シェルパ斉藤が直伝!フェリーとサイクルトレインを駆使したお役立ちツーリング情報
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    2024.06.07

    シェルパ斉藤が直伝!フェリーとサイクルトレインを駆使したお役立ちツーリング情報

    シェルパ斉藤が直伝!フェリーとサイクルトレインを駆使したお役立ちツーリング情報
    野田知佑さんが亡くなった年は、新門司港から歩いて久留米のお墓を参拝した。昨年はお墓参りをしたあと、寺の近くを流れる筑後川をカヌーで下って有明海に出た。

    歩き、カヌーと続けば、次は自転車である。

    三回忌にあたる今年は野田さんの命日に久留米のお墓に到着できるように、大阪の野田駅から愛車ケルビムのツーリングバイクを走らせた。
    ツーリングの一部始終はBE-PAL6月号と7月号の『シェルパ斉藤の旅の自由型』にたっぷりと記してある。webではその道中で僕が体験した、自転車の旅人におすすめの情報を紹介しよう。

    フェリーとサイクルトレインを駆使して九州へ上陸

    JR野田駅

    JR野田駅から旅はスタート。ここから旅をはじめる人はほとんどいないだろうけど、野田さんに会いに行く旅だから野田駅でしょ。

     大阪から九州まで自転車で走るのは、時間がかかるし、何より疲れる。瀬戸内海は自転車が乗船しやすいフェリーの航路が多いからそれらを有効活用した。

    神戸から香川県の高松へ行くジャンボフェリーで四国へ上陸。松山からは防予フェリーで山口県の柳井港へ。山口県の徳山港から大分県の竹田津港へ行くスオーナダフェリーに乗船して、九州に上陸。どのフェリーも自転車の乗船は僕以外にいなかった。

    ジャンボフェリー

    神戸を出港したジャンボフェリーは小豆島経由で高松へ向かった。神戸から高松までの所要時間は約5時間。たっぷり休憩できる。

    高松から松山までの距離は約160km。全行程は走らず、伊予西条駅までの約120kmを1日で走って、そこからサイクルトレインを利用した。

     JR四国は「えひめ・しまなみリンリントレイン」を予讃線の伊予西条駅と松山駅の区間で土日と祝日に運行している。自転車をバラして輪行袋に入れる必要もなく、そのまま列車に乗り込めるサービスだ。追加料金がかからないのもありがたい。紀伊半島の紀勢本線でも利用したが、サイクルトレインが全国にもっと広がることを望む。

    サイクルトレイン

    サイクルトレインは今治駅~松山駅は上下線、それぞれ10本ずつ運行している。伊予西条駅~松山駅は半数の5本になる。

    サイクルトレイン

    伊予西条駅も松山駅も改札口から跨線橋を渡って隣のホームへ行かねばならないが、どちらの駅もエレベーターがあって、ラクに移動できた。

    サイクルトレイン

    サイクリストひとりで座席4人分ほどを独占することになる。でも空いているから他の乗客の迷惑にならない。自転車を固定するためのストラップ等は各自が用意する。

    「恋が叶う道」でスローな旅を満喫

    国東半島先端の竹田津港から豊後高田方面にかけての国道213号は「恋叶(こいかな)ロード」という名前がついている。海岸沿いの国道には縁結びの神様である粟嶋社や夕陽の絶景海岸など、カップルにおすすめのスポットがたくさんあって、「恋が叶う道」として地元がプロデュースしているのだ。

    「恋叶ロード」は車道から独立した広い歩道もあって、自転車ツーリングにも向いている。訪れた日は雨だったので、歩行者と自転車しか通行できない「恋叶トンネル」に救われた。雨宿りがてら自転車を押して歩き、トンネルアートをじっくり鑑賞した。

    恋叶ロード

    最初は読み方がわからなかった。音読みで「レンキョウロード」かと思った。

    恋叶ロード

    恋叶ロード

    トンネル内部に地元の高校生や有志によるラブラブな作品が描かれている。どれも力作で、鑑賞せずにはいられないから必然的にスローな旅になる。

    ローカル線の面影を残すサイクリングロードを快走!

