メキシコ、エクアドル……。著しく治安が悪化している国で、命の危険を冒して裏社会の違法ビジネスを取材する理由
「違法なビジネスをしているところが裏社会。法律がある限りは裏社会はなくならない」という丸山ゴンザレスさんですが、犯罪組織などを取材して怖くないのでしょうか? 関野さんが迫ります。
関野吉晴/せきの・よしはる
1949年東京都生まれ。探検家、医師、武蔵野美術大学名誉教授(文化人類学)。一橋大学在学中に探検部を創設し、アマゾン川源流などでの長期滞在、「グレートジャーニー」、日本列島にやってきた人びとのルートを辿る「新グレートジャーニー」などの探検を行なう。
丸山ゴンザレス/まるやま・ごんざれす
1977年宮城県生まれ。國學院大学学術資料センター共同研究員。大学院修了後、無職、日雇い労働、出版社勤務を経て独立。国内外の裏社会や危険地帯の取材を続けるかたわら、テレビ番組『クレイジージャーニー』(TBS系)の出演やYouTubeなどで多方面に活躍。
裏社会を知ると、世の中の見え方の解像度が上がる
関野 そういった裏社会の取材はひとつ間違うと簡単に殺されてしまうと思うのですが、怖くはないんですか?
丸山 僕の判断で取材がご破算になるとか殺されるといった危険はあります。でも、そこで怖がっている余裕はなくて、常に神経を研ぎ澄まして細かい判断をし続けなければなりません。また、「俺はここに来たくて来ているんだ。俺が怖がっていたら、一緒につきあってくれている仲間はどうなる?」と思い直すこともあります。
僕は、学生時代にめちゃくちゃ旅をしていたのに、その後の何年間かは就職ができずお金がなくて旅ができませんでした。バックパックは埃をかぶってしまいました。その数年間はいま振り返ってもつらい。だから、海外を旅して取材するという仕事の根底にあるのは、「楽しい」という気持ち。
「怖い」が入ってくる余地がそんなにないのかもしれません。「死ぬかも」とも思いつつ、旅に行けなかったときのつらさに比べたら「面白い」のほうが勝っちゃう。それが20年ずっと続いています。
関野 裏社会の取材の面白さって何なのですか?
丸山 世界の解像度がより高くなっていくのがたまらなく面白いです。たとえば、マフィアは「怖い人」、「悪い人」とくくられがちですが、それだと何が怖くて何が悪いのかはブラックボックスの中で、もやっとした景色しか見えません。
取材をするとそこが具体的に見えてきます。世の中の見え方、解像度が上がっていくんです。同時に、考古学をやっていたときの「仮説の検証」という思考のプロセスを現代社会を相手に使えることの喜びも感じています。
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以下の動画で、誌面に掲載しきれなかったこぼれ話をお楽しみください。