「いずれ、アヤメかカキツバタ」は、どちらも優劣付けがたいという意味の慣用句
アヤメとは
学名:Iris sanguinea
アヤメ科の多年草。北海道~九州の草地に自生し、花茎は高さ30~60㎝。5~7月に放射相称の花を咲かせる。外側の大きな萼片の付け根は黄色く、紫色の網目模様があり、これにちなんでアヤメと名付けられたという説がある。
アヤメは乾いた草地に育つ多年草だが、花が美しいので花壇にも植えられる。
根元からのびる葉は剣形で30~60cmほど。中心から立ち上がる花茎も30~60cmほどで、てっぺんに2~3個の紫色の花をつける。
6cmほど垂れ下がる外花被片の中央から爪部にかけて網状の模様(綾目/文目)があり、一説にはこの模様からアヤメと名付けられたという。
よく似た花にカキツバタがある。カキツバタは水辺に育つ野草で、アヤメと違い1本の白や黄色いラインがあるだけで網状の模様はない。
茨城県の潮来では、5〜6月に「あやめまつり」があり、「潮来出島の真菰の中に菖蒲咲くとはしをらしや」という地元唄もある。マコモは池や川などの水中に育つイネ科の野草だが、アヤメは水の中では育たない。この唄の中のアヤメは、じつはカキツバタなのではないか。
アヤメの仲間の名前はとても覚えにくい。アヤメ、カキツバタ、ノバナショウブ、キショウブ、ハナショウブ。これにショウブも加わるかもしれないが、ショウブはアヤメ科ではなく、じつはミズバショウと同じサトイモ科の植物なのだ。
家内に誘われて近郊の菖蒲まつりに出かけてみた。ところが湿地に咲きそろっているのは白や紫の大柄なハナショウブだけで、肝心のショウブはどこにも見当たらなかった。
アヤメとカキツバタ、ハナショウブの花はどう違う?
花壇のアヤメ。美しい花だ。
池で見つけたカキツバタ。とても希少な野草だ。
「あやめまつり」のハナショウブ。
ショウブ。ミズバショウの仲間だ。
おくやまひさし プロフィール
画家・写真家・ナチュラリスト。
1937年、秋田県横手市生まれ。自然や植物に親しむ幼少期を過ごす。写真技術を独学で学んだのち、日本各地で撮影や自然の観察を開始。以降、イラストレーター、写真家として図鑑や写真集、書籍を数多く出版。
※イラスト・写真・文 おくやまひさし
(BE-PAL 2024年7月号より)