて準備できるので有り難い。
電車に自転車を載せるときは最前部か最後部の車両の空いているスペースを利用しよう。車体は袋でしっかり覆っておくこと。
カンタン!輪行AtoZ
市販の輪行袋はたくさんあるが、基本的にはフレームからホイールをはずして車体をコンパクトにする。一例としてモンベルのコンパクトリンコウバッグクイックキャリーの手順を紹介する。
❶前輪をはずす
まず前輪のブレーキをはずし、ハブのレバーを緩めてフレームからはずす。車体をひっくり返すと作業しやすい。
❷フレームに前輪を固定
はずした前輪をフレームに添え、付属の結束テープで3か所固定する。持ち上げた際にずれ落ちないか確認!
❸車体に袋を被せる
フレームに肩掛けになるテープ(付属)を付ける。ハンドルは車体と平行にし、車体に袋を被せて覆う。
※構成/須藤ナオミ
撮影/亀田正人
協力/神奈川県、株式会社モンベル、東日本旅客鉄道株式会社、湘南国際村センター
(BE-PAL 2024年4月号より)