日本のミライを明るくする! 園児野生化計画 vol.46
西高東低の気圧配置が少しずつ春めいてくる頃、子ども達と近所の里山へ冒険に出かけることにしました。ルールもコース設定も無し。僕たちと子ども達の間で決めたことと言えば、ただ子ども達の気持ちが向くままに制限時間いっぱいまで里山の中を進むことだけ。
子ども達はスタート直前のレーシングガーのように、いつでもフルスロットルで走れるようにエンジンをブルンブルンと思いっきりふかしている。そして僕が「じゃあ…」とスタートの声をかけようとしたらフライング気味に彼らは走り出した。
走り出した子ども達は永遠に進み続けるのかと思ったら、100mも進まないうちに急ブレーキで止まり地面にしゃがみ込む。近寄ってみると、どうやらつぶれた昆虫を発見したらしい。棒でつつき、安心だとわかると手のひらに乗せ、そしてじっくり観察がはじまる。
世紀の大発見をした子ども達は、共有心が高まり大声で発見した物の実況中継をはじめた
ひととおり昆虫の観察が落ち着くと、またすぐに駆け出す子ども達。しばらく走り続けること十数分。子ども達はものすごい物を発見してしまった…。見つけたのは50cm四方に地面を切ったように空いた穴で、四角い口を開けた入り口の奥は快晴のお日様とのコントラストで真っ暗になっていて何も見えない。
見つけた穴の前に集まる子ども達。彼らは色々な方法で中の様子を確認し始めた。
A君は、穴の中に木の棒を突っ込んで振り回してみる
Bちゃんは、穴の中に石を投げて音を聞いている
C君は、頭だけ突っ込んで中を見渡している
D君は、足だけ入れてブンブンと振ってみている
何をやっても中の空間がわからない子供達の中に、とうとうパイオニアが現れた。ひとりの男の子が勇気を出して穴の中に入ることを決めたのだ。僕の推測だと深さは約90cmで、幼児がいきなり飛び込むにはちょっと深い。さて、子供達はどうやって穴の中に入るのか?
男の子数人は相談をはじめ、結論が出たのか僕の方に集まって来た。彼らが見つけた答えはシンプルながらトリッキーですばらしい。「長谷部先生!あのね、俺をクレーン車みたいに持って下におろしてくれないかな?」なるほどと思った僕は、要望通りクレーン車のように子供を下に下ろしてあげた。
勇気ある最初のひとりをしてくれた男の子。みんなに安全を伝え、新しいフィールドをつくりだした。
「おーいみんな!ぜんぜん怖くないよ。ちょーたのしいよ!」
ドキドキしながら周りで待機していた子供達は、勇者のひと声に次は誰が行くかの相談をはじめた。そして次々と穴の中に入り、小さな冒険をはじめた。
次々と穴の中に入る子供達。彼らの情報曰く、100人は入るスペースがあるらしい(本当は2m四方程度)
結局全員が穴の中に入って中を探検し終えるのに冒険の時間の大半を費やしてしまった。通常であればもっと遊びたいコールが発せられるところだが、この日の子供達は素直に習合場所へ走って戻るのでした。