チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世は、ほぼ毎年、夏になると、ラダックとその周辺を訪れます。レーの郊外のチョグラムサルには、法王の滞在する邸宅と広大な空き地があり、数日間にわたるティーチング(法話)がそこで開催されます。ラダックで暮らすチベット仏教徒たちにとって、法王のティーチングはまさに一番大事な行事。みんな仕事を半休にして、朝早くから会場に集まります。晴れているのに傘が目立つのは、強烈な陽射しを避けるための日傘を持ってきている人が多いからです。
ティーチング中のダライ・ラマ法王。外国人が座るように指定されている一角には、法王が話された法話の内容を英語で通訳するスピーカーが設置されているほか、FMラジオがあれば英訳を流しているチャンネルも利用できます。
僕のすぐ近くに座っていた、ラダック人の老人。ラダックの伝統的な民族衣装、ゴンチェを着ています。法王の一挙手一投足を見つめながら、一心不乱に耳を傾け、祈りを捧げるその表情が、ずっと心に残りました。
◎文/写真=山本高樹 Takaki Yamamoto
著述家・編集者・写真家。インド北部のラダック地方の取材がライフワーク。著書『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(雷鳥社)ほか多数。
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