初心者でも育てやすいジャガイモと家庭菜園の一番人気トマトのつくり方を紹介しよう。
3か月で種イモの10~15倍のイモが収穫できる!
前回その実践法を紹介した『一坪ミニ菜園』。2m×2mの枠で囲った畳2枚分ほどの広さで、年間32品目の野菜を栽培できるタイパ、コスパ抜群のミニマム菜園だ。畑の準備ができたら、早速野菜作りをはじめよう。
種苗店やホームセンターの店頭には、春植えのキャベツやレタスの苗が並び、もう1~2週間するとトマトやナスやキュウリなど、気の早い夏野菜も登場する。が、早出しの苗をあせって入手してはいけない。温暖地と区分される関東の平野部などで、夏野菜の植えつけは通常4月下旬~5月上旬。近年の温暖化と猛暑で、多少早まる傾向はあるものの、4月上旬はまだ早い。
一方で、この時季を逃さず植えたいのがジャガイモだ。植えつけ適期は3月中旬から4月中旬。ジャガイモは種イモを植えつけて育てるが、3か月ほどで種イモの10~15倍もの収量が期待できるとても生産性に優れた作物だ。栽培自体は簡単なので、初めて野菜作りをする人でも収穫の喜びを味わえるはずだ。品種がいろいろあるので、代表的なものをいくつか紹介しよう。
定番は「男爵薯」と「メークイン」。男爵薯は、ほくほくした肉質で粉ふきいもやコロッケに向く。メークインは加熱しても煮崩れしにくいため、肉じゃがやカレーといった煮込み料理にぴったり。食味の良さで人気があるのは「キタアカリ」。なめらかな食感で、クリのような甘みがある。私がよく作るのは、皮が赤く、肉が黄色い「アンデス赤」。保存性は低いが収量が多く、食味がいいので気に入っている。「トヨシロ」と「ホッカイコガネ」はイモが大きく収量性抜群。いずれも油との相性がよく、フレンチフライやポテトチップスにすると絶品だ。
ホームセンターで種イモを手に入れよう
種イモは、ホームセンターの園芸コーナーで手に入る。大抵1~5㎏くらいの量で袋やネットに入って売られている。ただ、一坪ミニ菜園でその量は使いきれないので、芽出しされたポット苗を手に入れる方法もある。苗の場合、植え付けは4月中旬~下旬が目安だ。
ちなみに、スーパーに並んでいる食用のジャガイモを植えつけてもイモはできる。専用の種イモと何が違うかといえば、確実性である。専用の種イモは、植物防疫法に基づいて検査された健全無病なもので、普通に育てばきちんと収穫できることが前提としてある。一方で、食用のイモは細菌やウイルスによる病気を罹患しているリスクが高く(食用には問題ない)、ちゃんと育つという保証はないのだ。仮に収穫できたとしても品質や収量は期待できない。というわけなので、きちんとした種イモを入手しましょう。
2回の土寄せでイモを太らせる
では、ジャガイモの栽培方法を紹介しよう。
種イモは50g程度の大きさがあれば育つので、普通に畑で栽培する場合、大きな種イモは2~4等分に切って使う。小さな種イモは丸ごとでOK。一坪ミニ菜園の場合は、栽培できる数が限られるので、大きな種イモも丸ごと植える。そのほうが1株の収量は多くなる。種イモを切るときは縦に包丁を入れ、各切片に頂芽部の目が必ず入るようにする。
一坪ミニ菜園の場合、種イモは1マスに1個。深さ10㎝程度の穴に植えつけ、5㎝の厚さで覆土する。畑の場合は、同じ深さで、株間は30㎝。20日ほどで出芽するので、草丈が10~15㎝になったら植え穴を埋め戻すように土寄せする。その2週間後に2回目の土寄せ。株元が山になるように土を盛り上げ、肥大するイモが地表に出ないようにする。その後は放任でOK。開花後、6月中旬~下旬に茎葉が枯れて黄色くなったら収穫のサイン。土が乾いている晴天の日に掘り上げ、半日ほど天日でイモを乾かしてから持ち帰る。
掘りたての新ジャガは皮付きのままゆでて、シンプルにジャガバターで決まりだ!
