100年ぶりの大発見もあり! 2023年度に日本で見つかった新種生物15種 | 自然観察・昆虫 【BE-PAL】キャンプ、アウトドア、自然派生活の情報源ビーパル
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    2024.06.26

    100年ぶりの大発見もあり! 2023年度に日本で見つかった新種生物15種

    毎年世界中で2,000種以上発見されている新種生物。その中に日本で見つかったものも数多く含まれている。今回はこの1年間余りに焦点を当て、発見の経緯や今後、新種が見つかる可能性などを大紹介!

    「種」より上のカテゴリー「属」のレベルでも新発見!

    最近、新種発見のニュースをよく耳にするが、なかでも話題を集めたのが、光合成をせずに土中の菌類から栄養を得る植物、タヌキノショクダイの仲間、ムジナノショクダイの発見だ。光合成をやめた植物の生態解明が専門で、発見者でもある末次健司教授に話をうかがった。

    「2022年6月に研究仲間から、鹿児島県の大隅半島で奇妙なタヌキノショクダイ科の植物が見つかったと連絡がきたんです。写真を見たのですが、既知のものと違うことはひと目でわかりました。すぐ現地調査に行ったのですが、その年は見つかりませんでした」
     
    幸い、翌’23年に生体が見つかり、詳細に特徴を調べるとともに、DNAを解析。その結果、属のレベルでの新発見であることがわかったという。

    「日本は植物研究の分野では世界のトップレベル。ほとんど調べ尽くされていて、日本語の名前はついているけど正式に発表されていないとか、DNAを調べたら2種に分かれるとか、そういった新種がほとんど。今回のように未知の植物を採集して、それが属レベルで新しいなんて、ありえないことなんです。そういう植物がまだ日本に残っていたことが驚きです」
     
    末次教授はキリシマギンリョウソウやハチジョウネジバナなど、新種を次々に発見している。

    「私の専門分野である、光合成をやめた菌従属栄養植物は分類が進んでいないので、光合成をする植物よりも新種が見つかりやすいとは思います」
     
    属レベルは難しくても、種レベルの発見はあると、末次教授。

    「植物も人間と同じく個体差があるので、形状だけで判断するのは難しいですが、DNA解析で種が違うという答えが出ていれば、種を分ける適切な形態の違いが見えてくるんです」
     
    高知・愛媛で見つかり、’23年末に発表された5新種1新亜種のギボウシも、ゲノム(遺伝情報全体)の中の多数の配列の違いを解析。最新のMIG-seq 法により、既知のギボウシ属の種と、新たに発見された種の系統関係を詳細に比較し、5新種1新亜種の存在をつきとめた。うち、上記2種は種の保存法に基づく緊急指定種に指定された。
     
    技術の進化も新種発見に貢献しているようで、サンシャイン水族館では水中ドローンにアームをつけて深海の生き物を採集し、新属新種のエビを発見した。その一方で、テレビ番組のロケで昆虫採集をした際に、偶然、新種を発見したという例もある。
     
    地形や気候の変化に富む日本。多様な自然が育む新種発見のニュースに、今後も注目したい。

    現代の牧野富太郎!? 末次先生が確認した新種植物4

    私が発見しました! 神戸大大学院理学研究科 末次健司教授

    末次健司教授

    植物や昆虫、キノコの生態や進化を研究。なかでも、光合成をやめた植物(菌従属栄養植物、腐生植物、寄生植物)の生態解明が専門。

    "新属"の国内植物としては約1世紀ぶりの大発見

    ムジナノショクダイ

    ムジナノショクダイ

    光合成をやめた植物「タヌキノショクダイ」に似るが、花の内部が異なることを確認。その後、DNAの解析で、種の上位にあたる「属」のレベルでも新しいことが判明。ムジナノショクダイ属を設立した。