    かつて大分県の中津から日田方面にかけて、耶馬渓鉄道が走っていた。JR中津駅と旧山国町の守美温泉を結ぶ約36kmのローカル線だ。1975年に全線廃止となり、1982年に「メイプル耶馬サイクリングロード」という名前の快適な自転車道に生まれ変わった。

    中津駅から市街地を抜けるまでの区間は車道と併用しているが、本耶馬渓から先の約22kmは自転車専用道路になる。川沿いのサイクリングロードは中津側からだと上り坂になるものの、鉄道が走っていたルートだから勾配は緩やかだ。鉄橋もトンネルも残っていて、耶鉄と呼ばれていた耶馬渓鉄道の面影も感じられる。鉄道ファンのサイクリストにはたまらない自転車道である。

    福沢諭吉

    中津は福沢諭吉の出身地だ。渋沢栄一の新一万円札が発行されてもその功績を讃え続けようと、今年3月に福沢諭吉のタイルアート作品が中津駅の壁面に完成した。つい写真を撮りたくなるスポットだ。

    中津駅

    中津駅からはじまる「メイプル耶馬サイクリングロード」。耶鉄の駅跡に駅名標が設置されている。往年のものではなく、自転車道の開通後に新設した。

    メイプル耶馬サイクリングロード

    山国川沿いに延びる「メイプル耶馬サイクリングロード」は、廃線跡の道路幅が自転車にちょうどよく感じる。

    メイプル耶馬サイクリングロード

    耶鉄時代のトンネルが随所に残っている。自転車でくぐるときはワクワクする。

    自転車文化の盛んな中津を象徴するゲストハウスを発見!

    中津市内にはサイクリストに断然おすすめのゲストハウスがある。中津駅から1km以内、商人町として栄えた旧市街の一角にある「すえひろや」だ。

     ハワイから移住した夫妻が営むゲストハウスで、古民家をリノベーションした建物もすばらしいが、その宿泊条件がサイクリストを惹きつける。訪日外国人旅行者か、サイクリスト限定なのである。つまり日本人は自転車で来た旅人でないと泊まることができないのだ。

    「メイプル耶馬サイクリングロード」で知られるように、中津周辺は80年代から自転車に力を入れている。ならば自分たちも地元の役に立ちたい、自転車の文化を盛り上げようと考えたアイデアだという。

     ゲストハウスとしての「すえひろや」がオープンしたのは1年前。これまでに泊まった日本人サイクリストは10人程度だが、サイクリストが来ることによって生まれる化学反応やコミュニティーを楽しんでいるとのこと。

     トイレやバスルームなどの設備は快適で、1泊1万円以上してもおかしくない高級ゲストハウスに思えるのに、素泊まり料金は1泊4500円だ。僕は誕生日に宿泊したため、みんなで水炊き鍋を囲む夕食は楽しめた。

     「すえひろや」を拠点にして、「恋叶ロード」や「メイプル耶馬サイクリングロード」を走るツーリングを提案したい。

    すえひろや

    築150年以上の古民家をリノベーションした「すえひろや」は外観も美しい。小さな看板があるだけだが、場所はわかりやすい。

    すえひろや

    「すえひろや」を切り盛りしている渡辺照与さんとアメリカ出身の夫、ジェイソンさん(右)。そして長期滞在しているオランダ人のヴィンセントさん(左)。ジェイソンさんもヴィンセントさんも日本語を普通に話せる。

    すえひろや

    建築家のジェイソンさんが腕のいい地元の大工と組んでリノベーションしたという。室内はセンス良くまとまっている。

    すえひろや

    和洋混合の室内。大型冷蔵庫やレンジなど、キッチンの設備が整っていて、自炊もラクにこなせる。

    すえひろや

    寝室は2階に2部屋。畳の間の中央に大きなマットが置かれている。ジェイソンさんはクッションの効いた柔らかいマットでなければ眠れないそうで、自身の好みで選んだマットだという。朝まで快眠できた。

    すえひろや

    サイクリストのためのゲストハウスだから、サイクルスタンドが設置されていて、自転車を室内に持ち込むこともできる。

    すえひろや

    「すえひろや」は素泊まりのゲストハウスだけど、誕生日の僕を祝おうと鍋料理のパーティーを開いてくれた。こういう楽しいことが起こりうるゲストハウスである。

    「すえひろや」の公式サイトはこちら! 
    https://suehiroya-oita.com/

     

    シェルパ斉藤
    私が書きました!
    紀行作家・バックパッカー
    シェルパ斉藤
    1961年生まれ。揚子江の川旅を掲載してもらおうと編集長へ送った手紙がきっかけで『BE-PAL』誌上でデビュー。その後、1990年に東海自然歩道を踏破する紀行文を連載して人気作家に。1995年に八ヶ岳の麓に移住 し、自らの手で家を作り、火を中心とした自己完結型の田舎暮らしを楽しむ。『BE-PAL』で「シェルパ斉藤の旅の自由型」を連載中。『シェルパ斉藤の行きあたりばっ旅』ほか著書多数。歩く旅を1冊にまとめた『シェルパ斉藤の遊歩見聞録』(小学館)には、山、島、村、東海自然歩道などの旅や、犬と歩いたロングトレイルの旅を収録。

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