ネギやラッキョウなどの仲間で、においだけでなく辛みも強いまさに野生の味
ギョウジャニンニクとは
学名:Allium victorialis subsp. platyphyllum
ヒガンバナ科ネギ属の多年草。本州中部以北に自生し、高さは30~50㎝。地中の鱗茎は淡褐色の繊維で覆われる。夏、花茎を伸ばし、白い小花を多数球状につける。よく似たコルチカム(イヌサフラン)、スズラン、バイケイソウなどは有毒植物なので注意。
牧野富太郎がギョウジャニンニクと命名
十勝岳のふもとの食堂で「キトピロラーメン」という珍しいラーメンを注文してみた。店員が運んできたラーメンは、ごく普通のラーメンなのだが、ぶつ切りにされたギョウジャニンニクがのっかっていた。
ギョウジャニンニクはヒガンバナ科(旧ユリ科)の多年草で、北海道や東北地方の北部などに自生する。北海道には特に多く、沢筋や山地の木陰などに群生することが多い。キトビル、キトピロ(キトビロ)、ヤマビル、ウシビルとも呼ばれている。
アイヌの人たちが昔から食べていたため北海道ではアイヌネギとして親しまれていたが、牧野富太郎が「ギョウジャニンニク」と名付けた。かつて修行僧(行者)たちが山野で修行中にこの植物を食べて体力をつけたという言い伝えと、ニンニクに似たにおいがあることに因んだ命名だ。
雪が消える4~5月ころに伸びる芽は、赤っぽい葉鞘に包まれている。10cmほどに伸びた若芽がおいしいのだが、見慣れないと他の草との区別が難しい(かじってみると強烈なにおいで判別できるが)。6~7月ころには30cmほどの花茎を立てて、てっぺんに白い花をボール状に丸く固めてつける。
大きく葉を広げたギョウジャニンニクを掘り出してみると、鱗茎はシュロの毛のようなネットで守られていた。茎も葉も、この鱗茎もおいしいのだが、なにしろ強烈なにおいだから、食べるときは家族全員で食べ、外出の前には食べないほうがいい。
毎年畑で育てて出荷している山形の友人が、私のところにも送ってくれる。味噌をつけて食べる鱗茎は、においだけでなく辛みも強く、まさに野生の味だ。全草を5日ほど味噌に漬けておくと、子どもも平気で食べるし、ラーメンなどに入れるとクセになるおいしさだ。
これが自家製のキトピロラーメン。
花や鱗茎の形は?
白い花は6~7月ころに咲く。
ネット状の皮のある鱗茎。
このくらいがおいしいのだが。
イラスト・写真・文 おくやまひさし
おくやまひさし プロフィール
画家・写真家・ナチュラリスト。
1937年、秋田県横手市生まれ。自然や植物に親しむ幼少期を過ごす。写真技術を独学で学んだのち、日本各地で撮影や自然の観察を開始。以降、イラストレーター、写真家として図鑑や写真集、書籍を数多く出版。
(BE-PAL 2024年6月号より)