空前の「はにわ」ブーム到来中!
最近、SNSなどで話題の「埴輪(はにわ)」。各地でさまざまな埴輪イベントや古墳フェスが行われ、若者を中心に埴輪熱が高まっている。人気の理由は、埴輪が持つ神秘性と、素朴で親しみやすいデザイン。携帯待ち受け画面や、埴輪を育ててオリジナル古墳を作るゲームも登場。埴輪関連グッズを集める推し活女子も増加中だ。
「埴輪を知る入口は色々あると思います。これを機に多くの人が埴輪に興味を持ち、古代史の面白さに触れていただければ嬉しいですね」と、考古学者の若松良一さんはいう。
そんな中、今年10月16日~12月8日、東京・上野の東京国立博物館に、日本各地から選りすぐりの埴輪が大集結する。開催されるのは「挂甲の武人(けいこうのぶじん) 国宝指定50周年記念『はにわ』」。同館約50年ぶりとなる埴輪の特別展だ。
このハニワを見逃すな!
埴輪とは、王の墓である古墳に立て並べられた素焼きの造形。今から約1750年前、古墳時代の約350年間に作られていた。
なかでも国宝「埴輪 挂甲の武人」は埴輪造形の最高傑作と呼び声が高い。特別展は、この埴輪が国宝に指定されてから50周年を迎えることを記念しての開催となる。
映画のモデルになった埴輪「挂甲の武人」
特別展のテーマになっている「挂甲の武人」は、6世紀代の人物形象埴輪。小さな鉄板をとじ合わせて作られた鎧(よろい)「挂甲」を身にまとった武人だ。
左手には弓、右手には大刀を持ち、矢を入れた靫(ゆぎ)を背負っている。その精巧さから、古墳時代の埴輪として初めて、1974年に国宝指定されている。身分の高い権力者を表現したとされ、国宝では唯一の人物埴輪だ。
実はこの国宝の「挂甲の武人」、最初に世の中に知れ渡ったのが1966年。当時公開された映画『大魔神』のモデルとして登場したのがきっかけだった。穏やかな表情の草食系イケメン「挂甲の武人」が、怒りとともに大魔神に変身する様は、多くの子どもたちの心をつかみ夢中にさせた。
以後、1976年発行の200円切手(新動植物国宝図案切手)のデザインにも採用されるなど(2022年発行の切手『国宝シリーズ第3集』でも再登場)「挂甲の武人」人気は衰えなかった。その人気は、今も健在だ。
埴輪 踊る人々
「踊る人々」は、推し活女子が「きゃわっ💓」「神っ!」「マジ沼る」とグッズ集めに奔走するほど人気の埴輪だ。髪型や顔、服装の表現がかなり省略されており、愛らしい表情が魅力。
古墳時代の暮らしや自然観がわかる動物埴輪
動物埴輪の多くは、人物や他の動物などとセットになって出土されているという。そこから当時の暮らしぶりや狩猟風景などを垣間見ることができる。
犬形埴輪
犬は狩りのパートナー。古墳時代、人物埴輪の登場とともに、狩猟の対象である鹿や猪の埴輪とともに造形されていた。
鹿形埴輪
後ろを振り返ったポーズをとる見返り鹿。大きな角を持った牡鹿で、犬や人物とセットになって狩猟場面を演出するように構成されていた。
猿形埴輪
非常に珍しい猿をかたどった埴輪。背中にはがれた痕が残っていて、もとは子猿を背負っていたと考えられている。
鶏形埴輪
鶏埴輪は動物埴輪の中では登場が最も早く、4世紀後半に出現する。『古事記』天岩戸の段にあるように、鶏鳴は夜明けを示すとともに、死者の復活のための呪物(まじもの)として、喪屋の近くに置かれるようになったと考えられている。
馬形埴輪
馬は古墳時代に朝鮮半島から渡来して急速に普及し、農耕や軍事、儀式などに用いられた。馬形埴輪の大半は、馬具を身につけた飾り馬。頭の被りものがたてがみを垂らしたような状態で、類例のない珍しい埴輪だ。
挂甲の武人 国宝指定50周年記念 特別展『はにわ』
会期と会場
※「BE-PAL」7月号、「作家・夢枕獏×考古学者・若松良一 スペシャル対談 アウトドアライフの源流『古代史』の遊び方」もぜひご一読ください。
※取材・文/松浦裕子 埴輪解説監修/若松良一(考古学者)
休館日:月曜日、ただし11月4日(月)は開館、11月5日(火)は本展のみ開館
主催:東京国立博物館、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社
展覧会公式X(旧Twitter) @haniwa820_ten
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