FILE.61は、「移転した富士山」こと目黒元富士です。
第61座目「目黒元富士」
残念ながら、File.54で目黒元富士が移転したという事実を知りました。ならば行くべし。今回は、時代の流れの中で目黒元富士が移転した先、目黒区氷川神社「目黒富士(目黒元富士)」を目指すことにしました。
今回の登山は、なんと、またオシャレな町、三軒茶屋の隣に位置する田園都市線、池尻大橋駅南口登山口からです。
実は、社会人1年目は東京で就職し、田園都市線「二子玉川駅」に住んでいました。職場も二子玉川駅周辺でしたので、基本自転車通勤でした。会社の会議で銀座に行く以外は、電車に乗ることもなく田園都市線沿線に住んでいましたが、沿線の駅はほぼ下りたことがありません。人間の行動範囲って狭いですね。
今回は、池尻大橋登山口から真っすぐ歩けばあっという間に氷川神社に着きますが、それでは面白くありません。とりあえず南口をでると気の向く方向へ歩いていくことにしました。
初めて降りた池尻大橋を探訪
なんとなく気まぐれに、旧大山街道を歩き、路地に入っていくと住宅街です。すぐに現れたのが、道路を挟んである東山貝塚公園と東山児童遊園でした。東山貝塚公園には、File.8の亀塚でご紹介したように、たて穴式住居が復元され、4,000年から5,000年前の古代人の生活場面があらわされています。
また、公園の真中に石組されたせせらぎは、昔そのままに崖下から湧く湧水が流れているんだそうですよ。公園の真ん中を小川が通り、木陰のある静かな公園。しばし腰を降ろし水分補給。東山で貝塚ということは、その昔、ここは丘か山だったのだろうかと妄想しつつ、当時と同じせせらぎと、涼しい日陰に後ろ髪をひかれつつ、勇気をもって日差しの強い道路へ歩き出しました。
目黒天空庭園
目黒川方向に進んでいくと、銭湯あり、オシャレなレストランあり、下町情緒ありと、素敵な町です。もっとオシャレで都会の匂いしかしない街だと思っていたのですが、回り道をしたかいがありました。
今回、なぜ、ふらっと回り道をしたかというと、地図をみてどうしても目黒天空庭園が気になったのです。
目黒天空庭園は、首都高速道路の3号渋谷線と中央環状線を結ぶ大橋ジャンクションの屋上を緑地化した、目黒区立の公園です。ドーナツのような楕円形の形が特徴で、高さは地上11メートルから35メートル、距離は約400メートルもあります。最も低い部分は歩道橋経由で国道246号へと通じているので今回、ルートとしてうってつけだと考えたのです。
しかも、庭園には芝生をベースに約30種類の樹木や花が植えられています。高さ11メートルからゆっくり公園を登っていくと、一番上の35メートル地点はなんと8階です。
屋上の緑あふれる公園から見下ろすビル街は、普段と全く逆の景色で、不思議な感じがしました。まさに天空庭園です。
いざ、目黒富士へ
目黒天空公園に隣接する大橋図書館からエレベーターで3階におりると、オーパスブリッジを渡って246号線の歩道に出ます。
目黒警察大橋交番の直ぐ隣に、なんと「目黒富士登山道」と木で出来た案内板があります。先をのぞくと氷川神社の鳥居がありますが、僕は目黒富士を登りにきたので、交番脇にある登山道を登ることにしました。
コンクリートの階段を登っていくと鳥居があり、そこをくぐると登山道が始まりました。大きな木々の下を歩く道のりは、何とも荘厳です。一合目から始まり、斜度は少しずつ傾斜がきつくなり、登山道を登り切ると、目黒富士山頂上と書かれた道標があり、その書面に上目黒木川神社とその右手奥に浅間神社があるのでした。
上目黒氷川神社
1573年~1592年に当地の旧家武田信玄の家臣、加藤氏が甲斐国・上野原の産土神をむかえたものであるといわれています。その後1878年に上目黒にあった浅間神社を当神社に移転し、1912年に北野神社を合祀して現在の上目黒氷川神社となったそうです。
目黒富士(目黒新富士)
「目黒元富士」は、FILE54「目黒元富士」でご紹介した通り、旧朝倉家住宅のすぐそばにありました。高さ12メートルと非常に大きな富士塚だったそうです。しかし、1878年に取り壊されましたが、石祠の講の碑は当時のまま移されました。
境内の浅間神社を参拝する際に、富士山を登っている感覚が味わえるようにと、氏子総代の方々を中心に相談して1975年に造られた登山道が神社までの登山道だそうです。
インターネットで目黒富士(目黒元富士)について調べていて、クラウドファンディング(レディーフォー。すでに募集は終了)を発見しました。「目黒元富士」を復活させたいという趣旨のクラウドファンディングです。読み進めていくと…。
実は、目黒富士(目黒元富士)には、石祠は移設されたものの、富士塚自体は存在していないとのこと。確かに山頂には道標と神社しかなかったような気がします。なお、目黒富士(目黒元富士)のある氷川神社のある地は、神社が出来る前には稲荷山と呼ばれていたとか。すでに募集は終了していますが、興味のある方はぜひクラウドファンディングのページをご覧ください。
僕が東京の山を歩いてこの目黒富士に出会ったのも何かの縁。数年後、復活した目黒富士(目黒元富士)をご紹介出来たらいいな。
次回は、豊島区長崎にある「長崎富士」です。
※今回紹介したルートを登った(歩いた)様子は、動画でもご覧いただけます。