家の近所でも野遊びはできる!
案内人 アウトドアライター
藤原祥弘
素朴な野遊び・生き物遊びをご近所で実践。「そもそも自然はお金と関係のない世界。自然と遊ぶぶんには、お金はかかりません!」
1.身近な自然を自宅に再現!雑草&雑魚アクアリウム
小河川は絶好の水遊びのフィールド。全くの初心者や子供でも、タモが1本あれば多種多様な水生生物に出会える。そして、平地の小河川に棲む生き物は強健で高水温にも強いので、特別な装置がなくても飼育をしやすい。アクアリウムデビューするなら雑魚と雑草で!
タモロコ。低地に生息する小魚は比較的強いが夏は酸欠になりやすい。エアレーションしつつ持ち帰る。
魚の隠れ家になる水草も現地から少量を持ち帰る。外来種を拡げてしまうといけないので在来の草を選ぶ。
メダカ数匹と小型の水草で構成した水槽。外掛け式フィルターは濾過と酸素供給を同時に行なえて扱いがラク。
2.失われた川の記憶「暗渠」を源流までたどる
クネクネした細い道が住宅地の間を縫っている、歩くとゴトゴト鳴る遊歩道がある……。そんな道の多くはかつての川の名残。水流を蓋で覆った「暗渠」だ。暗渠は、市街化された地域のなかでそこにかつて川が流れていたことを静かに語る。私有地でも道でもない暗渠の周辺には、思わぬ動植物や遺構が残っていることも。たどると思わぬ発見が!
過去の地図で歩く!
スマホアプリの「スーパー地形」では過去の地形図を参照できる。
「菊野台緑道」を踏破!
スタートは東京・多摩川支流の野川。サイバー感のある水の出ない土管から暗渠を遡る。
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両側はすっかり住宅になっているが、かつて水を運んでいたはずの畑が両側に現われる。
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暗渠は菊野台緑道という名になり国道20号を横断。北側は舗装されているのでマンホールを追う。
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マンホールをたどると住宅の間に草に覆われた側溝が出現。ここから暗渠ではなく開渠になる
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少し先で開渠は再び地中へ。顔を近づけると獣臭い。今は野生動物の地下道になっている!?
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土管の先に現われたのは金子厳島神社。宮島の厳島神社にあやかって勧進されたという。
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境内の枯れ池。かつては湧水をたたえ、水を祀った社がいつの日にか神社になったそう。
3.山のご飯を自宅で仕込む!天日ドライフードを作る
使い勝手は良いけどちょっと高めなドライフードも、残った野菜を自分で干したら加工費はゼロ! スライスした野菜を2日間ほど天日と風に当てれば、水分が抜けて重さは1/10程度に減少。こんな乾燥野菜を味噌やルーと合わせれば、オリジナルの軽量山ごはんを簡単に作れる。
ドライフード作りに必要なのは干し網ひとつ(大きめの竹ざるでも代用できる)。2〜3mm厚に切った野菜を並べ、晴れた日に風通しの良い場所に干す。
皿いっぱいに拡げたジャガイモ、ニンジン、ミニトマト、ショウガ、タマネギのスライスを天日で干すと2日後には……。
48 Hours Later…
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こんなに小さくなっちゃった! 水分が抜けると保存期間が飛躍的に延びて甘みも増す。汁物にすると糖分の添加なしでも美味!
干した野菜にルーをひとかけら加えれば自作のカレーセットに! ジッパー付き袋のなかで水で戻してから煮ると燃料を節約できる。
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4.タガネとハンマーで100万年をひとっ飛び!お手軽化石採集
多摩川中流域は化石の産地。一帯は大昔は海底で、海のなかに堆積した地層が露出した場所を掘ると貝殻やサメの歯などを見つけられる。化石の産地は全国にあるので、「居住地+化石」で検索するとポイントが見つかる。
基本のセットはハンマーとタガネと砂をはらうブラシ。加えてゴーグルがあると飛んだ砂から目を守れる。
多摩川での1時間ほどの採集で見つけた貝の化石。250〜50万年前に堆積した「上総層群」が露出する場所で掘れる。
5.「地衣散歩」でミクロの小旅行
古いコンクリートや古木に付く「地衣類」。その正体は菌類と藻類が共生して作る地衣体で、菌類は藻類に住まいを、藻類は菌類に栄養を提供している。地衣類は環境ごとに見られる種類が異なり、その場の空気の汚染度などの指標にもなる。
街の壁面にオレンジの模様を作るのはコウロコダイダイゴケ。拡大すると粒状の地衣体が見える。
奥山の木に着くサルオガセ(上)の仲間やウメの木に着くウメノキゴケ(下)の仲間も地衣類に含まれる。
入門者向け図鑑は『里山の地衣類ハンドブック』と『街なかの地衣類ハンドブック』がおすすめ!
※構成/藤原祥弘 撮影/矢島慎一
(BE-PAL 2024年7月号より)