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オオキンケイギクとは?
雑草というと小さくて、地味な存在と思われがちですが、例外もあります。5月から7月にかけて黄色い花を咲かせるオオキンケイギクは、遠くからでも分かるくらい目立ちます。
オオキンケイギクの基本情報と生育場所
北米原産のオオキンケイギクは、キク科の多年草です。
セイタカアワダチソウと同じく、種子だけではなく株からも再生することから、株を抜き取らなければ、毎年、同じ場所に生えてきます。
生育場所は、道路の脇や河川敷、空き地など幅広く、市街地でもよく見かけます。
オオキンケイギクの特徴と見分け方
オオキンケイギクは、黄色く大きな花が印象的ですが、どの雑草もそうであるように、葉と茎だけの時期があります。このため、開花前は存在に気付かないかもしれません。
葉は細長く、表面は毛に覆われており、草丈は30センチから70センチ程度になります。
国内の分布状況
国立環境研究所の「侵入生物データベース」によると、オオキンケイギクは沖縄から北海道まで、全国的に分布しています。
雑草なので、全国に広がっているのは当然と思うかもしれませんが、実は、雑草も万能ではなく、寒さや暑さに弱い雑草も多く存在します。
そういう意味では、全国に分布しているオオキンケイギクは日本の環境への適応能力が高いと言えそうです。
オオキンケイギクが日本に持ち込まれた理由
オオキンケイギクは、今から約150年前の明治時代(1880年代)に花の観賞用、緑化用に導入されました。その後も、河川敷、道路脇、空き地の美観向上を目的に植えられました。
一般に、海外から来る雑草の多くは、種子が荷物や衣類に付着したり、輸入されたダイズやコムギなどの穀物に紛れ込むかたちで日本に持ち込まれています。その中には、トゲがあったり、毒を含むなど、望まれない雑草がたくさん含まれています。
一方で、オオキンケイギクは意図的に持ち込まれた植物なので、本来であれば園芸種として公園や家庭の庭などに植えられて、多くの人がその花を楽しんだはずです。ところが、今ではオオキンケイギクは「迷惑な雑草」扱いになっています。その理由は、後半で解説していきます!
まずは美しい花を観察して楽しんでみよう!
花を咲かせたオオキンケイギクは、雑草というよりも、むしろ園芸種といったほうがいいかもしれません。
開花時期と花の特徴
オオキンケイギクの開花時期は地域にもよりますが、5月から7月頃になります。雨風の影響も少なく、比較的、長く咲いているので、黄色い花を探せばすぐに見つけることができます。
花の直径は5センチ~7センチくらいで、茎の先端に花が1つ付いています。
また、花の色は写真のように全体が黄色い個体が多いですが、なかには花の根本部分が紫褐色の個体も存在します。
よく似た植物
オオキンケイギクの花と似ている植物に、キバナコスモスがあります。実際の花を拡大すると次のようになります。
キバナコスモスの花は、オレンジ色が強いですが、黄色い品種も存在しています。そのような場合は、葉の形状を見ると違いがすぐに分かります。オオキンケイギクの葉が細長い形なのに対して、キバナコスモスの葉はギザギザしています。
オオキンケイギクは食べられる?
オオキンケイギクに毒は無いようですが、野菜ではないので独特のアクやえぐみがあるようです。それでも、ネットを調べると花をサラダにしたり、葉をおひたしにして食べている方がいました。
未知の料理へ楽しく挑む オトコ中村の楽しい毎日|外来種オオキンケイギクを美味しく食べて駆除しよう
また、岐阜大学の研究によると、オオキンケイギクから抗がん剤と同等の成分が見つかっています。
伐採が推奨されている侵略的外来植物に 抗がん作用のある物質が含まれていることを解明。 | 国立大学法人 岐阜大学
今後、オオキンケイギクの評価が大きく変わるかもしれません。ただし、食用については、情報が少ないため、観察にとどめておくのが無難です。
特定外来生物としての問題点
オオキンケイギクは、「特定外来生物」に指定されています。実は、法律にも関わる事柄なので、取扱いは要注意です。
法律の概要
「特定外来生物」とは、日本の生態系、農林水産業や人の生命に被害をもたらす可能性のある動植物のことです。これらの輸入、栽培や飼育を制限する「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」があります。
特定外来生物には、オオキンケイギクの他にも、釣り人に人気のあるオオクチバスやブルーギル、鹿に似た動物のキョンなどが指定されています。案外、身近な動植物が法律による規制対象となっているため、注意が必要です。
特定外来生物の指定理由
オオキンケイギクが特定外来生物に指定されているのは、強すぎる繁殖力が理由です。オオキンケイギクが他の植物を圧倒してしまうことで、生態系のバランスが崩れることが懸念されています。
例えば、堤防の表面を守るために植えられている芝生の中にオオキンケイギクが侵入すると、芝生が減少し、堤防の機能が低下してしまうといったことが起きてしまいます。
オオキンケイギクを見つけたら
「特定外来生物」は、生きたままの移動や栽培が禁止されています。このため、根が付いたままの持ち運びや、庭などへの移植は法律違反となります。
また、種子も拡大の原因になってしまうので、花を持ち帰る際にも取扱いには充分気を付けてください。
気をつけないと罰則があります!