    1属1種と思われていたが2種めを国内で発見

    キリシマギンリョウソウ

    キリシマギンリョウソウ

    1属1種のギンリョウソウの色変わりと思われていたが、20年に及ぶ調査の結果、2022年11月に新種認定。最初の発見地である鹿児島県霧島の名を冠して命名。薄紅色の花びらが特徴。

    観察のチャンスがある⁉  東京など8都県で自生を確認

    ハチジョウネジバナ

    ハチジョウネジバナ

    変わったネジバナの存在は知られていたが、DNAも含め調べると、自家受粉することや開花時期が早いことなどが判明。数多く見つかった八丈島にちなんで命名。新種認定は2023年3月。

    ハチジョウネジバナ

    絶滅から一転、新種判明後に再発見

    コウベタヌキノショクダイ

    コウベタヌキノショクダイ

    1992年に採取された1個体の標本から新種であるとつきとめた。絶滅宣言されたが、末次先生の研究グループが2021年に偶然、再発見。2023年に論文を発表し、植物界の話題に!

    まだまだある! ここ1年以内に発表された新種11

    動物編

    2023年8月

    長崎県五島列島の固有種

    ゴトウタゴガエル

    ゴトウタゴガエル

    画像提供/北九州市立いのちのたび博物館

    長崎県五島列島の山地に生息。タゴガエルにそっくりだが、鳴き声や繁殖期が異なる。京都大学の松井正文名誉教授と北九州市立いのちのたび博物館との共同研究の結果、新種と判明した。

    2024年2月

    サンゴ礁に生息する小さなハゼ

    アカネコバンハゼ

    アカネコバンハゼ

    画像提供/鹿児島大学総合研究博物館

    鹿児島県本土や奄美群島のサンゴ礁に生息する全長約3㎝の小型魚で、鹿児島大学の大学院生が発見。一部のダイバーの間でここ数年、かわいいと話題になっていたとか。

    2023年11月

    水中ドローンで採集して発見!

    トリノアシヤドリエビ

    トリノアシヤドリエビ

    画像提供/サンシャイン水族館

    静岡県駿河湾の水深130m~200mで採集したウミユリの一種、トリノアシに付着していたエビが新種と判明。深海に生息するトリノアシに共生する十脚類の記録は世界的にも貴重。

    2023年11月

    アンガールズがTVロケ中に発見!

    モトナリヒメコバネナガハネカクシ

    モトナリヒメコバネナガハネカクシ

    画像提供/庄原市立比和自然科学博物館

    テレビ番組「元就。」の企画で、アンガールズの山根良顕さんが採集し、後日、新種と判明。体長は1㎝未満。ハネカクシの仲間は国内でも800種が知られるが、未記載のものも多いそう。

    植物編

    2024年2月

    日本産ユリ属としては110年ぶりの新種

    ミナミスカシユリ

    ミナミスカシユリ

    画像提供/大阪公立大学 渡邉誠太特任助教

    大阪公立大学と京都大学の研究グループがスカシユリ類の従来の分類を改定。その作業の中、日本原産のユリ属として110年ぶりの新種と発表。

    ミナミスカシユリ

    画像提供/大阪公立大学

    ミナミスカシユリ(右)は葉の先端が外側に曲がる。そのほかのスカシユリ(左)は葉の先端が直線状だ。

    ギボウシ属6種(5新種1新亜種)

    2023年11月

    四国中央部の限られた地域に分布

    ミナヅキギボウシ

    ミナヅキギボウシ

    画像提供/高知県立牧野植物園

    四国の標高1,200m以上の橄欖岩や蛇紋岩地に生育するシコクギボウシの近縁。シコクギボウシの花色は濃紫色だが、本種は薄紫色だ。

    2023年11月

    タキミナヅキギボウシの亜種

    セトガワギボウシ

    セトガワギボウシ

    画像提供/高知県立牧野植物園

    遺伝子上はタキミナヅキギボウシの近縁だが、形状が異なっている。広い卵形の葉を持ち、葉の裏は粉をふいたような白い色をしている。

    ※構成/松村由美子

    (BE-PAL 2024年7月号より)

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