夏の猛暑はトマトにも過酷。早めに植えて、7月に採りきる
野菜には品目や品種によって、種まきや苗の植えつけに適した時季がある。種袋や野菜作りの本には、寒地(北海道)・寒冷地(東北・北陸)、温暖地(関東~中国)、暖地(四国・九州)と分けた地域ごとに、作型が記されている。基本的にはそれを参考にすればいいのだが、近ごろは夏の気温が高すぎて、従来のマニュアル通りにはいかなくなっているところもある。
トマトの生育適温は日中で20~30℃、夜温10~20℃。30℃を越える高温が続くと花粉がダメージを受けて着果しにくくなり、35℃以上になると生育障害が発生する。つまり、近年の猛暑はとてもトマトが育つ環境ではないのだ。それで、近所の有機農家は、これまで5月の連休に植えていたトマトの苗を、昨年から4月中旬に植えることにして、収穫もこれまでより2週間早い7月いっぱいで切り上げるようにした。
トマトは、果実の大きさで大玉、中玉、ミニの3タイプに分けられ、さらにトマトソースなどの加熱調理に適したクッキングトマトがある。このうち大玉トマトは、ちょっと難易度が高い。養分や水分にとても敏感で、肥料が多すぎたり、多湿だったりするとすぐに生育障害や病害が発生する。適切な時期に、適切な量の養水分をやることが求められ、それなりの経験がないと難しい。大きな実を完熟させるため栽培期間も長くなり、その分病気にかかるリスクも高くなる。
ミニなら1株100個採りも狙えるぞ!
初めてトマトを作るなら中玉やミニがおすすめだ。ジャガイモと同じように品種がいろいろあって悩むが、ラベルの説明や品種名で気に入ったものを選べばいいと思う。ここで大切なのは品種うんぬんより、いい苗を選ぶということだ。節間が詰まってがっちりとしており、葉の色が濃く、第一花房の花が咲き始めたくらいの生長段階の苗ならよし。野菜作りでは「苗半作」という言葉があり、苗の良し悪しで作柄の半分は決まると言われている。それだけ苗の出来は重要なのだ。ひょろひょろとした貧弱な苗や育ちすぎて老化した苗は、植えつけてもその後の生長は期待できない。
苗の植えつけは、一坪ミニ菜園の場合、1マス1株が基本。草丈が高くなるので、枠の北側で育てるとほかの作物の陰になるのを防げる。普通の畑では、株間40~50㎝。苗を植えつけたら風で揺れたり、倒れたりしないように長さ60㎝の仮支柱や細い竹をさして茎を誘引する。まだ十分に気温が上がっていない時期なら、暖かくなるまで苗キャップや肥料袋の底を抜いて筒状にした「あんどん」をかけておくと風よけや保温になり、初期生育が促進する。
根付くと茎葉が生長し始めるので、そしたら仮支柱を外して、長さ210㎝の本支柱を立てて茎を誘引する。葉のつけ根からはわき芽が伸びてくるので、人差し指くらいになったら摘み取る。わき芽をそのままにしておくと、激しく繁茂して養分も分散してしまうため、一坪ミニ菜園では、株をコンパクトにまとめる上でもわき芽はすべて摘み取って主枝1本を伸ばす、1本仕立てにする。2マス使って主枝とわき芽1本を伸ばす2本仕立てでもOK。花房は本葉7枚で1段目が発生し、以降本葉3枚ごとに花房がつく。
果実はヘタのほうまでしっかり色づいたら収穫する。品種にもよるが、中玉なら1果房7~8個、ミニなら15~20個くらいとれる。5段目まで収穫できれば合格。うまく育てればミニなら100個採りも狙える!
30℃を超えるような日が続くようになると着果不良が頻繁になり、新しい実がつかなくなるので、そしたら早めに撤収して秋冬野菜の準備を始めよう。
和田義弥