歩き、カヌーと続けば、次は自転車である。
三回忌にあたる今年は野田さんの命日に久留米のお墓に到着できるように、大阪の野田駅から愛車ケルビムのツーリングバイクを走らせた。
ツーリングの一部始終はBE-PAL6月号と7月号の『シェルパ斉藤の旅の自由型』にたっぷりと記してある。webではその道中で僕が体験した、自転車の旅人におすすめの情報を紹介しよう。
フェリーとサイクルトレインを駆使して九州へ上陸
大阪から九州まで自転車で走るのは、時間がかかるし、何より疲れる。瀬戸内海は自転車が乗船しやすいフェリーの航路が多いからそれらを有効活用した。
神戸から香川県の高松へ行くジャンボフェリーで四国へ上陸。松山からは防予フェリーで山口県の柳井港へ。山口県の徳山港から大分県の竹田津港へ行くスオーナダフェリーに乗船して、九州に上陸。どのフェリーも自転車の乗船は僕以外にいなかった。
高松から松山までの距離は約160km。全行程は走らず、伊予西条駅までの約120kmを1日で走って、そこからサイクルトレインを利用した。
JR四国は「えひめ・しまなみリンリントレイン」を予讃線の伊予西条駅と松山駅の区間で土日と祝日に運行している。自転車をバラして輪行袋に入れる必要もなく、そのまま列車に乗り込めるサービスだ。追加料金がかからないのもありがたい。紀伊半島の紀勢本線でも利用したが、サイクルトレインが全国にもっと広がることを望む。
「恋が叶う道」でスローな旅を満喫
国東半島先端の竹田津港から豊後高田方面にかけての国道213号は「恋叶(こいかな)ロード」という名前がついている。海岸沿いの国道には縁結びの神様である粟嶋社や夕陽の絶景海岸など、カップルにおすすめのスポットがたくさんあって、「恋が叶う道」として地元がプロデュースしているのだ。
「恋叶ロード」は車道から独立した広い歩道もあって、自転車ツーリングにも向いている。訪れた日は雨だったので、歩行者と自転車しか通行できない「恋叶トンネル」に救われた。雨宿りがてら自転車を押して歩き、トンネルアートをじっくり鑑賞した。
ローカル線の面影を残すサイクリングロードを快走!
かつて大分県の中津から日田方面にかけて、耶馬渓鉄道が走っていた。JR中津駅と旧山国町の守美温泉を結ぶ約36kmのローカル線だ。1975年に全線廃止となり、1982年に「メイプル耶馬サイクリングロード」という名前の快適な自転車道に生まれ変わった。
中津駅から市街地を抜けるまでの区間は車道と併用しているが、本耶馬渓から先の約22kmは自転車専用道路になる。川沿いのサイクリングロードは中津側からだと上り坂になるものの、鉄道が走っていたルートだから勾配は緩やかだ。鉄橋もトンネルも残っていて、耶鉄と呼ばれていた耶馬渓鉄道の面影も感じられる。鉄道ファンのサイクリストにはたまらない自転車道である。
自転車文化の盛んな中津を象徴するゲストハウスを発見!
中津市内にはサイクリストに断然おすすめのゲストハウスがある。中津駅から1km以内、商人町として栄えた旧市街の一角にある「すえひろや」だ。
ハワイから移住した夫妻が営むゲストハウスで、古民家をリノベーションした建物もすばらしいが、その宿泊条件がサイクリストを惹きつける。訪日外国人旅行者か、サイクリスト限定なのである。つまり日本人は自転車で来た旅人でないと泊まることができないのだ。
「メイプル耶馬サイクリングロード」で知られるように、中津周辺は80年代から自転車に力を入れている。ならば自分たちも地元の役に立ちたい、自転車の文化を盛り上げようと考えたアイデアだという。
ゲストハウスとしての「すえひろや」がオープンしたのは1年前。これまでに泊まった日本人サイクリストは10人程度だが、サイクリストが来ることによって生まれる化学反応やコミュニティーを楽しんでいるとのこと。
トイレやバスルームなどの設備は快適で、1泊1万円以上してもおかしくない高級ゲストハウスに思えるのに、素泊まり料金は1泊4500円だ。僕は誕生日に宿泊したため、みんなで水炊き鍋を囲む夕食は楽しめた。
「すえひろや」を拠点にして、「恋叶ロード」や「メイプル耶馬サイクリングロード」を走るツーリングを提案したい。
「すえひろや」の公式サイトはこちら!
https://suehiroya-oita.com/