1月号(2017年12月10日発売号)の「CRAFT BEER-PAL」でご紹介した宮崎の「ひでじビール」。現在は「オール宮崎産」を目指して、ホップの栽培にも取り組んでいます。誌面では紹介しきれなかった工場案内をいたします!
ひでじビールでは、2010年から「宮崎農援プロジェクト」という取り組みを始めています。これは、地域の農畜海産物を積極的に利用したビール造りが目的。ひでじビールを代表する「宮崎日向夏ラガー」や「宮崎ゆずエール」といった地域の特産物を活かして造られたフルーツビールは、この取り組みから生まれたものです。
近年は、地元産の大麦を自社で製麦する技術開発にも成功し、オーダーメイドで栽培された大麦を自社で麦芽に加工して醸造した「YAHAZU」も誕生。こちらは、店頭販売・通販などの小売をせずに、あえて、宮崎県内の飲食店でのみ飲めるスタイルに。地元飲食店に観光客を呼ぶきっかけにもなっています。
「この取り組みを通じて、地元の方々からの応援の声も聞こえるようになりました。ひでじビールだけが注目を浴びるだけでなく、宮崎全体に貢献できたら。そして地元の人が誇れるビール会社になっていけたらうれしいですよね」とは、創業当時から造り手として働く梶川悟史さん。製麦技術も、チラ見せしてくださいました!
大麦は、3日ほど水分を与えて発芽させる。その後、自社で開発した機械で発芽させた大麦を容器ごとクレーンで持ち上げ、大麦の水分や酸素条件が均一になる様に定期的に回転させる。
発芽した大麦を下から熱風をあてて、丸1日乾燥。低温でゆっくり乾燥させないと酵素の働きが弱くなってしまう為、徐々に温度を上げていくのが重要。
洗濯乾燥機を縦長にしたような機械を使って、発芽した大麦の根やカスを取り除く。こちらも自社オリジナルの機械だ。
製麦した麦芽。大麦のデンプンが糖分に変わり、甘くなる。麦芽の保管庫は15度~17度に室温を保ち、できるだけ新鮮なうちに使う。
2017年は、県内でホップの栽培にも成功。2018年以降、それを使ったビール開発にも着手する予定です。
「ホップは、寒冷地で育つので、宮崎では絶対に無理だと言われていたんです。しかも8、9月が収穫期なので、台風と重なって難しいとも。しかし、実際に取り組んでみたらホップの成長が早く、6月に収穫ができたため、台風は問題なし! 日本で1番早く収穫できるホップになる可能性が出てきました。ただ、収量は寒冷地ほど多くないので限られた数しか作れません。そこが今後の課題です」
創業から22年、ずっとゼロから研究を続けているひでじビールは、さまざまな困難を乗り越えてきました。それが地域活性化に繋がり、さらには世界に飛躍するビールの誕生に発展しているのです。
延岡の居酒屋で飲んだ「YAHAZU」の味が忘れられず、それを飲みにまた行きたいと思う。「ひでじビールがあるから延岡に行きたい」という声は、今後ますます増えそうです。
文=中山夏美 撮影=江藤大作