その成果を持ち寄ってフルコースを作ってもらいました。野草や雑魚のおしゃれな食べ方がわかります!
フィールドで食べられるものを持ち寄ってオードブルからメインまで作ってみた!
右:ナチュラリスト おくやまひさしさん 左:野生生物研究所 奥山英治さん
自然写真家であり画家として植物図鑑も手がける、ひさしさん。父から実践的自然派英才教育を受けフォールドガイドとして活躍する英治さん。
郊外の田や畑で見つかる「0円以上の価値」
野草摘みはさ、季節と場所が主役なんだよ。だから、野草がどんなところに生えているか覚えておくことが大事」
とひさしさん。今回訪れたのも、40年以上通っている東松山市のフィールドだ。
「市街地で見つかる草もあるけど、いろいろな種類を集めたいなら、郊外の田や畑の周りがいいね。南側の土手なんて最高だよ」
それを聞いた息子の英治さん。
「じゃあ、親父は野草摘んでていいよ。オレはその間に川行ってエビ採ってくるから」
いうが早いか、あっという間に姿が見えなくなる。
「あぁ、これこれ」
聞いているのかいないのか、シャキシャキ草を摘むひさしさん。英治さんの我が道を行くマインドは、父親譲りなのでしょう。
かれこれ1時間ほど。お互い成果を持ち寄る。
「セリとクレソンはおひたしにして、クズの先っぽとクワの葉は天ぷらかな。メインディッシュはツリガネニンジンの根っこを使った味噌焼き」
「根っこ!? なんだそりゃ」
「ばか、山菜の王様だ」
「はいはい。オレは川エビのパスタ。ザリガニは何するか〜」
「ザリガニ!? 0円だからって変なもの食わすなよ」
「まあ、騙されたと思って食ってみてよ。絶対、0円以上の価値はあるからさ」
見つかった野草はこちら!
クワ(右上)、お茶の葉(左上)、ナンテンハギ (右下)、カキの葉(中下)、クズ(左下)
若葉はコクがあって美味しいナンテンハギは和物に。ほかの葉はアクが抜ける天ぷらと相性抜群。公園や空き地などでも見つけられる。
セリ
湿地に群生し、古くから冬季のビタミン補給用として利用される。
クレソン
正しくはオランダガラシ。水辺に生え、消化を促進する。
タンポポ
年々、根が太く長くなり、粉にしてコーヒーとしても飲まれる。
ツリガネニンジン
葉は摘むと独特の香りがあるのが特徴。太い根も食べられる。
ノビル
春先は辛みのある球根を生食できるが、今回は葉の部分を薬味に。
野草の見つけ場所と採集
日当たりの良い南側の斜面を探すと、植生豊かで多種の野草が見つかる。
茎の柔らかい新芽の部分を摘む。水を少し入れた密閉保存袋で運搬。
株の周りに円を描くように切り込みを入れて根を掘り取る。穴は埋め戻す。
ガサガサでエビ採集
川の下流側に網を据え、上流を波立て追い込む。河岸がベスト。
網に追い込んだ川エビ。調理直前まで川の水に浸けておく。
ザリガニはタコ糸の先にスルメを結びつけて釣り上げる。
早速お料理をご紹介!
野草3種のオードブル
野草の旨みやえぐみをダイレクトに味わう3種盛り。かすかに残るほろ苦さがまた旨い! いろんなおひたしで味比べするのも◎。
ナンテンハギの味噌和え(オードブル集合写真の右)
茹でた葉をすり鉢ですり潰し、味噌と砂糖で和える。マメ科特有の香りが引き立つ。
セリとクレソンのおひたし(オードブル集合写真の中央)
野草はクセの弱いものから順に茹でると香りが移らない。醬油や胡麻味噌でいただきます!
タンポポのきんぴら(オードブル集合写真の左)
ひげ根や皮を取り除いたら、大きさを切りそろえる。作り方はゴボウのきんぴら同様に。
ツリガネニンジン根の味噌焼きサラダ
トトキと呼ばれる野草食の王様(ひさしさん曰く)。繊維豊富なので、サキイカのように切り裂いて食べる。ほかにない不思議な食感と味。
1 ひげ根を取り除いてきれいに洗ったら、縦に割り、木槌やすりこぎで平たく叩き潰す。
2 片面に味噌を塗り、両面を弱火でこんがり焼く(味噌の面から)。焼くと嫌なにおいも消える。
クレソンの香り高いスープ
甘みのあるクレソンを使ったポタージュスープ。茎、葉、花と全部使える。野草味とシャキシャキ感が残るようにほどほどに潰そう。
茹でたクレソンをすり鉢ですり潰す。鍋に入れて牛乳で延ばし、コンソメと塩で味を調える。
ザリガニの香野草天ぷら添え
体長10㎝ほどのザリガニから採れる身は、3㎝ほどと意外に小さいが繊細であっさりしていて食べやすい。ほろっと苦い野草といただきます!
1 沸騰した湯で赤く色が変わるまで塩茹でする。身だけ取り出すので、泥抜きしなくてOK。
2 頭とハサミをはずしたら殻を剝く。殻や頭は炒めて水で煮込めば、出汁を取ることも可能。
3 背中側に包丁で切り込みを入れ、背わたを抜く。このひと手間で美味しく仕上がる。
ノビルを散らした川エビの和風パスタ
殻ごとカラッと素揚げした川エビの風味と香ばしさが堪らない! クレソンの苦みを加えて奥深く、小ネギ代わりのノビルの葉も効いた日本の川パスタが完成〜。
1 川エビは水でよく洗い、水分をしっかり拭き取る。180度Cの油でからっと揚げ塩をふる。
2 茹でたパスタ&クレソン、川エビを和え、白出汁と醬油で味付け。仕上げに茹でたノビルの葉を。
※構成/大石裕美 撮影/小倉雄一郎
(BE-PAL 2024年7月号より)