人間は全身にあるエクリン線(汗腺)や衣服で体温調節ができますが、犬は全身を被毛に覆われ、エクリン線は肉球周辺のみ。気温が高い時には、主に、パンティングというハアハアする呼吸で体温を下げるしかないため、暑さに弱く、熱中症の注意と予防が重要となってきます。
近年の猛暑に応じて、私とコアも早朝5時や夜遅い時間など、なるべく気温の低い時間帯を選んでお散歩しています。それとともに10数年前に犬用のクーリングウェアが発売され出してからは、先代犬 Rookie の頃からいろいろ試してきました。
コアは今季もクーリングウェアを着用していますが、連日のこの暑さ。ほんとうに効果があるのか気がかりです。
そこで、我が家にある非接触体温計と調理用の温度計を使って、コアが愛用している RUFFWEAR のクーリングウェア3点の実験をすることに。自己流のテストですが、 猛暑対策を考えている方の参考になれば幸いです。
コアが愛用しているRUFFWEARのクーリングウェアを紹介
実験をしたのは、RUFFWEAR(ラフウェア)のクーリングウェア3点。まずは、それぞれの特徴を紹介します。
スワンプクーラーハーネス
RUFFWEAR のハーネスは災害救助犬や雪崩救助犬にも採用されており、ハーネスとしての機能は折り紙つきです。フロントは Y 字になっていて気管や骨格を圧迫せず、胸、腰のべルトでしっかりフィットさせることができるので、ハーネス抜けもしづらくなっています。
コアの前に一緒に暮らしていた先代犬のRookie はとても賢くて、何種類ものハーネスから自在に抜け出していましたが、RUFFWEAR の看板商品ともいえるウェブマスターハーネスだけは抜けることができませんでした。
スワンプクーラーハーネスは、ウェブマスターハーネスのように抜けにくい設計で、さらに保水力と冷却力で定評のある3 層構造のスワンプクーラー素材でつくられています。水で充分に濡らして着用することで、気化熱効果による涼しさを得ることできます。
クーリング素材のウェアを着せた上からハーネスを着ける方法もありますが、これだと熱がこもってしまうし、犬具の着脱が苦手なタイプの犬にとってはストレスにもなります。その点、ハーネス自体がクーリング素材というこのスワンブクーラーハーネスはとても画期的だと思います。
スワンプクーラージップベスト
背面の素材は遮熱性(UPF50)があり、よく伸びて身体にフィットするスパンデックスで吸湿発散性が高く効率的な気化熱効果があります。腹部は三層構造のスワンプクーラー素材。保水力が高く、長い時間冷却効果が得られます。
身体に密着させることで、体熱を吸収し冷却効果も得やすくなるので、購入時にはぴったりサイズを選びました。コアはふわふわのダブルコートなので、被毛が潰れてキツそうに見えるかもしれませんが、これでジャストフィット(上の写真)。よくストレッチして、前脚のくりも大きくとってあるので、とても動きやすそう。
また、クーリングウェアは生地が弱いものが多いという評判を見聞きすることがありますが、さすがRUFFWEARだけあってアウトドアでガンガン着ても大丈夫です。
スワンプクーラーネックゲーター
吸湿発散性が高いストレッチ素材のスパンデックスの間に保水性の高いスワンプクーラー素材が挟まれています。かさばらないので、いつも持ち歩けて、必要な時にさっと着けられます。 さらなる冷却効果を得られるように、保冷剤を入れるポケットを縫い付けてみようかなと思っています。
ほんとに効果があるのか、計測してみました!
