中国、激動の10年を記録した 『劇場版 再会長江』の竹内 亮監督にインタビュー!
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    2024.04.28

    中国、激動の10年を記録した 『劇場版 再会長江』の竹内 亮監督にインタビュー!

    中国、激動の10年を記録した 『劇場版 再会長江』の竹内 亮監督にインタビュー!
    長江源流、その最初の一滴を撮るために――。素顔の中国、その激動の10年。中国のいまを知るインフルエンサー&ドキュメンタリー監督の竹内亮さんに聞く。

    長江源流、最初の一滴を求めた6300㎞の旅!

    中国、激動の10年を記録した『劇場版 再会長江』

    (配給:KADOKAWA)
    ●監督/竹内 亮 
    ●ナレーション/小島瑠璃子
    ●4/12~角川シネマ有楽町、シネマート新宿ほか全国順次公開
    ©2024『劇場版 再会長江』/ワノユメ

    『劇場版 再会長江』

    竹内 亮監督

    竹内 亮監督

    1978年、千葉県出身。ドキュメンタリー監督・番組プロデューサーとして『ガイアの夜明け』(テレビ東京)、『世界遺産』(NHK)などを制作。中国・南京在住。2021年 Newsweek 「世界が尊敬する日本人100」に選出。著書に『架僑 中国を第二の故郷にした日本人』(角川書店)がある。

    中国・南京市に移住し、人気インフルエンサーに

    近くて遠い国――。日本人にとって中国はまさにそんな国のひとつ。竹内亮さんがこの国に魅せられたのはNHK 『長江 天と地の大紀行』で長江源流から上海までを旅したことだった。
     
    2年後、中国人の妻と南京市に移住。映像制作会社を立ち上げ、動画公開サイトで番組を発表していく。日本に住む中国人と中国に住む日本人と、これまでに360人以上を取り上げた『私がここに住む理由』は7年間で6億回(2023年4月まで)再生、ロックダウン直後の武漢を取材した『お久しぶりです、武漢』は4000万回再生を記録。

    中国語がペラペラで出演も兼ねる竹内監督はSNSでさらに知名度を上げ、Weibo(中国版X)522万人、抖⾳(中国版Tik Tok)70万人(いずれも24年1月時点)ほか、番組アカウントを含めるとフォロワー数は1031万人、気づけば人気インフルエンサーに。

    「インフルエンサーになりたかったわけではなく、外国人の自分が出演したほうが動画は面白くなるのでは? と。それでいて日本では、中国にマイナスなイメージを抱く人が多い気がしますが、伝える側のバイアスをなるべく排除したい。自分の目に映るそのままを記録し、"普通の中国”を伝えたいなと」
     
    番組のなかの監督は「俺が俺が」という押しつけがましさはなく、相手の懐にするりと入る。そうしてカメラが記録するのは、日本では触れることのないごくフツーの中国、その素顔。

    「"中国人って××だよね”とひと括りにするには中国はあまりに広く、いろいろな文化や背景を持つ人びとが大勢います。自分の作品を通し、観た方にそうしたことが実感として伝わればいいなと思っているんです」

    生活の質から風習まで! 中国の激変を目撃

    昨年5月に「竹内亮のドキュメンタリーウィーク」というイベントが東京にて開催。「観客の反応は想像を超えていました」と竹内さん。最初は7~8割が中国人だった観客が、口コミの効果かしだいに日本人が増え、満席の回も続出した。
     
    それで今回、そのとき上映されたうちの一本を再編集、『劇場版 再会長江』として公開する。2年かけて上海から遡って長江源流を目指し、中国大陸を横断して6300㎞を走破。かつて取材した友人たちと再会しつつ、激動の10年を見つめる。

    「前のバージョンは日本の観客に向け、日本の人にはどれもが初めて知るはずの中国の姿。今回は中国でも上映するので、この10年の変化がより際立つように意識して編集しました」
     
    それにしても中国の、この10年の変化はすさまじい。兵士を夢みて猛勉強していた少女が母に――。そんな、歳月の重みみたいな話ではない。例えばその少女の実家はダム建設のため、土壁の家から、国が用意した超ぴかぴかなマンションに引っ越してウォーターサーバーまで備える。そうした経済成長による明らかな生活の質の向上どころか、風習までもが変わっている。
     
    雲南省に暮らすチベット族の少女は、顔も知らない、親が選んだ相手との結婚が決められていた。ところが10年後、6歳下の妹は特に親から結婚を強要されることもなく、自由に恋愛できる。ええ、そんなに違うの!?

