あとはまた平らな道の連続だ。この日、天気はよかったものの、正面に見えるはずの富士山の姿は拝めず。これからの季節は空気が澄んでくるので、富士山ビューのサイクリングが楽しめるに違いない。今日は代わりに、気持ちよさそうに波に乗っているサーファーを見ながら走る。
漕げば漕ぐほど、江ノ島が大きくなってくる。目標とするものが目の前に見えた状態で、どんどん近づいていくのは、進んでいる実感が湧くからとても楽しい。
途中で江ノ電の踏切の音が聞こえたので、自転車を降りて、沿線で電車見物。運転席に向かって手を振ると、同じように手を振って応えてくれる運転士さん。子どもだけではなく、大人でもうれしくなる。
小動のあたりでふたたび坂道が登場。先ほどの稲村ヶ崎に比べたら、はるかに楽だ。江ノ島の姿が一瞬見えなくなって、坂を下りたら、今度はドーンと目の前に現れる。ニクイ演出に思えて仕方がない。
さあ、安全運転に気を配りつつ、ラストスパート! 頭上の「藤沢市」の案内標識を通り過ぎたら、あと少しだ。左折して、江ノ島に続く弁天橋の一本道を走り抜けた先に見えるのは、200年近く前に建てられた青銅の鳥居。さあ、江ノ島に着くぞ!
「着いたー!!」
そのまま駐輪場まで進み、時計を見る。9時50分。所要時間は1時間20分。途中で水を飲んだり、電車を見たりした時間を差し引くと、1時間強といったところか。
息子はいたって元気で、すぐに江ノ島の頂上に向かって歩き出した。途中でソフトクリームを食べて、気になっていたシーキャンドル(展望灯台)にも上り、高いところからたくさん写真を撮って、昼食の海鮮丼に舌鼓を打ち、岩屋で洞窟探検をして、乗り合い遊覧船に乗って弁天橋まで戻り――と、江ノ島をフルに満喫。ああ楽しかった。
帰りは1時間1分で自宅に戻ってきた。さすがに足が重い感じがする。
大人は家に上がるなり、ビールをプシュッとやって、飲み終えたあとウトウトし始めたのに、息子はというと、昼寝もせずにひとりで遊び始め、夜もいつもと同じ時間まで起きていた。小学1年生、恐るべし。
さあ、次はどこへ行こうかな。
サイクリングという新たな楽しみのおかげで、休日の過ごし方の選択肢がまたひとつ増えたのが、なによりうれしい。
2017年11月11日(土)、逗子市市民交流センター横フェスティバルパークで、ブックフェア「10代の自分へ。」が開催されます。ブックセレクターとして、旅音も参加します。
イベントの詳細は、下記リンク先のページをご参照ください。
https://peraichi.com/landing_pages/view/zushibookfair
◎文=旅音(たびおと)
カメラマン(林澄里)、ライター(林加奈子)のふたりによる、旅にまつわるさまざまな仕事を手がける夫婦ユニット。単行本や雑誌の撮影・執筆、トークイベント出演など、活動は多岐にわたる。近年は息子といっしょに海外へ出かけるのが恒例行事に。著書に『インドホリック』(SPACE SHOWER BOOKS)、『中南米スイッチ』(新紀元社)。
http://tabioto.com