サスポルの南、ザンスカール川沿いの道から未舗装の脇道を入り、さらに1時間ほど山道を歩いた先に、スムダ・チュンという小さな村があります。この村にある小さな僧院、スムダ・チュン・ゴンパには、ラダックでも一、二を争うほどの素晴らしい仏教美術が残されています。
スムダ・チュン・ゴンパの本堂に祀られている、毘盧遮那如来(ナンパ・ナンツァ)を中心にした立体曼荼羅。精緻な造形に埋め尽くされたその荘厳さに、ただただ圧倒されます。
このスムダ・チュン・ゴンパの由来も、詳しいことは定かではありませんが、ほんの数軒の民家しかない山奥の小さな村で、これほど素晴らしい仏像や壁画の数々が守り続けられてきたというのは、驚くべきことです。ラダックの人々の祈りの敬虔さと、それを世代を超えて受け継いでいく思いの強さに、心を打たれました。
◎文/写真=山本高樹 Takaki Yamamoto
著述家・編集者・写真家。インド北部のラダック地方の取材がライフワーク。著書『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(雷鳥社)ほか多数。
http://ymtk.jp/ladakh/