    「僕もそう思いました。でも中国ってこの10年で突然に変化したわけではなくて。古代から、王朝が変わるたびにすべてがガラッと変わる。もともとそういう社会で、変化に順応することがDNAに組み込まれているのかも。柔軟で、だから世界中に中華街があるんでしょう。僕自身、こうして映画の宣伝で日本にいることが多くなると、置いていかれる! と不安になるほどで。中国ってそれくらい変化が激しいのです」
     
    一方で少数民族のモソ人は「女の国」として知られ、古くから職場でも家庭でも、女性がリーダーを務める母系社会。極端な設定の漫画のようだが、いまも自分たちのやり方を貫く。文化の多様性も中国の特徴だ。

    「少数民族の取材には異世界を取材しにいくようなワクワク感がありましたが、いまはちょっと遠い街の友達に会いにいくくらいの感覚。世界が小さくなった気がします。交通や情報網の発達はいいことか、悪いことなのか……。いや彼らにとっては便利になった方がいいと思うんですけど」
     
    旧友との再会以外に旅にはもうひとつ、10年前に叶わなかった、長江の最初の一滴を撮影するという目的が。ところが竹内監督は、チベット高原で重い高山病に。目的地まで約600m、引き返すか決行か、果たして!?

    「高山病って酸素の欠乏で体が重く、めちゃくちゃ辛い状態がずっと続きます。あのときは50m進むのに30分かかり、マジで死ぬ……と。大げさでなく命と旅の目的を秤にかけました」
     
    文字どおりに命がけで完成させた映画は、中国のいまってこんな? こんな景色、観たことない! と、衝撃の連続。

    「高山病になったら、山なら降りればいいでしょうが、チベット高原は大陸なのでそれができない。移動しても標高5000mが何日も続くわけで、超キツいです(笑)。そこに生存するだけで、アウトドア好きの方にも挑戦のはず。ぜひ、長江流域を旅してください!」

    長江を旅しよう!

    中国を知り尽くした竹内監督が、アウトドア派にオススメするスポット3選。

    地上の楽園、シャングリラ

    地上の楽園、シャングリラ

    雲南省、シャングリラ。竹内さんは、チベット族の少女ツームーと再会する。「富士山に近い標高(約3300m)なのに森があり、水や空気がキレイな不思議な空間です」。

    サバイバル! チベット高原

     チベット高原

    溶けた凍土に車がスタック、撮影チームは危機に陥る。「標高が高くて酸素が少なく、お湯を沸かすのも大変。カップラーメンもぬるぬるでマズかった(笑)」。

    青い水面! 瀘沽湖(ロゴ)

    瀘沽湖

    「女の国」として知られるモソ人がほとりに暮らす。「湖がキレイで、水もそのまま飲める。それは10年前と変わりません。発展すればいいというものではないんだなと」。

    竹内監督の目に映る、素顔の中国を収めた過去作

    SNS

    個人のSNS総フォロワー数は約630万人で、昨年 Weibo「インフルエンサーアワード」で「トップ動画クリエイター100」ほか、4つの賞を受賞。取材対象者をSNSで募ると、彼のフォロワーだったりするため「いきなり壁を超えられる」と監督。

    『私がここに住む理由』

    『私がここに住む理由』

    日本に住む中国人、中国に住む日本人の視点で、それぞれの社会を伝える。ディーン・フジオカ、阿部力も登場。

    『お久しぶりです、武漢』

    『お久しぶりです、武漢』

    2020年ロックダウン直後の武漢に入り、公共交通機関や学校などの防疫対策を取材。居酒屋オーナーや看護師ら、さまざまな武漢市民が登場。

    劇中写真

    『大涼山』

    『大涼山』

    四川省、中国最貧地域のひとつ大涼山地区。貧困脱却の鍵は教育。ボランティアで務めた元教師との再会にイ族の女性は民族衣装で敬意を表わす。

    四川省大涼山地区

    『ファーウェイ 100面相』

    『ファーウェイ 100面相』

    中国の通信機器企業、ファーウェイ。NGOと中南米の森林を保護するプロジェクトを推進するエクアドルほか、日本を含む13か国を取材。

    劇中写真

    ※構成/浅見祥子 撮影/小倉雄一郎(人物)

    (BE-PAL 2024年5月号より)

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