スローな私たちのヨット旅ですが、今回はついにカリフォルニア半島からコルテス海を渡ること2日半、メキシコ本土に到着しました。
船酔いだけは治らず……
バハ・カリフォルニアの主要都市ラパスから本土のマサトランまでは約400km。夫にヨットを任せて子供たちを連れてバハ・カリフォルニアとメキシコ本土を繋ぐ高速フェリーに飛び乗りたい気持ちを抑えて、いざメキシコ本土へと向かいました。マサトランで開催されるイベントのために、天候の回復を待たずに少々急いで出発してしまったため、初日は海が荒れていました。
船酔いがひどい息子と私は小脇にバケツを抱えてソファに沈没という辛い出だしに……。乗り物酔いを経験されたことのある方も多いと思いますが、あの途得体の知れないものが下の方から突き上げてくる感じ、ゾンビに追われているような逃げ場のない感じ、どうしようもなくツライですよね。
情けない話ですが、私自身はもう2年もヨット旅をしているのに、未だに毎回といっていいほど船酔いに苦しめられています。荒れているときは潔く諦めるとして、穏やかなときでも油断して屈んで作業していたりすると込み上げてくるのです。若い読者の方には伝わりづらいかもしれませんが、日本ホラー映画界の金字塔『リング』に登場する貞子のように神出鬼没、恐怖感と共に「Oooh、きっと来る〜」のが私にとっての船酔いです。
稀にどんなに揺れても本も読めるし、まったく船酔いにならない、という強者にお会いするのですが、「三半規管をそっくり取り替えてください!」と本気で思ってしまいます。
ヨット旅は天候に大きく左右されるため、何月何日着など厳密なスケジュールを立てることが難しい場合があります。自然の状態を無視して人間のスケジュールに合わせて行動してはいけないことを、身をもって学んだマサトランまでの航海でした。
なお、ラパス発の高速フェリーなら、約14時間で楽々到着します。
https://www.bajaferries.com.mx/rutas-tarifas-y-horarios
多様な顔を持つ賑やかな港町、マサトラン
マサトランはシナロア州に位置する、メキシコ有数の商業港を有する港町として古くから栄えてきました。人口は約45万人。その昔、内陸で産出された鉱物資源を輸出するために栄えた港は、現在ではメキシコ随一のエビの水揚げ量を誇る魚港に変貌しており、「Shrimp Capital of the world」と呼ばれています。(エビの漁獲時期は9月から3月)
また、かつての面影が偲ばれるオールドタウンと、モダンなホテルやレストラン、ナイトクラブが立ち並ぶエリア(ソナ・ドラダ)との新旧、対照的な二つのエリアを同時に楽しめる街として、国内外の観光客に人気のリゾートタウンとして知られています。シュリンプカクテルをはじめ、バラエティ豊かな海鮮料理が堪能できるマサトランのフードシーンは、観光の際の大きな魅力のひとつ。
船旅ならではの苦労!? 上陸前のひと仕事
僻地の多いバハ・カリフォルニアからやってきた前田家にとっては久々のシティライフということで、あれやこれやとやりたいことが湧いてきますが、まずはパンツ一枚が制服になっている子供たちに服を着てもらうことからはじめるのが、上陸の際のひと仕事になっています。人間もやはり動物。必要がなければ、すぐに服を着ることを忘れる生き物だと認識させられる瞬間です。
ヨットでメキシコ国内を旅する場合、主要港に立ち寄るたびにチェックイン/アウトをしなければならず、ここは陸旅に比べると少々面倒なところです。
到着するとすぐに、まずは諸々の手続きを済ませるため港の責任者(ポートキャプテン)がいるオフィスに向かいます。
途中道ゆくセニョールに行き先を尋ねたところ、「これを持って行きなさい」と書いてくれた地図がこちら。
というわけで、地図を頼りに目的地に辿り着くことはできませんでしたが(笑)、無事にオフィスで手続きを済ませると、晴れて市内観光へ繰り出すことが許されました。
マサトラン市内一の絶景スポット、灯台山へ
航海中は運動不足になりがちなので、停泊地に着くとまず手頃なハイキングコースを探すところから始めることが多いのですが、今回は、世界でも有数の高い場所に設置された灯台(灯台自体は大きくない)で知られる FARO山(灯台山)へ向かいました。
灯台といえば海の道しるべとして岬の突端など小高い場所に建てられているイメージですが、この灯台は海面から灯塔までの高さが約157m。
さすがに高い位置にあるだけあって、光達距離(灯台の光が届く距離)は約55kmにも及び、航行する船の安全を遥か遠くまで見守ってくれています。
ちなみに光達距離日本NO.1は、高知県にある「日本一明るい灯台」こと室戸岬灯台の約49kmです。
灯台までは約700m。登り坂と階段が続きますが、よく整備されているため景色を楽しみながらゆっくり進めば小さな子供連れでも安心です。ただし、日中はかなり暑くなるため,早朝もしくは夕方がおすすめです。
歩いていると、やたらとアライグマの姿が。2020年の地元の記事によると、この山では猫やアライグマが増え過ぎてしまったそう。そのため他の安全な場所に移される計画と記事にはありましたが、この状況を見るかぎり、お引っ越しは計画通りには進んでいない様子。
さて、肝心の灯台ですが、残念ながら中に入ることができないため、ぐるっと一周して隣にある見晴らしのいいガラス製のガイドウォーク(El Mirador de Cristal)に移動しました。しかし、こちらに気を取られて、灯台の写真を撮り忘れるという大失態!
ここまで読んでいただいて申し訳ありませんが、灯台の姿はご想像にお任せします……。
各地で変化を遂げる日本食に思うこと
絶景を堪能したハイキング後のディナーは、地元民や観光客で賑わうSUSHIレストランへ。日本でもすっかり市民権を得ているカリフォルニアロールをはじめ、海外で発展した様々な変わり種、改め、クリエィティブなSUSHI。もちろん日本のものとはちょっと違うのですが、組み合わせが新鮮だったり面白い発見があり、各地で試さずにはいられません。今回の注目は、薬味です。(SUSHIの方でなくてすみません!)
海外で現地の人の口に合うように、ちょっとアレンジされた日本食を発見するのは個人的にはとても楽しい。
人間の方も、訪れた場所や国に合わせて自分の考え方なり行動をちょっとだけ(時には大幅に!?)変えた方が良いことってありますよね。それってドキドキするものだと思うのですが、旅に行ってなんだか“変われた気がする”というときは、きっとそんな状況の中で自分の中の常識を崩して、違いに対して寛容に、そしてクリエィティブな発想になれているのかもしないな、という気がしています。
そんな訳で、うっかり口に含んでしまった青唐辛子による激痛にも、今日の私は寛容さを見せているのでした。
それでは、また次回。
4歳の娘と6歳の息子を連れて、セーリングヨットSANTANAで放浪中の4人家族。2022年3月、カリフォルニアを出航。寄り道をしながらゆっくりと世界一周を目指します。海の上でサステナブルな暮らしを模索中。
Instagram:@svsantanajp
YouTube:https://www.youtube.com/@sailingsantana