ヘリコプターは時にゆらりと風に機体を預けながら、低めの高度を保ったまま、冬のアラスカの原野を飛んでいきます。眼下には、黒々としたトウヒの森が広がっていました。
15〜20分ほど飛んでいくと、森が途切れ、白くひらべったい空き地のような場所が見えてきました。大きな湖が、完全に凍結してしまっているのです。
ヘリコプターは、その凍結した湖の上に着氷しました。湖の傍らには、大小の木製のキャビンが。ここが今回の僕の滞在地、カリブー・ロッジというウィルダネス・ロッジです。
僕と荷物を降ろしたヘリコプターは、再び唸りを上げて、まるでラジコン操縦のおもちゃのように、軽々と空に舞い上がっていきました。ヘリコプターが再び僕を迎えに飛んできてくれるのは、3日後です。
◎文/写真=山本高樹 Takaki Yamamoto
著述家・編集者・写真家。インド北部のラダック地方の取材がライフワーク。著書に『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(雷鳥社)など。2018年3月22日(木)に新刊『ラダック ザンスカール スピティ 北インドのリトル・チベット[増補改訂版]』を発売。
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