カリブー・ロッジに到着した日の午後、日没まで少し時間があったので、ロッジの周囲を一人で散策しました。日射しがあるうちは多少のぬくもりは感じられますが、風は今まで経験したことのないような冷たさで、ぴりぴりと頰を刺します。
雪と氷と光と影。すべてが静止した世界の中で、風の吹く音、自分の吐息の音、足が雪を踏みしめる音だけが聞こえてきます。この日はスノーシューを履いていなかったので、スノーモービルの轍のある場所を選んで歩いていたのですが、それでも時折、ずぼっ!と雪を踏み抜いてしまって、足を引っ張り出すのにちょっと苦労しました。
カリブー・ロッジの看板犬、黒犬のハウィー。とても人懐こい犬で、僕が散歩に出かけると、「道案内してあげるよ!」とついてきて、僕の前をてくてくと歩いていっては、「まだなの? まだなの?」とふりかえって見守ってくれていました(笑)。
◎文/写真=山本高樹 Takaki Yamamoto
著述家・編集者・写真家。インド北部のラダック地方の取材がライフワーク。著書に『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(雷鳥社)など。2018年3月22日(木)に新刊『ラダック ザンスカール スピティ 北インドのリトル・チベット[増補改訂版]』を発売。
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