気軽に楽しめるアーバンハイクのスポットが市内に点在します。定番から穴場まで、地元民から人気を集めるコースをピックアップ!
シリーズ第1回では、ガスワークス・パークを紹介します。
工場跡の廃墟が湖とのコントラストに映える
まるで「えんとつ町のプペル」の世界?
カナダと国境を接するワシントン州シアトルは緑と水に囲まれ、「エメラルド・シティー」と呼ばれています。湖が多く、中でも中心地のすぐ北にある、ユニオン湖がその代表格。対岸には、ガスワークス・パークの公園が広がります。
ガスワークスとは、つまりガス工場。かつて稼働していた当時の設備を取り除くことなく造園に組み込んだ意外性で、世界的に注目されています。湖畔の自然と廃墟のマッチングが新たにフォトジェニックな風景を生み、歴史的価値から市と国の遺産登録も行われたシアトルのランドマークのひとつです。
ほかにはない子どもの探検の場に
駐車場側から鉄道線路跡を横切り、園内へ。まずは左手に見える建屋に向かってみましょう。かつて鉄道車両が上を通ったというコンクリート支柱のアーチをくぐり、進んでいきます。
果たして、その中はどうなっているかと言うと…パイプや機械が迷路のように入り組んでいます。カラフルに塗装され、見ているだけでワクワクが止まりません。一緒に来た息子も興味津々! かくれんぼや鬼ごっこには絶好の場所です。
ボイラー室を改造したピクニック・シェルターも完備。雨の街として知られるシアトルですが、ここなら屋根もあり、天候に左右されず時間を過ごせますね。
外に抜けると、アート・オブジェと化したパイプやタンクに交じって、最新遊具も置かれています。見晴らしの良い遊び場に子どもが夢中になっている間、親はテーブル席で休憩。ピクニックやおやつタイムに訪れるにもぴったりです。以前、ここで行われた息子のクラスメートのバースデー・パーティーに親子で参加したことがありますが、子どもたちは皆、飽きずに遅くまで遊んでいました。
さらに、離陸したばかりの水上飛行機を見送りながら、水辺まで延びるトレイルを歩きます。
そそり立つ「タワー」群の圧倒的な存在感
1906年から1956年まで操業していたシアトル・ガス・ライト・カンパニーによるガス製造の基地。無規制の時代、有毒物質と悪臭を撒き散らした工場跡の象徴と言える遺物、通称「タワーズ」を間近で見てみましょう。
現在は金網に囲まれ、ところどころ落書きも見られますが、それもまた退廃美を感じさせます。金網の向こうには…
「あ、何かいるよ」
隣を歩く息子が発見したのはなんと、廃墟を棲家とするウサギでした。立入禁止で、人はまず中に入って来ませんから、ウサギにとっては格好の安息地なのでしょうね。
反対側に回ると、ちょうど、派手な衣装を身に着けて踊る女性ダンサーの写真撮影が行われていました。確かに、突き出た無数の煙突が異世界ムード満点。コスプレーヤーのフォトスポットにも良さそうです。
ここからトレイルは、「グレート・マウンド」という丘の上へと続きます。頂上からは、シアトルのスカイラインが一望。7月4日の独立記念日に湖岸で行われる花火大会には、大勢の見物客であふれます。普段も、犬の散歩や親子のスキンシップ、ウォーキング、仕事帰りのちょっとした運動がてら訪れる地元民が絶えません。
また、「カイト・ヒル」はその名の通り、凧揚げに最適な小高い広場。湖沿いに降りるとベンチが並び、カップルが仲睦まじい様子で湖面を眺めています。ちょうど隣同士が直接見えない造りになっているので、デートの雰囲気作りにはもってこい!? 帰りにもう一度、ウサギが見たいという息子に付き合ってタワー群に立ち寄り、公園をあとにしました。
廃墟が風光明媚な公園へと変貌を遂げたのは、有名造園家のリチャード・ハーグの功績によるもの。今やシアトル屈指の観光名所ですから、昔を知る人からしたら魔法のように思えるかもしれませんね。短時間でリフレッシュでき、親子で大満足のハイキングでした。
■ガスワークス・パーク
2101 N Northlake Way, Seattle, WA 98103, USA
https://www.seattle.gov/parks/allparks/gas-works-park