BOOK 01
まだ見ぬGを探す旅。そうだ彼らも虫だった
『愛しのゴキブリ探訪記 ゴキブリ求めて10万キロ』
柳澤静磨著 ベレ出版 ¥1,980
間違いなく多くの人に嫌われているゴキブリ。最近は「ゴキブリ」とフルネーム?ですら呼んでもらえず、「G(ジー)」などと略されることもしばしばだ。黒っぽいボディーに素早い動き、それが一般的に知られている彼らの姿。だが、世界には知られているだけで4800種以上いる(ちなみに日本国内には64種)。青みがかったルリ(瑠璃)の名を冠したものや、カブトムシのような堅牢なものなど多種多様だ。我々が知っているのは、ほんの一部。
本書はまだ見ぬゴキブリに思いを馳せ、それを見つけるべく旅をするゴキブリ探訪記。自らをゴキブリストと名乗る著者は、普段は昆虫館で働きながら公私にわたって虫探しの旅に熱心に出かける。行き先は国内外ともに南方の地域。やはり温かい場所には未知なる虫が多い。旅の記録とともに虫の探し方や使っている道具なども詳細に紹介される。思うように見つからず一喜一憂しつつもすぐに自らを戒めたり、著者の真面目な人柄が全編に感じられる。これまでに日本産ゴキブリの新種2種を記載するなどその熱量は凄まじい。「住む世界は一緒だが、見えている世界は一人ひとり違う」Gの世界、試しにちょっと覗いてみては?
BOOK 02
自然に触れるようにありのまま受け止める
『ツンドラの記憶 エスキモーに伝わる古事』
八木 清編訳・写真 閑人堂 ¥2,420
エスキモーに伝わる話と極北の風景やそこに暮らす人々の写真で構成された本書。収録されている15篇の話はとても不思議な展開をしたり突然終わったり、中にはホラーめいたものも。「これは何かの教えがあるのでは……」とつい深く考えてしまうが、そのままを受け入れてみると新鮮な感覚が生まれる。写真家でもある著者が切り取った風景の一枚一枚が、物語の脳内映像化に一役買ってくれる。
※構成/須藤ナオミ
(BE-PAL 2024年4月号より)