大型バイクに乗り始めて数年。ふと「でけぇ山を走りたい!」と思い立ち、様々なトラブルに見舞われながらもインドにあるヒマラヤ山脈を走ること数日。
2度目の高山病を経験し、ヒマラヤツーリングを断念しそうになるが…ギリギリのところで何とか持ち堪え(前回のコラムを読んでね!)「世界で1番天に近い湖」まで走りに行ってきたのでした。
世界で一番天に近い湖に到達!次は標高5300m越えのツーリングだ
太陽の光が当たりキラキラと光り輝く水色の湖を目の当たりにし、限界突破していた体調も復活!午後は「標高5300m越えのヒマラヤ山脈」を攻めに行く予定になっていた。
2日前に「標高5600m越え」を経験していたが、過酷なツーリングなのには変わりない。気合いを入れ直して標高5300m越えの峠に挑む事にした。
現在標高4500m。標高が上がれば上がるほど酸素が薄く、眼圧も感じる。クラクラしながらも、必死に前へと進むがいくら息を吸っても酸素が足りない。
「ヒッヒッフー!ヒッヒッフー!」
数日前に「少し楽になるよ!」と教わったラマーズ法を駆使しながら、ヒマラヤを登っていく。もういつ出産しても大丈夫!というぐらいにラマーズ法を取得したところで、標高5300mに到着!
目的地に到着した達成感をじっくり味わいたいところだったが、急激に標高を上げると身体に支障をきたしてしまうため、滞在時間はたったの15分。
すぐさま下山しようとするが、まさかのまさか!ヒマラヤ山脈で、工事渋滞にハマってしまった!
「なぜ工事?」「なぜ渋滞?」
ヒマラヤでは頻繁に土砂崩れや落石が起きていて、そのせいで道が塞がれていたり大きな穴が自然発生していた。それをインド人の作業員の方がツルハシを使いながら石を砕き、バケツリレーのように一つ一つと石を移動させていく。
令和6年とは思えないアナログ感!
「Wi-Fiねぇ!風呂もねぇ!工事現場はツルハシだ!」と吉幾三さんの名曲のメロディに乗せて歌いたくなるほどだった。
たまにユンボなどの重機などで大々的に工事をしている所もあったが、標高が上がれば上がるほど手作業で修復する。滞在時間15分と言われていたが、工事渋滞に巻き込まれてすでに30分が経過していた。
「あれ?さっきいた作業員の人たちが倍に増えてる?」
長時間の滞在で視界が歪み、10人いた作業員が倍に見えるほどクラクラしていた。「もう限界…」とバイクから降りて地面にしゃがみ込む。
バイクで走っている時は気が紛れていたが、立ち止まるとこんなにも辛いのか。めまいがし、頭をギュッと締め付けられる。プロレスラーにアイアンクローをくらっているような感覚の痛みを感じた。
「もうダメだ…ワン・ツー…スッ…!」
スリーカウントギリギリで落とされる直前、前の車が進み始めた!
まさかの緊急事態…タ、タ、タイヤが!
ふぅ…危ねぇ危ねぇ…ヒマラヤという巨大なプロレスラーに落とされるところだったぜ…とホッと一息しているのもつかの間!
今度はバイクの調子が悪い。オフロードだから仕方ないかと思っていたが、やけにハンドルが左右に取られる。
「ガタガタガタガタッ!」
こりゃおかしい。異常事態だ。すぐにでもバイクを停車して確認したかったが、ここは泣く子も黙るオフロード。停車したらバランスを崩して立ちゴケしてしまう可能性もある。ハンドルを左右に振られながらも、停車しやすい場所を探しながら走ること約10分。
やっと舗装されたオンロードへ!
すぐに路肩に停車しバイクを確認。あらららら…べっこりとタイヤが凹んでいるではありませんか!?
標高5000m越えでタイヤがパンク!これはヤバい。タイヤを交換するしかないが、ヒマラヤに街のバイク屋さんなどあるはずがない。
ただ、私はツアーで「ヒマラヤツーリング」に参加している。ありがたいことにバイクを直してくれるメカニックさんが常に同行してくれているのだ。すぐさまバイクを直してもらおうと探すが、周りを見渡しても車一台見当たらない。
「あれ?…もしや…迷子?」
必死に下山しようと一本道を走ってきたつもりだったが、どうやら私はツアーメンバーとはぐれてしまったようだった!
ここですぐ連絡が取れればいいのだが、ヒマラヤはWi-Fiが使えない。空港でインド全域で使える!という謳い文句のWi-Fiもレンタルしていたが、ヒマラヤ山脈では一回も使えなかった。(※のちにWi-Fiを使えなかった事を伝えたらレンタル代金は戻ってきました!)
「今回こそ終わった…」
ハシヅメ・ジ・エンド。標高5000m越えでパンクしたバイクと朝を迎えるしかないのか…。
あぁ…楽しいヒマラヤ旅だったなぁ…。
『初日に高山病でダウン』
『車とバイクで走れる世界で一番標高の高い峠越え!』
『トイレがない!嫁入り前の野ション宣言!』
『お風呂がなく自分から獣臭…』
ヒマラヤツーリングの思い出が走馬灯のように頭に浮かんできた。ヒマラヤに来てからまだ数日とは言え、人生の中でとても濃い体験をさせていただいた。もうヒマラヤを走るという長年の夢は叶えられている。悔いはない。「ありがとうヒマラヤ…さよなら日本」と諦めかけたその時…!!
一台の車がこっちに向かってきた。
「ププーッ!ププププーッ!!」
クラクションを鳴らしながら走る車。テールランプ5回点滅の「愛してる」のサインならぬ、クラクションの音が「助けにきた」と聞こえた。
「oh!ジーザス!」
近づくにつれて、ツアーのメカニックの車だと分かった。ヒマラヤの神々に感謝!!メカニックさんに感謝!!どうやらメカニックの車は、工事渋滞にハマってしまっていたようだった。
すぐさまメカニックさんに、パンクしたバイクを見せると「OK!」と一言。5分もしないうちにタイヤを交換。クラッチレバーを直してくれた時と同じく素晴らしき速さだった。
プロの仕事に惚れ惚れしながら、メカニックさんの「GO!」の掛け声と共に出発!新品のタイヤと共に宿泊先のテントへ向かった。
それから数時間。朝から幾度となくトラブルやハプニングに見舞われながらも、何とか怪我なく宿泊先に到着する事が出来た。
「ププーッププププッ!プッ!」
改めて「ヒマラヤ山脈」と「メカニックさん」にクラクションでお礼を伝えた。
そんな走馬灯を見るくらい充実した日々を送るヒマラヤツーリング。まさか…今日よりももっと濃厚な走馬灯のタネになりそうなハプニングが起きるとは……。
まだまだ続くヒマラヤツーリング!
果たして、怪我なく走り終える事が出来るのか!?
次回もお楽しみに!