6月の深夜、北の空に「りゅう座」が昇ってきます。目立たない星座ですが、今年の干支は辰ということで、ぜひこれを機会に覚えてもらいたい星座です。
古代エジプト時代の北極星がりゅう座に?
りゅう座は夏に限らず、また辰年に限らず、北の空でほぼ一年中見られる星座です。もっと言えば、昼間もほぼ出ずっぱりです。
全天88星座の中には、うみへび座、へび座(南半球)と、長い体をもった星座がありますが、りゅう座の龍もかなり長いです。
上の図のように北極星(ポラリス)を宿すこぐま座を抱き込むように、くるりとした形をしています。りゅう座の場合、この半円形のラインに、意味がありそうです。
地球は地軸が傾いているため、コマが首を振りながら自転するように「首振り運動」をしながら回っています。これを「歳差運動」と言いますが、およそ2万6000年で首振りが一周します。一年中、一日中、動かないように見える北極星も、実は2万6000年周期で少しずつ変わっていき、現在はこぐま座のアルファ星というわけです。
古代エジプト時代、ピラミッドを建造していた紀元前3500年くらいの時は、りゅう座のトゥバンという4等星が北極星だったと言われています。かつて北極星だったかもしれない星を宿している、りゅう座です。
黄金のリンゴの番人をしていたが、ヘルクレスにあっさり盗まれる?
りゅう座の起源ははっきりとはわかりませんが、ギリシア神話には登場しています。
ギリシア神話きっての勇者といえばヘルクレスです。難敵を次々と破り、「十二の功業」を成し遂げたヘルクレスは、もちろんその功績を称えられて星座になっています。が、一番明るい星が3等星ということで、星座としてのヘルクレスの存在感はいまひとつです。
そのヘルクレスの「12の功業」の11番目の相手が、りゅう座の龍です。龍と書くと中国の神獣のイメージが強いかもしれませんが、ドラゴンの概念は西洋にもありました。
ギリシア神話の中のドラゴンは、黄金のリンゴがなる木を守る番人です。この黄金のリンゴを取ってくるよう命じられたのがヘルクレスです。
中国のりゅう座は北極星を守る城壁
一方、古代中国の星座図では、この半円のラインを北極星の周りを囲む宮殿の壁に見立てています。
中国では空全体を国に見立てていて、そこでは、天の北極は皇帝です。その周りの星は皇太子やお妃などの身内、その周りを重臣たちが囲み、その外側は番人や兵たちが守りを固めます。その宮殿の壁がりゅう座とすれば、なるほどかなり乗り越えるのは手強そうな壁に見えてきます。
このほか中国では、天空を4つの神獣に見立てることもあります。神獣は朱雀(すざく)、玄武(げんぶ)、青龍、白虎です。
青龍は東の空をつかさどる星座です。おとめ座からいて座にかけて、6月上旬なら真夜中に南中するエリアが青龍です。初夏の夜空に青い龍。ぜひ見つけてみてください。そして北の空にとぐろを巻くりゅう座もどうぞ覚えてください。
構成/佐藤恵菜