カラタチの若葉には、アゲハチョウが卵を産みつける
学名:Citrus trifoliata
ミカン科の落葉低木。名は唐橘(からたちばな)の略。高さ2〜3m。緑色の枝は扁平で大きなトゲがある。4〜5月ころ、葉の展開に先だって径3〜4㎝の白い花を付ける。果実は球形で10〜11月に黄色に熟すが酸味・苦味が強くて食べられない。
カラタチはミカン科の落葉低木で、中国が原産の木だ。鋭いトゲのあるカラタチは、忍び返しも兼ねて生け垣に利用するが、剪定しないと4~6mほどに伸びる。
白い花は、4~5月ころ、葉よりも先に芽吹いて咲く。雄花と雌花があり、雌花には初めからふくらんだ子房がある。
大正14年(1925年)に発表された北原白秋作詞の童謡「からたちの花」の5番に
《からたちのそばで泣いたよ みんなみんなやさしかったよ》という歌詞があるが、なんだか白秋のやさしさが感じられる、すてきな歌詞だ。
カラタチの花の形は?実は食べられる?
カラタチの実は3㎝ほどで、黄色に熟れるが、残念なことに酸味・苦味が強く、苦くて食べられない。だが、未成熟果(枳実)や成熟果(枳穀)は輪切りにして天日乾燥させ、食べすぎによる腹痛や便秘、お腹の張りなどの薬にされる。また、カラタチの木は柑橘類の台木に利用される。
私が通う歯医者さんのとなりの畑にはカラタチの生け垣があり、私にとっては大切なアゲハチョウ観察の場所だったのだが、いつのまにか宅地に変わって消えてしまった。カラタチはサンショウなどと同じように、アゲハチョウやクロアゲハなどの大切な食樹なのだから、子どもたちの自然学習のためにもぜひ残しておいてほしいのだが。
春から秋までたくさんのアゲハを育てたカラタチも、冬にはすっかり葉を落としてトゲだらけの枝だけが残る。よく見ると、「いたいた!」越冬するアゲハチョウの蛹がいる。昆虫が身を守るために擬態することはよく知られているが、枝に張り付いた蛹は、トゲに擬態したのだろうか?
白い5弁の雄花。
雌花には丸くふくらんだ子房がある。
白秋が《金のたま》と詠った秋の果実。
アゲハチョウの春の羽化。
おくやまひさし プロフィール
画家・写真家・ナチュラリスト。
1937年、秋田県横手市生まれ。自然や植物に親しむ幼少期を過ごす。写真技術を独学で学んだのち、日本各地で撮影や自然の観察を開始。以降、イラストレーター、写真家として図鑑や写真集、書籍を数多く出版。
イラスト・写真・文 おくやまひさし
(BE-PAL 2024年5月号より)