場所も前回と同じく「トラウンキルヒェン」という街。ザルツブルクの東、列車を1回乗り換えて最短約1時間半の場所です。
「廃墟(だと思い込んでいた)ツアー」から船で再びトラウンキルヒェンの港に戻った私たち海外プレスツアー一行。向かったのは徒歩5分のところにあるヴィラカールバッハという古い村にある由緒正しい感じがする建物です。
【オーストリア・ザルツブルクとその周辺旅vol.2】突然現れた謎の物体!
その建物の敷地に入った途端、プレスツアー参加者である女性ジャーナリストがけたたましく笑いだしました。
何かと思ったら、白昼堂々こんなオブジェが。
おいおい、まさかの「由緒正しき珍宝館」かよ~。と思ったのですが「珍宝館」を彷彿させる展示はこれだけ。説明書きはドイツ語のみでそこに置かれている意図もわからない。
こういうときはジャーリストの端くれとして、詳しい話を聞きたくなります。だけど…。
お二人とも私が自撮りしているとすぐに画面に飛びこんでくるほどの天真爛漫さも兼ねそなえた「ほれてまうやろ」レベルの素敵な女性。この天使たちの笑顔を曇らすことなんて私にはできませんよ、私には!
というわけで展示の意図を訊けなかった私をお許しください…笑。
この建物の中でもアート作品が展示されていました。
そして建物の裏にあるバルコニーから見た景色。
偶然見つけた宝物のような小道
さてその後自由時間になりました。街の中心部から離れてみようと丘に登っていたところ、偶然にもこの右手の階段からトレッキングポールを両手にハイキング姿で降りてくる中年夫婦を発見。
たまたまこのタイミングで鉢合わせた中年夫婦に感謝しながら、彼らが降りてきたトレッキングルートを進んでみることにしました。
このあと階段状になって、一気に100段ほど登ります。
途中に小さな礼拝堂が3つありました。
そして40人くらいは着席できそうな教会。
肉眼で見ると中はほぼ真っ暗なんですが…。
教会っていうと街中とか村の中心に鎮座しているイメージだったのですが、こんなふうに歩いてしか登れない場所にもあるんですね。日本の田舎にも裏山の神社があったりしますが。山道を歩いてここまで来るのが、一種の巡礼なのでしょうね。
その先にもハイキングルートが続いているのですが、集合時間の関係から進むのは断念して、来た道を戻ります。
でもこんななにげない小道というか「日本人でここに来たの、私が初めてかもしれんなあ~」と思えるような裏道のほうが、想い出に残る私です。
ナチス強制収容所入所者の想いを感じて
次に訪れたのはトラウンキルヒェンからほど近いエーベンゼーという街にある「ナチスの強制収容所に入れられた人たちが掘ったトンネル(彼らが暮らした収容所は別のところにあります)。グーグルマップに「kz gedenkstollen ebensee」と入力すると場所が出てくると思います。
そしていよいよトンネル内部へ。
私は人がようやく通れるくらいの狭さかせいぜいトロッコ列車が走れるくらいの場所を想像していたのですが、幅も高さも体育館に近いくらいありそう。
このあたりにある収容所ではユダヤ人だけでなく、ナチスが占領した国々から同国に反対した政治犯たちが連れて来られ、約2万7000人以上が収容されて、約8300人が亡くなったのだそう。
その奥で今回の「欧州文化首都」関係のイベントとしてChiharu Shiotaさんという日本人アーティストによるインスタレーションがありました。「欧州文化首都」というのは欧州連合(EU)から指定を受けた都市が、一年間にわたり文化行事を展開する制度です。
これも期間限定で2024年9月30日まで。イベントが終了すれば奥のほうは何もない空間にもどるのだそうです。
ここでガイドを務めてくれた女性に私は「このインスタレーション終了後はその場所で文字と写真だけでなく映像とか音声を使ったり、インタラクティブなものにしたりと、さらにわかりやすく興味を引くような形で強制収容所の悲惨さを伝える展示にしたほうがいいと思う。伝えるべき歴史があるのだから」と告げました。
余計なお世話かもしれません。でも「旅の目的」は「そこにあるものをただ見る」だけではありません。自分が感じたことを現地の人たちに伝えて、その場所をさらに素敵な場所にする。そしてより多くの人がそこを訪れたくなるようにすることもまた旅の目的だと思うのです。
そしてそれはまた得てして主観的・視野狭窄的になりがちな現地の人々とは違って、客観視できる旅人たちの役割だとも思うのです。
衝撃の「珍宝」からスタートしたのに、最後は深く考えさせられた長いながい半日でした。無邪気に楽しむのも旅、そして何かを考えるのも旅。どんな方向だろうが日常より何百倍も濃いのが旅だと思います。
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オーストリア政府観光局
欧州文化首都バート・イッシュル/ザルツカンマーグート(同観光局)