ドイツ南西部、ライン川沿いにある人口3万人の小さな街「アンダーナッハ」。城壁などの史跡に囲まれた旧市街に、2010年に誕生したのが「エディブル・シティ」。いま注目度満点な、最先端の街づくりを取材してきた。
「エディブル…?? 食べられる街ってどういうこと?」──と、頭の中にクエスチョンマークがいくつも飛び交っている人も多いだろう。「エディブル・シティ」とは、食べられる(エディブル)植物を育て、収穫し、食すことを街ぐるみで実践している街のことだ。そんな新しい街づくりのカタチがいま、環境先進国として知られるドイツで大流行中。まだ日本ではあまり報道されていない、最先端のエディブル・シティに潜入してきた。
ことのはじまりは2008年。アンダーナッハ市が街づくりのアイデアを募ったことがきっかけだった。「食用植物を育てる」という、民間から飛び込んできた斬新なコンセプトが受け入れられ、2010年から、ドイツ国内で初となるエディブル・シティ・プロジェクトがスタートしたのだ。
城門の上に蜂の巣箱が!
ドイツ国内でも古い街のひとつとして知られるアンダーナッハ。そのエントランスとなっている城門をくぐると、なにやら頭のはるか上のほうでブーン、ブーン…という羽音が。振り向いてビックリ! 城門の上に養蜂箱が設置してあるのだ。
「ミツバチのおかげで、花や野菜が受粉して、それが収穫に繫がる。蜂蜜も穫れるしね。アンダーナッハ産の蜂蜜は、ショップで買えますよ」(ガイドのギュンター・コスマンさん)
なるほど、たしかに…。いきなり感心させられて歩き始め、すぐに目に付いたのが、道の両側に設置された木製のプランター。街中に40個あるというプランターには、一般的なハーブ類をはじめ、サラダに使えるトマトやマンゴルトというほうれん草のような葉野菜、キュウリ、イチゴ、ベリー類など、さまざまな〝食べられる〟植物が植えられている。もちろん、大地にもエディブルな野菜や果樹がいっぱい。クリ、カリン、リンゴ、ナシ、ミスペル(ビワの一種)、アーモンド、イチジク、ザクロ…etc、そして麦が何種類も! 一種類をたくさん収穫するというよりむしろ、いまは、いろいろな種類にトライしてみているのだという。