川と人間の関係、森を失ったオランウータン…自然を見つめなおすきっかけになる本4選
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  • 2024.05.18

    川と人間の関係、森を失ったオランウータン…自然を見つめなおすきっかけになる本4選

    川と人間の関係、森を失ったオランウータン…自然を見つめなおすきっかけになる本4選
    知識を得ることで、見慣れた自然も違った角度で眺められる。ネイチャーライフのヒントとなる良書を紹介しよう。

    BOOK 01

    運用から30年、長良川河口堰に向き直す

    『長良川のアユと河口堰
    川と人の関係を結びなおす』

    蔵治光一郎編 
    農文協 
    ¥2,420

    『長良川のアユと河口堰 川と人の関係を結びなおす』

    岐阜県の大日ヶ岳に端を発し、伊勢湾に注ぐ166㎞の長良川。日本三大清流のひとつにも数えられているこの川には河口堰がある。1995年に完成した河口堰は、多くの人にとっては当たり前の風景になっているかもしれない。高度経済成長期に工業用水などのために塩分を含まない水を確保するという利水を目的に計画された。だが実際に使われているのは、たったの16%。2割にも満たない。運用開始から約30年が経ち、改修が迫りつつある。最適な運用とはいかなるものかを問う時期にきている。
     
    長良川といえば、川で遊ぶ郡上八幡の子供たちや鵜飼、川とともに紡いできた人びとの営み、川漁や天然のアユなどが想起される。
     
    本書の表紙を飾るアユは、清流の象徴ともいえる海と川を行き来する魚だ。長良川の今、アユをはじめとした生き物の現状、近年の気候変動を視野に入れた河口堰の運用のあり方について、多方面の専門家たちが綴る。アユは人間の手で増やせるのか? 

    「バイオテクノロジーとは一体、何を豊かにするために存在するのであろうか」川漁師の言葉が胸に刺さる。日本各地を血管のように流れる川は本来身近な存在でありながら、なぜだか遠い。本書はそんな川との関係を結ぶべく、大きな役割を果たしてくれる。

    BOOK 02

    黒い大きな瞳は何を見ているのか

    『Back to the Wild
    森を失ったオランウータン』

    柏倉陽介著 
    エイ アンド エフ 
    ¥1,980

    『Back to the Wild 森を失ったオランウータン』

    マレーシア領のボルネオ島には、孤児となったオランウータンの保護施設がある。開発によって母と引き離された小さな命だ。本書は保護施設で暮らすオランウータンの赤ん坊たちを中心に、森の隅に追いやられながらも生きる動物たちを写し出している。施設で10年にわたり森に戻るトレーニングを積むというオランウータンの孤児たち。ロープを張り巡らせた擬似的な森をつたう日々。ヒトに近い数々の表情は人間のように愛くるしくもあり悲しげ。大きな瞳に釘付けになる。
     
    森の減少はすべて人間によるものだ。遠い国のできごとなのか……。私たちは無関係だろうか……。

    BOOK 03

    今までにない人物像。奇才と呼ばれた学者

    『熊楠さん、世界を歩く。
    冒険と学問のマンダラへ』

    松居竜五著 
    岩波書店 
    ¥2530

    『熊楠さん、世界を歩く。 冒険と学問のマンダラへ』

    南方熊楠は粘菌の研究で知られているが、説明が難しい学者でもある。それは民俗、動植物など多分野の研究に勤しみ、ひと言ではなかなかに言い表わせない。

    だが、昭和天皇に進講(学問講義)したこともあり、その非凡さは明らか。本書は南方熊楠顕彰館の館長でもある著者が新鮮な熊楠像を掘り起こそうとした意欲作。「熊楠さん」の74年の人生を一緒に旅するような構成になっている。氏が書き残した文章を現代の口語的に訳すことにも挑戦しており、とても親近感が湧く。

    BOOK 04

    生きざまに感心。植物ワンダーランド

    『植物の謎
    60のQ&Aから見える、強くて緻密な生きざま』

    日本植物生理学会編 
    講談社 
    ¥1100

    『植物の謎 60のQ&Aから見える、強くて緻密な生きざま』

    道端にある草花や野菜、果物などさまざまな植物への「なぜ?」を60個のQ&Aで解説していく。紅葉するメカニズムや葉っぱの縁のギザギザの役割といった素朴な疑問から、高校の教科書に出てくるような少し専門的に踏み込んだ内容まで多様な質問が並ぶ。質問の内容によっては今はまだわからないものや答えが難しいものもあるが、言葉を尽くした回答の数々はさらなる観察への誘いや研究を後押しするものが多く探究心がそそられる。足元の植物への関心が高まりそう。

    ※構成/須藤ナオミ

    (BE-PAL 2024年6月号より)

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