クールウェアってほんとうに効果あるのかな? 飼い主の自己満足になっていないかな?そう疑問に思うこともあり、自己流の実験を思いつきました。
実験に使ったのは、一般家庭用の非接触体温計と調理用の温度計。精密な専門機器ではありませんし、天候によっても結果は変動すると思われます。また、コアのようなもこもこのダブルコートの場合は、シングルコートの短毛の犬に比べると効果が得にくくなると思います。
逆に濃い毛色で短毛の犬には効果を感じやすいのではないでしょうか。なので、この実験は、あくまでも参考としてご覧になってください。
●実験1
スワンプクーラージップベストを着用して散歩に行き、クーリングウェアを着用していない部分と、着用している部分を非接触体温計で計測して、その温度を比較。さらに。調理用の温度計で被毛のなかの温度も計ってみました。
【条件】
気温は25°C、天候は薄曇り。歩いていると汗ばみます。散歩開始から20分後に計測しました。
※非接触体温計は 32°C~43°Cまでしか測定できまないので、32°C以下の場合は Lo と表記されます。
【非接触体温計での結果】
着用していない部位の被毛の表面温度は 36.1°C(コアの被毛は白なので、黒毛の子より天然の遮光性があります)、ウェアをめくった箇所の被毛は Lo なので 32°C以下という結果になりました。
【調理用温度計での結果】
着用していない箇所は37.8°C、ハーネスと被毛の間は 30.8°C。これは効果が期待できそうです。
●実験2
通常のハーネス(ウェブマスターハーネス)、スワンプクーラーハーネス(濡れた状態)、スワンプクー ラージップベストップ(濡れた状態)を、外に並べて 放置。10 分後にそれぞれの表面温度を計測して比較してみます。
【条件】
気温は28°C、天候は薄曇り。放置10 分後に計測。
弱いながらも日差しがあり、立っているだけでもじわじわと汗が出てきます。
【結果】
表面温度はウェブマスターハーネスが 38.4°C、スワンプクーラーハーネスとスワンプクーラージップベストは Lo 表示= 32°C以下でした。
この結果を見ると、2点のクーリングウェアには確かに効果があるようです。その一方で、ウェブマスターハーネスの表面温度が気温より高くなっていることに驚きました。
愛犬にクーリングウェアを着用させるときの注意点
今回、紹介したクーリングウェアは全て、水で濡らすことで生じる気化熱による冷却効果を利用しています。
着用中に乾いてしまった時は、必ず水で充分に濡らしてください。乾いたままだと、暑いだけになってしまいます。特にスワンプクーラーハーネスは厚みもあり、乾いたままでは熱がこもりそうなので気をつけてあげてください。
またアリゾナやロサンゼルスのような日差しはきついけれど、空気がカラカラに乾燥しているような地域では、気化熱による冷却効果を感じやすいですが、高温多湿の日本で、さらに雨上がりなど湿度の高い日などは効果が得にくく、逆効果になることもあると思います。天候に合わせて着用するかどうか、判断をすることも大切です。
風を当てることで、気化熱による冷却効果を上げることができます。コアはキャンプや訓練の待機中などには、クーリングウェア+扇風機で涼しく過ごせるようにしています。よかったら、試してみてください。
クーリングウェアを着用することで冷却効果が得られるとしても、暑い時間帯に犬を長時間外に連れ出したり、運動させることは避けなければと、あらためて思いました。
他にもあります、注目の犬用クーリングウェア
今回は RUFFWEAR のものを紹介しましたが、今や犬のクーリングウェアはたくさんの種類が販売れされています。
水で濡らして気化熱により冷却するタイプが多いですが、プレサーモc-25 という 25°Cを基準に暑いときは吸熱、寒いときは放熱を繰り返す特殊加工した生地を採用しているウェアもあります。
いろいろ試してみたなかで、オピタノのハイブリッド・ハイパークールは冷却効果が高く、アルファアイコンのサマークーリングタンクトップは生地が薄くてサイドがメッシュ使いなので高温多湿な日本の気候に合っていてお薦め。
ただし、アルファアイコンは薄くて快適なぶん、水分の蒸発がとても速いので、水のリチャージを忘れずに。
まとめ
犬は人間よりも熱中症になるリスクが高いと言われています。愛犬のために選んだクーリングウェアは、効果が出るシチュエーションで上手に取り入れたいもの。気温だけでなく、湿度にも気をつけて、楽しんでお散歩できたらいいですね。
クーリングウェアだけではなく、犬の用品を選ぶときにどれが愛犬の暮らしに合うのか、サイズは合うかなど迷ったときは、信頼のおけるショップに相談してみましょう。今回の記事をまとめるに当たり、海外の選りすぐりの犬グッズを販売している BADTAIL の店長、佐藤麻里さんにご助言いただきました。どうもありがとうございました。