3月25日に水星がもっとも太陽から離れて、見やすくなる「東方最大離角」を迎えます。なかなか見られない水星ですが、25日前後は観察チャンス! そして今年の天文現象の1つ目の目玉、ポン・ブルックス彗星もそろそろ見えてきます。
日没後、西の空に水星を探そう
地球より内側を回っている水星は、地球から見れば常に太陽の方向にあります。そのため、見られるのは夜明け前か日没後の短い時間だけです。しかも、明けの明星、宵の明星と呼ばれる金星ほど明るくはありません。そのため、地球から比較的近い距離にありながら、あまり見られるチャンスのない惑星です。
その水星が25日に、太陽からもっとも距離が離れる「東方最大離角」を迎えます。東方というのは、地球から見て、水星が太陽の東側にあることを示します。
また、春分の5日後にあたりますが、春分前後の夕方の黄道(太陽の見かけ上の通り道)は、地平線に対して角度が大きく、その分、日没直後の水星が地平線から離れています。25日の前後5日くらいが今年いちばんの見ごろといっていいでしょう。
25日の東京の日没は17時58分。日没後30分くらいから西の空に注目です。ただ見ごろと言っても、地平から10度くらいと低い位置なので、西側の開けた場所を探しておきましょう。
同じ頃、木星が水星より高い位置に輝いています。この木星はすぐ目に入ると思うので、そこから右下の方向に水星を探しましょう。水星の明るさは0等級と、それほど明るくないので薄明の残る中ではちょっと見にくいでしょう。双眼鏡を使った方が探しやすいかもしれません。
ポン・ブルックス彗星探しにチャレンジ!
西の空で水星を見届けたら、次はポン・ブルックス彗星です。
今年はポン・ブルックス彗星と紫金山・アトラス彗星、明るい彗星が2つも到来する当たり年です。明るいといっても、よほど暗い場所でなければポン・ブルックス彗星を肉眼で見るのはきびしいので、やはり双眼鏡が必要です。
ポン・ブルックス彗星は1812年に発見された、約70年周期の彗星です。前回、太陽系の内側を訪れたのは1954年で、今回は4回目の訪問ということになります。3月25日時点では水星と金星の間を飛んでいますが、4月21日に太陽に最接近する予定です。
彗星の核(本体)は凍った岩の塊です。太陽に近づくにつれ、核がどんどん温められて氷が溶け出し、チリとガスを吹き出しながら飛んできます。私たちの目に見えるのは、この核の周りに吹き出したチリやガスです。
3月下旬、明るさは5等級程度と予想されます。ただし、5等星の星とは見え方がまったく違います。写真で見る彗星は「ほうき星」と呼ばれるように尾を引いていますし、大きな彗星なら色がついています。しかしそれは写真ゆえの姿。実際に見る彗星は、ぼんやりとして見え、色はまず知覚できません。
写真の彗星をイメージしていると、双眼鏡で何やらぼんやりしたものが視野に入っても、それが彗星だとは気づかないかもしれません。とにかく何やら「星ではなさそうなもの」が目に入ったら、それがポン・ブルックス彗星かもしれないので、そこで手を止めて注目してください。彗星の位置は毎日変わるので、あらかじめ、天体のシミュレーションソフトなどで彗星の位置を確認しておくことも重要です。
これから4月の10日くらいにかけてが、もっとも見ごろになります。また次回、詳しくお伝えしましょう。
構成/佐藤恵菜