世界的ベストセラーの4WDピックアップトラック
外国でクルマを運転していると、日本では馴染みの薄いクルマとすれ違うことが珍しくありません。クルマの使われ方や求められるものなどが日本とは違うので、それが走っているクルマに現れてくるのでしょう。どんなクルマが走っているのかを眺めるのもまた、海外に出掛けた時の楽しみのひとつになっています。
三菱のピックアップトラック「トライトン」も、日本よりも外国で良く見るクルマの一台です。個人的には、タイやマレーシアなどの東南アジアで良く見掛けた印象が強い。
ピックアップトラックといえばアメリカが本場ですが、アメリカを走っているピックアップトラックはアメリカメーカーの巨大なものが幅を利かせていて、日本勢はその影に隠れてしまっているようです。そこへいくと、トライトンに限らずアジア圏での三菱車の存在感が大きなことにいつも眼を見張らされてしまいます。
そのトライトンにフルモデルチェンジが施され、山梨県の富士ケ嶺オフロードコースで行われたメディア試乗会に参加してきました。
あらためて説明を聞くと、トライトンはアジア圏だけでなく、なんと世界150か国で販売され、年間販売台数約20万台を誇る世界のベストセラーだったのです。どうりで外国での存在感が違うわけです。アジア以外でも、「オセアニア、中南米、中東、アフリカなどで高い知名度を誇り、シェアNo.1の国も多い」(メディア向け資料から)。
新型トライトンは6代目。初代は1978年に登場して、累計販売台数は実に560万台超なのだとか。
初代は2ドアの2人(もしくは3人)乗りでしたが、2代目以降は4ドアの5人乗りが踏襲されています。
トライトンのサイズは日本の道で大丈夫?
今回日本でも発売された新型は、薄く見えるLEDヘッドライトと武骨なフロントグリルの組み合わせが特徴的で、ひと目で見分けが付きます。
そして、日本国内では大きなボディが周囲を圧倒しています。GSRグレードのサイズ(カッコ内はGLSグレード)は全長5360(5320)×全幅1930(1865)×全高1815(1795)ミリ。特に、全長の長さは特別です。試乗中に道の駅に立ち寄ったところ、駐車スペースの枠から大きくハミ出してしまいました。
全高も高く、乗り込むのにはステップを踏んで登る感じです。
しかし、走り出してしまうと、大きさはそれほど感じません。とても運転しやすい。自然な運転姿勢を構えられて、視界に優れているからでしょう。
2.4リッターのディーゼルターボエンジンと6速オートマチックトランスミッションの組み合わせも、運転しやすさに貢献しています。
最高出力150kW、最大トルク470Nmという出力以上に、停止状態からトライトンを力強く加速させます。
メーターやセンターモニターパネルなどの視認性や各部分の操作性なども、最新の三菱車と変わりありません。
カメラがクルマの周囲をモニターパネルに映し出す「マルチアラウンドモニター」(移動物検知機能付き)も、駐車時などの視界確保を補ってくれます。
自分のスマートフォンを接続して使えるApple CarPlayやandroidautoなども標準装備。機能や装備類は乗用車にほぼ準じていて、ピックアップトラックだからといって特別に身構える必要もありませんでした。
FCM(衝突被害軽減ブレーキ)やACC(アダプティブクルーズコントロール)などをはじめとする運転支援機能も充実していているので、それらは大きく安全運転に寄与しているはずです。最新のコネクテッドサービスも便利に使えることでしょう。
一般道を普通に走っている限り、大きなボディや荷台の存在を意識させられることはありませんでした。駐車と取り回し以外では、日常的に問題なく使えることは間違いありません。
パリダカで鍛えあげた圧巻のオフロード走破性! だけど…
オフロードコースでの走破性は圧巻でした。4輪駆動システム「スーパーセレクト4WD-Ⅱ」を駆使し、急な上り下り坂や大きな岩が連続する道、凹凸が連続し、3輪しか接地しないような過酷な場所も難なく走り切りました。
助手席の三菱自動車のテストドライバー氏のアドバイスに従いながらだったので半ば当然なのですが、気になったところもありました。
それは、ドライバーインターフェイスに関するものです。トライトンでは、「オフロード・オンロード両方とも、いつでもどんな状況でも安心してドライブできる!」(前出の資料より)と、その4輪駆動性能と走行性能が説明されています。
ドライバーは、路面状況に応じて二つの選択肢を組み合わせなければなりません。「スーパーセレクト4WD-Ⅱ」のダイヤルによって駆動方式を選び、次に「ドライブモード」のボタンによって走行モードを選びます。
「2H」、「4H」、「4HLc」、「4LLc」という4つの駆動方式と、「NORMAL」、「ECO」、「GRAVEL」、「SNOW」、「MUD」、「SAND」、「ROCK」という7つのドライブモードをどう組み合わせれば最適なのか?
それぞれをどう組み合わせれば良いのか、何のガイドもヒントもないのです。テストドライバー氏が助手席にいなかったら、戸惑っていました。
ランドローバー各車の「テレインレスポンス2」や、ベントレーやランボルギーニ、ポルシェなどフォルクスワーゲングループの各車が採用している走行モード選択ダイヤルのように、ひとつのダイヤルの中からモードを選べるようにしてあれば、ユーザーは混乱しないはずです。
たしかに技術はスゴいのかもしれませんし、昔からの三菱ファンはシビれるでしょう。しかし、あまり良く知らない人々にもファン層を拡げるためにも、もう少しユーザーに寄り添ってくれても良い気もしました。
夏休みだけでもトライトンに乗りたいぞ!
「ユーザーに寄り添う」といえば、トライトンは、購入する人に歓迎されるだけではない、特別な魅力を持つクルマであることも体感できました。
自分で所有するのはもっと小さく常識的なクルマであっても、トライトンの持つ「非日常性」には大いに惹かれてしまったのです。夏休みの家族旅行や冬のスキーなどにトライトンで出掛けたら、どれだけ盛り上がることでしょうか!
さまざまなアクティビティのための道具をたくさん積み込めるし、高い着座位置やそこからの視界が気分を大いに盛り上げてくれます。過酷なオフロードや岩だらけのところを走らなくても良いのです。「そういうところでも走り抜けられるクルマに乗っている」という特別感が、休暇の気分を盛り上げてくれます。
仕事や日常生活でガチでトライトンのようなピックアップトラックを必要とする人もいるでしょう。しかし、そうした日本の大多数の人々の日常業務は、軽トラックによって営まれています。
トライトンは、非日常でこそ多くの人たちを楽しませてくれるはずです。トライトンのカーシェアリングやレンタカーなどの運営も、ぜひ三菱自動車に期待したいところです。
さらに発展させて、ここ富士ケ嶺オフロードコースのようなところで、今日のようなテストドライバー氏にオフロードドライビングを教えてもらえたら、最高の思い出になることは間違いありません。
●三菱トライトン公式サイト https://www.mitsubishi-motors.co.jp/lineup/triton/