野草のポテンシャルは計り知れない!
WILD AND NATIVE代表 川口 拓さん。 ネイティブアメリカンの教えを基礎とした、大地と共に生きる術、ブッシュクラフトスキル、薬草&ヒーリング作法などを教えるインストラクター。軽井沢を中心に自然体験プログラムを開催している。 wildandnative.com
薬草を生活の一部に!
最も安い楽しみを持つ人が最も裕福だ」とはH.D.ソローの名言。それでいえば、身近に自生している薬草を採取して、実用的なナチュラル・レメディ(自然の治療薬)を作る楽しみを知っている人は、間違いなく豊かな人だといえるだろう。
今回レクチャーしてくれた川口拓さんは、ソロー的リッチマンで、ブッシュクラフトの達人。今回は、私たちにとって身近な薬草を取り上げ、簡単便利な活用法を教えてくれた。
「薬草と呼ばれるものはたくさんあるのですが、多くの薬草を覚えるより、身近にある薬草が持ついくつかの薬効を覚えるほうが有益。なので今回は、家の周りでも生えている身近な3つの薬草に絞って採取しました」
ナチュラル・レメディ作りの第一歩は、目的の野草がどこに生えていて、どんな形をしているのかなど、特徴を調べること。例えばヨモギの葉は有毒植物であるトリカブトの葉と形が似ているので、葉の表と裏の質感や、香りなどの特徴をしっかり観察する必要があるという。
「目的の薬草が生えていそうな場所を歩き回り、発見したら採取の前に一歩立ち止まってみてください。植物のことをよく知ることもこの遊びの楽しみのひとつ。空、太陽、風、土、水など、その植物がどんな栄養を採り入れているのかも観察しましょう」
採取したら新鮮なうちに薬草を加工していこう。
「オオバコなどは、手で揉んだ生葉を切り傷や擦り傷に塗布するだけでも効果を発揮します。が、軟膏に加工しておけばいつでも使えて便利。チンキも、無水エタノールで作ったものは塗り薬や除菌スプレーとして、ウォッカなどで作ったものはそのまま内服、お湯に薄めてハーブティーにできます。それぞれの作り方は簡単ですが、カビなどが発生する原因となるので、容器は事前にしっかり除菌し、水気が極力入らないようにしましょう」
さらに、道具をあまり使わず、キャンプの空き時間に手軽に挑戦できるのが、ハーブティやスチームテント。薬効を五感で体感し、体の中と外から薬草を味わうのは贅沢な体験となる。
今回は定番の4種類のレメディ作りを紹介したが、使う薬草によって効能が変わってくるので、調べながら他の植物で挑戦、実験してみるのも楽しい。自然を深く知れば、よりアウトドア遊びの幅も広がるはずだ。
「今回紹介した野草は山菜のようにアクが強くないので、ものによっては生食できたり、茹でるか炒めるだけで美味しく食べられるのも魅力。僕も春はタンポポのオムレツを毎朝のように食べてます(笑)。皆さんも楽しみながら薬草に触れて、生活の一部に採り入れてみてください」
効能豊富で香り高い薬草の女王
ヨモギ
日当たりの良い草原やあぜ道などに群生するキク科の多年草。民間薬としても広く用いられ、消炎、止血、デトックス作用、冷え性改善に効果あり。ヨモギは全国的に、葉の大きなオオヨモギは近畿以東に広く分布。
咳止め・健胃・整腸・強壮効果
オオバコ
日本全土、高地から平野まで自生するオオバコ科の多年草。人やクルマが踏んで固くなった場所に生えていることが多く、葉は丸いスプーン型。消炎、鎮咳、利尿、整腸作用があり、漢方としても用いられている。
健胃・解熱・発汗・利尿作用も!
タンポポ
誰もがご存知、全国的に広く見られるキク科の多年草。解熱、発汗、消炎、利尿効果がある薬草としても知られている。
採取の心得
目的の野草だと確信が持てたら採取すべし
野草の本などで情報収集。難しい所は読み飛ばしてもいいので、見分け方、生えている場所、時季などの特徴を必ずチェックしよう。
採取場所は安全かつ道路から離れたところで!
クルマが通る道から5m以上離れたところでの採取を推奨。また、犬の散歩道や除草剤などが散布されていそうな場所は避けるように。
根を掘るときは、周りを荒らさないように
タンポポなど根を使う植物の採取は、大きく穴が掘れてしまうシャベルでなく、貝開きナイフなどで掘って、少し根を残そう。
早速実践!作り方を公開
保存ができて、いつでも使える!
オオバコで作る軟膏
製作時間 約1時間
虫に刺された患部や、擦り傷に塗布して使う自然派軟膏。保湿クリームとしても役立つ。オオバコの葉は手で揉んで直接塗布しても使えるが、軟膏にすると保存しやすく使いやすい。
必要な材料は、適量のオオバコの葉、オリーブオイル、ミツロウの3つだけ。
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エキスを抽出しやすくするため、オオバコの葉をナイフで細かく刻む。
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清潔なボウルに刻んだオオバコを入れ、浸るぐらいのオリーブオイルを注ぐ。
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オイルに浸ったオオバコを湯煎。たまにかき混ぜながら40分ほど加熱する。
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湯煎が終わったら濾してオイルだけの状態に。このとき水分が入らないよう注意。
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抽出したオイル10㎖に対して1.5gの割合のミツロウを用意し、湯煎で混ぜ合わせる。
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ミツロウとオイルが混ざったら火からおろし、清潔な容器に注ぎ固まったら完成。
栄養満点、応用も幅広い
オオバコのハーブティ
製作時間 約20分
薬草茶は葉を乾燥させるのがポピュラーだが、生の状態でお茶にする利点もある。ワイルドな味を楽しもう。
洗ったオオバコの葉を刻み、カップに入れ熱湯を注ぐ。蓋をして約15分ほど蒸らし、エキスを抽出したら完成。葉は避ける。
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香りと蒸気で手軽にリフレッシュ
ヨモギで作るスチームテント
製作時間 約20分
薬効成分たっぷりの蒸気を鼻や口から吸い込んですっきり。蒸気を浴びるときはブランケットごと覆い被さって密閉空間を作るべし。
刻んだヨモギと熱湯をボウルに入れ、15分ほど蓋をして蒸らせば完成。ブランケットを被り、蓋をはずして蒸気を吸い込んで楽しもう。
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洗って、切って、漬けるだけ
色々使える万能チンキ
製作時間 約10分
薬草をアルコールに漬けて作るチンキ。ヨモギ&無水エタノールは筋肉疲労時に塗布。ウォッカ&タンポポは内服して消化不良や便秘などに。
ヨモギ漬け込み用に無水エタノール、タンポポ用に度数の高いウォッカを用意。
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植物を洗わなくてもよいが、口に含む使い方もするため今回は汚れを落とした。
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細かく刻んで瓶の中へ。タンポポは根の部分だけを使う方も多いが、全草でもOK。
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植物が浸かる量のエタノールまたはウォッカを注ぐ。エタノールは3週間、ウォッカは6週間漬けて濾過。
※構成/鈴木純平 撮影/羽田貴之 撮影協力/ライジングフィールド軽井沢 https://www.rising-field.com/
(BE-PAL 2024年7月号より)