「うちのドミトリーは、個別の仕切りもなく、布団を並べて寝るだけだから、シェアごはんを介して、少しでも打ち解けるコトで、知らない人と布団を隣り合わせて寝るという緊張感を解いてあげられたら」と、みえさん。
ひとつの目標(この場合は夕ごはんを作って食べるコト)に向かって、みんなであーだこーだとやっていると、不思議と連帯感が生まれる。シェアごはんならではのコミュニケーション法だと思う。“同じ釜の飯を食う”とは、よく言ったものである。一晩だけのできごとではあるけれど。
さて、ごはんもほぼ食べつくし、お酒もいい塩梅で呑んだ頃、私はどんどん気になりはじめていた。本日の個人的なメインイベント! 五右衛門風呂のコトが! もちろん、みんな入るものだと思いきや、眠さが勝ってしまった女子大生ふたり組と、年配女性はシャワーのみ。Iターン農家の男性陣おふたりは自宅でふつうにお風呂に入るという。
「ええっ!? 折角、薪で炊いても入るの私だけ!? も、もったいない! 」
薪風呂の湯のなめらかさと、ぽかぽかのすばらしい持続性をとくと伝えてみるも、参加者は増えず(ま、この日は、8月の真夏だったので仕方ないと言ったら、仕方ないのだが…)。
「むうさんが入るなら、私も入ります~」と、現れた救世主は、スタッフのみえさんだった。
しかし・・・だ。アウトドア雑誌の金字塔『BE-PAL』のwebで書かせてもらっているにも関わらずアウトドア度の低い、この私。薪の火のつけ方なんぞ、まったく心得てございません。結局、自分でくべるのは諦め、みえさんにやってもらい、先に五右衛門風呂に入らせてもらうコトに。
キレイにリフォームされた脱衣所と浴室。肌にやんわりなじむ薪ならではの湯のなめらかさ。身体の芯からホクホク温まる。小さな窓越しに、薪をくべてくれているみえさんと何か話した気もするようなしないような(酒を少々多めに呑んだコトもあってか、記憶が飛んでます…汗)。「この後、みえさんが入ってる間、私がくべますね~」それだけは言った覚えがある。…が、風呂上りに部屋に荷物を置きに行った後、あまりの心地よさに、私はどうやら夢の世界に行ってしまったもよう。気がついたら、太陽の光がまぶしい朝でした…驚愕! みえさん、すみません…。
「あ、私もお風呂で寝ちゃってて、起きたら夜中の3時でした~。あはは!」と、みえさん。朝から庭でお互いのドジっぷりを笑いあう。そこへ、リュックを背負って現れたゴウくんとココちゃん。「(保育園へ)行って来ま~す」と、朝のおでかけ前の挨拶だ。ゲストみんなで「いってらっしゃい」と見送る、のんびりとやさしい朝時間。シェアごはんと五右衛門風呂と、そして、けいこさんファミリーとみえさんが織りなすこの空気が、見知らぬ他人同士を一晩にして和ませてくれる。薪で炊いた湯のように、なめらかな人との繋がりを、佐島の「汐見の家」へ、あなたも感じに行ってみませんか? 真冬の五右衛門風呂は、ますます気持ちがいいだろうなぁ♪
【データ】
古民家ゲストハウス 汐見の家
住所:愛媛県越智郡上島町弓削佐島299
TEL: 0897-72-9800
料金:素泊まり 4,000円/泊~
アクセス:佐島港から徒歩約2分
URL:http://shiomihouse.com/
イラスト・文・写真/松鳥むう(まつとり・むう)
イラストエッセイスト
離島とゲストハウスと滋賀県内の民俗行事をめぐる旅がライフワーク。今までに訪れたゲストハウスは100軒以上、訪れた日本の島は84島。その土地の日常のくらしに、ちょこっとお邪魔させてもらうコトが好き。著書に『島旅ひとりっぷ』(小学館)、『ちょこ旅沖縄+離島』『ちょこ旅小笠原&伊豆諸島』『ちょこ旅瀬戸内』(いずれも、アスペクト)、『日本てくてくゲストハウスめぐり』(ダイヤモンド社)、『あちこち島ごはん』(芳文社)などがある。http://muu-m.com/