クロックの帝国からクロコダイルの王国「カカドゥ国立公園」へ【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】
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    2024.07.25

    クロックの帝国からクロコダイルの王国「カカドゥ国立公園」へ【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】

    クロックの帝国からクロコダイルの王国「カカドゥ国立公園」へ【「海外書き人クラブ」お世話係・柳沢有紀夫の世界は愉快!】
    先日最高気温10度から30度へ、気温差20度の大移動をしてきました。

    「ああ、年末年始とかに冬の日本から夏のオーストラリアへの移動ね~」と思われるかもしれませんが、そうではありません。なんとオーストラリア国内の移動で、です。…やっぱ広いわ、オーストラリア!

    どうも。オーストラリア在住ライターの柳沢有紀夫です。

    【世界遺産「カカドゥ国立公園」旅vol.1】 やっぱり荒野への旅は熟練ガイドと愉しみたい!

    どこからどこへの移動かというと、メルボルンから赤道に近い街ダーウィンです! 気温も違いますが人口も桁違いです。片や周辺部を含めた人口が400万人を超える大都市。片やノーザンテリトリー(北部準州)の州都とはいえ人口は15万人程度の小都市ですから。

    そして翌朝7時には世界遺産(自然と文化両方の「複合遺産」)の「カカドゥ国立公園」へと向かいました。広さは約2万平方キロ。約19000平方キロの四国4県をすっぽり包む広大な土地ですが、人口は1万人未満です。

    このカカドゥ国立公園内に私が大好きな場所があります。

    その場所については【世界遺産「カカドゥ国立公園」旅vo.3】で紹介しますよ!

    初めてそこに行ったとき、「あっ、ただいま」とふと口から洩れていました。生まれ変わりとかを信じている人間ではないのですが、原初の昔に自分がそこにいたような気がしたのです。

    それともう一つ思ったのが、「世界最後の日にはここで死にたい」。…よくよく考えたら「私の人生最後の日」で良くて、「世界」まで道連れにする必要はないんですよね。すみません、すみません。

    ダーウィンからカカドゥ国立公園へは公共交通機関はありません。というわけでドライバー兼ガイド付きのツアーに参加するかチャーターするか、はたまた自分でレンタカーを運転するか(他に小型飛行機やヘリコプターをチャーターするという豪快な方法もあります。いつか紹介できるかな?)。

    おすすめは断然ドライバー兼ガイドとの旅! 目的地に到着することだけを考えればレンタカーでもいいのですが、こういう荒野旅の場合その途中途中で「有名な観光地ではないんだけどすごくいい場所」があって、自分で運転だと素通りしてしまうからです。

    さて我々海外メディアチームの今回の旅の相棒であるドライバー兼ガイドの名前はデイヴィッドです。

    ヒゲが似合うナイスガイ!

    このあたりの観光のピークシーズンである5月の中旬ごろから1月の終わりくらいまで毎月78本、平均して23泊のツアーのガイド。そんな忙しい日々を8か月続け、観光客が少なくなる4か月は休みを取って、オーストラリア国内や海外を旅するのだとか。

    一年の中に「オンの時期」と「オフの時期」がクリアにわかれているんですね。それはそれで素晴らしい生き方だと感じました。

    「火のシーズン」にアボリジナルの英知を知る

    このデイヴィッドがかなりの博識です。白人たちはこのあたりを「雨がちなシーズン」と「雨がほとんど降らないシーズン」の二つにわけますが、アボリジナルたちはもっと多いのだとか(かつてよく使われていた「アボリジニ」という呼称は差別的なニュアンスかあるということで用いられないようになっています)。

    しかも部族によって異なり(その居住エリアによって自然環境も変わるので)、ダーウィンにいる人たちは7つ、カカドゥにいるビニング(Bining)族は6つに季節をわけているそう。例えば「ドライシーズンの始まり」とか「火のシーズン」とかです。

    「火のシーズンってなによ? 占星術とかの話?」と私はお得意の早合点で思ったのですが、「野焼きをするシーズン」とのこと。「野焼き」というのは「人工的かつ計画的に枯草を焼くこと」です。で、ちょうど私たちが訪れた5月下旬がその時期にあたり。あちこちで野焼きを見ることができました。

    野焼きの中に突入するデイヴィッド。

    野焼きすることで獲れる果実もあります。デイヴィッドがそんな野焼きの中に入って、その一つ「カカドゥプラム」を持ってきてくれました。

    まさに火中の栗を拾ってきてくれたデイヴィッド。

    食べてみると…。

    「うっ、うまいっ!」…ってわけではありません。レストラン紹介番組じゃないんで。笑

    でも人工的ではなく、滋味というか少し苦みのあるような甘さがこの場所らしいおいしさに感じられました。

    ところでみなさん、なんでわざわざ野焼きをするかおわかりになりますか。答えは「野焼きをすることで土地が豊かになるから」です。学生の頃、「焼畑農業」という手法があって「焼け残った灰がそのまま肥料になる」と習った記憶がある人もいらっしゃると思いますが、それと同じ手法です。

    「アボリジナルたちは水田や畑で耕作をしないで、狩猟採取するだけの未開の人たちと長い間見られてきた。でもじつはこうして火を用いて土地を耕しているんだよね」。デイヴィッドのその言葉が目からうろこで思わずなるほどとうなずきましたよ。あと「自分の基準だけで視野狭窄になったら見えないものがあるんだな」と反省。