「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」には罰則があります。「特定外来生物」を許可なく輸入、販売や頒布をしたり、販売目的で育てたり、野外に放した場合、などが対象となります。
個人の場合、最大で3年以下の懲役または300万円以下の罰金を科されます。さらに、法人の場合には最大で1億円以下の罰金となります。「たかが雑草」と、あなどれないレベルの罰則なので、注意してください!
例えば、企業(法人)が自社の敷地をきれいな花で彩りたいと考え、オオキンケイギクをたくさん植えたりすれば、最大で1億円の罰金が科される可能性があります。もちろん、事前に警告があると思いますが、法律を知らないまま植えている企業もあるかもしれません。
また、例外として「学術研究、展示、教育、生業の維持等の目的で行なう」場合について、環境大臣(農林水産業被害に関わる場合は農林水産大臣)の許可を得れば、オオキンケイギクの栽培が可能となります。その際は、ネットを張って種子が風で飛ばされないようにしたり、厳重な管理が求められます。
オオキンケイギクが庭に生えたら駆除すべき?
オオキンケイギクを庭で育てている方もいるかもしれませんが、敷地の外に広がってしまうため、早めに駆除をしてください。
効果的な駆除方法
駆除は、セイタカアワダチソウと同じく非常に厄介ですが、花が咲いているうちに刈り取れば種子の形成を防ぐことができます。ただ、これだけでは不十分なので、根から抜き取ると効果的です。また、地中に種子が残っていれば、再び発生するため、定期的に防除する必要があります。
駆除したオオキンケイギクの正しい処分方法
先に触れたように、「特定外来生物」の生きたままの移動は禁止されています。このため、根ごと抜き取った場合は、ビニール袋に枯れるまで入れておき、その後に処分することになります。
処分の際は、必ず完全に枯れたことを確認した上で、他の植物と同様に焼えるゴミとして捨ててください。
種子が付いている場合は、周辺に落ちないように気を付ける必要があります。
各地の駆除活動と取り組み
オオキンケイギクの情報は、環境省をはじめ多くの自治体で注意が呼びかけられています。特に、開花時期になると、地元の人や学生による駆除作業が行われています。
その一方で、庭で育てている方や、きれいな花のおかげで、他の雑草のように刈られずに残されたオオキンケイギクの姿をよく見かけます。
これを、オオキンケイギクの処世術というと大げさかもしれませんが、「花は身を助ける」という一面があるようです。
シェイクスピアで考える雑草との付き合い方
日本中に生育するオオキンケイギクですが、これから、どのようになっていくのでしょうか?
きれいは汚い、汚いはきれい
昭和57(1982)年に発行された「道路と自然」という雑誌では、「花による道路の修景」として、東北自動車道の脇に植えられたオオキンケイギクがカラー写真で紹介されています。当時は、オオキンケイギクは悪者ではなくて、景色を良くするために積極的に導入されていたことが分かります。それからおよそ40年後に、法律で栽培が規制されているとは誰も(オオキンケイギク自身も)思っていなかったはずです。
日本人とオオキンケイギクの関わり方を振り返ると、シェークスピアの『マクベス』の一節にある、「きれいは汚い、汚いはきれい」という言葉が浮かびました。
この言葉は、物事には「表と裏」、「光と陰」といった両面性があるという意味です。
先にご紹介したとおり、そもそもオオキンケイギクは、明治期に美しい花を楽しむためにわざわざ日本に持ちこまれた植物です。人間が景観を良くしようとオオキンケイギクを植えた結果、生態系にまで影響を及ぼすことになり、今度は駆除に躍起になっている姿は、まさにシェイクスピアの言葉の通りではないでしょうか。
雑草の未来は予測不能
オオキンケイギクの事例のように、ある植物が増えるのか、減るのかを予想することは非常に困難です。
例えば、デンジソウという、一見するとクローバーに似たかわいらしい雑草があります。
デンジソウは、水田の厄介な雑草で、昔は普通に見ることができました。ところが、除草剤が普及した現代では大幅に減少し、逆に珍しい雑草となっています。
オオキンケイギクの未来は?
では、オオキンケイギクは、これからどうなるのでしょうか?一時期、セイタカアワダチソウが目の敵にされましたが、いつの間にか落ち着いたように、オオキンケイギクも右肩上がりに増え続けるということは無いはずです。もしかしたら、環境の変化次第では横ばいか、自然に減少していくかもしれません。もちろん、今よりも増加する可能性も否定できません。その答えは未来の人たちだけが知ることになります。