    近年オーストラリアではそういうアボリジナルたちの「英知」が見直されてきていて、とても喜ばしいことです。

    そしてデイヴィッドによると、「野焼きを利用する鳥」がいるとのこと。ブラックカイト(Black Kite)またはホイッスリングカイト(Whistling Kite)と呼ばれる黒い鳥は火のついた枝を拾って、火のないところに持って行って落とし、虫や小動物を狩るのだそう。カラス以上に頭がいいかもしれませんね。

    いきなりのアクシデント! それもまた旅

    車中にもどってもデイヴィッドはいろいろな話をしてくれます。たとえばノーザンテリトリーでは対向車が跳ね上げた石がフロントガラスにあたることもかなり多いので、自動車保険契約でも「年に一度まではフロントガラスの交換無料」とすることが多いとか。

    そんな話をしていたらどこからか爆音が聞こえてきました。「タイヤがパンクした」とデイヴィッド。車をゆっくりと路肩に停めます。

    パンクのあと。

    スペアタイヤは牽引車の分も含めて3本も載せているのだそう。交通量がほとんどなくスマホの電波も届かないような奥地にも行くので、そのくらいの予備は必要なのです。

    タイヤ交換の時間は30分。「まあ、こういうのも旅の一部だよね~」。アクシデントにもうろたえない陽気さがこういう奥地では大切なのでしょう。

    普通の乗用車と違って1本35キログラムだとか。

    そんな話を聞きながら、「こういう大自然の中の旅は博識のガイドとするべきだな」と心から思いました。そういえばアリススプリングス旅で大活躍してくれたガイド氏、元気かな?

    荒野のオアシスと兵どもが夢の跡

    私たち一行はパインクリーク(Pine Creek)という小さな町に立ち寄ることにしました。ダーウィンの中心部から約225キロ。ノンストップで運転すれば2時間半弱。1880年代以降、金鉱で栄えた街ですが、2021年の国勢調査では人口318人。今ではダーウィンからアリス・スプリングスを経由してアデレードへと大陸中央部を縦断するスチュワートハイウェイからカカドゥハイウェイが枝分かれする「交通の要所」として役割が大きくなっています。

    このあたりで初めて金が見つかったのが1871年だから今から150年以上も前のこと。今から約30年前の1995年に金鉱は完全に閉鎖されたそう。

    私たちは町はずれにある丘に向かいました。その上に見晴らし台があって、そこから湖が見えます。

    ポツンと建つ見晴らし台。

    じつはこの湖、金の露天掘りをしていた跡だとか。

    湖の幅は最大で200メートルで、水深は135メートル。ずいぶん深くまで掘ったようです。

    ここでコーヒーを飲みながらデイヴィッドがおもしろいクイズを出してきました。「オーストラリアの州都の中でいまだかつて40度を超えたことがないところが一つだけあります。さてどこでしょう?」。オーストラリアでいちばん寒い場所とされるのはタスマニアのホバートですが…それではクイズになりません。なんと正解はこのノーザンテリトリーの州都ダーウィンなのだとか。海風が吹くので気温はそこまで上がらないとのこと。

    木の枝にぶら下がる大量のコウモリたち。

    当時のパン屋さん。いい雰囲気。

    高台から降りてきた私たちは休憩で「レイジーリザード」という名の食堂兼パブに立ち寄りました。ここではなぜか古い車のコレクションを集めた博物館があります。

    クラシックカー好きにはたまらない場所ですね。

    その食堂兼パブに巨大なイリエワニの頭蓋骨が展示されていました。

    いよいよ、ワニの国に来たと実感。

    ついこんな写真を撮ってもらう私。顔はワニの頭蓋骨の背後にあるのですがなかなかうまく「噛まれている感」が出せていると思いませんか?

    昨日までいた大都市メルボルンとは全く違う世界。そこでふと頭に浮かんだのが「From a city of clocks to a country of crocs」です。「croc」とはcrocodile、つまりワニの略。「時計の都市からワニの国へ」。

    略したら全然つまらないですね。笑 でも英語は韻を踏んでいたりしてなかなか良いと自画自賛させてくださいな。このフレーズ、ノーザンテリトリー政府観光局が採用してくれないかしらん?

    ダーウィンからここまでの走行距離は約225キロメートル。寄り道しなければダーウィンから約2時間半。世界遺産であるカカドゥ国立公園まではあと約60キロメートル、40分ほどです。続く。

    【柳沢有紀夫の世界は愉快!】シリーズはこちら

    オーストラリア政府観光局

    https://www.australia.com/ja-jp

    ノーザンテリトリー政府観光局

    https://northernterritory.com/jp/ja

    Venture North(デイヴィッドの所属するツアー会社)

    https://venturenorth.com.au/

    私が書きました!
    オーストラリア在住ライター
    (海外書き人クラブ)
    柳沢有紀夫
    1999年からオーストラリア・ブリスベン在住に在住。オーストラリア関連の書籍以外にも『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)、『世界ノ怖イ話』(角川つばさ文庫)など著作も多数。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」のお世話係。

     

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